かつて当たり前のように何も考えること無くやれていたことが、悩み考え探しても分からなくなっている事に気付かされ自分にガッカリする。
リーヴ券の残り枚数をリーヴ屋さんで確認する以外の方法が分からず、「分からない事があったならオレを呼べ。教えてやろう。貴様の望む全てを。」でお馴染みの博識フレンドさんに教わってしまった。
知識の深淵を我が物顔でお散歩する彼にとってその質問は、実に稚拙で耳障りに聞こえた事だろう。
こんな(・w・)顔をしていたに違いない。
聞くは一時の恥。聞かぬは一生リーヴ屋さんへの全力疾走である。
これでよい…。これでよかったのだ…。
豆柴ありがとう…!大切にします…!
話はギャザクラ育成をしようとした事から始まる。
紅蓮でのギャザクラ活動と言えば、ナマズオ蛮族クエの行く末が気になるがために経験値を頂戴していた程度のもので、ステータス画面を開いて見るとそこには60の文字が空しく並ぶだけであった。
暫くぶりにログインして遊んでいても、創世トークンを集めにエキルレへ挑んではペロり。
オーボンヌへ行っては手厚い蘇生を幾度となくいただき。
極青龍では「モンクさん!死ななければクリアできるから!それだけ気をつけてねっ!落ち着けば大丈夫だから!どんまい!」と寛大な励ましのお言葉をいただいた。
かつての私が見たらどう思うだろうか…。
両手で包み込んだ顔面を左右にブンブン振り回し、既視感に打ちひしがれることだろう。
そうだ…!思い出した!
悔しかったら出来るまで繰り返す!
悩み落ち込んでも引きずらない!
その時を精一杯楽しく過ごしてきたじゃないか!
悩んでる暇は無い!
今すべきことは何だ!?
リーヴだ!リーヴを消化するんだ!
「リーヴをギャザに使ってはいけません…。」
偉い人がそんな事を言っていたのを忠実に守った結果、毎日付与されるそのギル生産券は彼方へと消えていくばかりだ!
ギャザラーを育てなければクラフターが始められない性格である。
だが、ギャザラーで素材集めをしながらレベルを上げていてはリーヴが無駄になる。
考えるのは後でいい。今は無心でリーヴをギルと経験値に替えるんだ!
紅玉海は多彩な水生生物が生息している。
珊瑚が色とりどりに群生し、そこは小魚の住処になっていることだろう。
海上から射す陽は、頭上を泳ぐ魚群が優雅に泳ぐ様を海底に映しだす。
そんな中、遠くに居る。
でも存在はハッキリと瞳を捉えて離さない。
サメである。
「サメがいるよ!!?デカイデカいぃぃ!!かんざしの飾りだかなんだか知らないけど!そんな装飾品の素材採りに海底に潜らせる!?危険手当も込みでこの報酬ですか!!?」
青龍という伝説級の怪物と死闘を繰り広げた英雄と言えど、さすがにサメには恐怖を感じざるを得ない。
嘲り笑う者がいるならば、今一度考えてみて欲しい。
ちょっと蛇が合体して大きくなっちゃったのより、サメのが遥かに危険なのだ。
水中を生まれながらの世界とする奴らにとって私達光の戦士など、回転寿司でクルクル回ってくる炙りトロサーモンみたいなものだ。
ガブリっ!!
で、ある。
クガネのリーヴ屋さんでこのクエストを引き受けた時から薄々は気付いていたつもりである。
それもそうだ。
お金券の引き換え場所であるリーヴ屋さんの前ならば、ギルに飢えた光の戦士が我よ我よとごった返していてもおかしくはない。
それがどうだ。
店の前では職人道具を組み立て、やれイヤリングだ、やれ釣り道具だと、製作稼業に勤しむ者が数名居るばかり。
採集稼業に手を付けようとする者は居ない。
前述したので皆様はもうおわかりだろう。
原因はハッキリしていたのだ…。
そう、サメである。
海底での危険な採集作業に恐れをなすのは当然、それでも果敢にかんざし飾りの素材を求めた勇者達は漏れなくサメの胃袋に納まり今も紅玉海を回遊しているのだ。
怖くない訳は無い。
きっかけはギルと経験値の為。
命を投げ出す程の報酬だろうか。
だが…。
私がここで勇気を出さなければ…、クガネのかんざし業界はどうなってしまう。
かんざし職人として名を馳せた者も、素材を無くしては意匠を奮えもしないだろう。
装飾の種類で溢れたかつての華やかな店先も、今や見る影もない。
彼の娘も、友人と団子を頬張りながら色恋話に花を咲かせたい年頃であろう。
そこで知り合う聡明な若者と恋をして送る幸せな生活。
家計費捻出のためのあるばいと生活の中、そんな夢を見ては現実に溜息をつく。
職人は家族の今と、そして未来を背負っている。
その職人を支えるのは誰だ。
私だ!!!
サメよ!!!
私は恐れない!
クガネひいてはこの地上で生きる民の全てを背負って、今私はこの海に戦いを挑んでいるっ!!
かくして始まった地上と海中のプライドをかけた戦いの行方は…。
神の一言によって終結した。
「ビーチ材の店売り安いので、買って納品もアリですね」(・w・)
決して。
敗北を認めた訳ではない。
かんざし職人よ。
待っていて欲しい。
私のクラフターがカンストし、その後ゆっくり落ち着いて時間ができるまで。
そして気が乗るまで。