Personnage

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絶竜詩戦争を平定したとある踊り子ちゃんの執念

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 喉から手が出るほどに欲したものは、
 あなたと一緒に歩めたかもしれなかった未来だった。





 オルシュファン・グレイストーン。
 エオルゼアの世界に降り立って、冒険者としてエオルゼアを駆け抜ける中で、おそらくは最初に胸中に深く刻み込まれた傷痕の名前。
 その時の自分は白魔導士だった。回復の専門職であったはずなのに、目の前の傷をいやすこともできずに、なすすべもなく息絶えるのをただ見ているしかなかったひとだった。
 今となってはそらでも言える、スピア・オブ・ハルオーネ。回復を受け付けない魔法のかかった凶刃を憎み、嘆き、それでも前を向いて歩きだすことしかできず、いつしか別の世界に飛び、過去の世界に飛び、世界の果てにまで来てしまったけれど、ずっと胸の中で凶刃の呪いはじくじくと血をにじませ続けていた。


 いつだっただろうか。
「次の絶は竜詩戦争だ」という噂を耳にしたのは。
 絶コンテンツ。その時の自分には、まったく手が届くはずもなかった遠い世界の話。力量のない自分には関係のない話だと思っていた。誘うように差し伸べられた腕は、どれだけ手を伸ばしても指先すら届かないはるか遠く。
「次の絶は竜詩戦争だ」
 聞かないでおこう。知らなかったことにしよう。自分には関係のないことだ。
「次の絶は竜詩戦争だ」
 違うかもしれないじゃないか。全然関係のないコンテンツかもしれないだろう。これまでの絶展開の関連性に思いを馳せることすらしなかった自分には、どうして次の絶が「そう」であるか、推理することもできない。考えないでおこう。知らないでおこう。どうせできやしないのだから。
「次の絶は竜詩戦争だ」……

 凶刃の呪いは、もしかしたら。自分にとってとても甘美なものであったのかもしれない。
 耳から離れない囁きはいつしか自分を縛る鎖となり、乾いた喉を潤す雫となり。
 美しい武器に惹かれて極の扉を叩き、難しい仕様が楽しくて零式の扉を叩いたころ、呪いはまた、己が身を甘く惑わせた。


「次の絶は、竜詩戦争だ」


 挑戦したい、と。明確に思ったのがいつだったのかは覚えていない。それほどに、自分の中にするりと、自然に、最初からあったかのようにそこにいた。
 その場に、彼がいるという保証はない。誰もそんなことは、あの時点では言っていなかった。けれどきっと、彼にまつわる何かがあるのではないか、その気配を手繰れるのではないかと、ずっと思っていた。
 絶・竜詩戦争。いずれ開かれるであろうその扉に手をかけるためには何が必要か。
 難しいコンテンツを辛抱強く続けられるレイド経験。ある程度はジョブを使いこなしているだろうと思ってもらえるための実績と信頼。
 少なくとも過去の絶をクリアしていない限りは、挑戦する権利など得られるはずもないのだと思った。その時たまたま、当時自分にとてもよくしてくれた人が立ち上げようとしていた絶攻略のパーティ募集に無謀にも手を挙げたのが、きっと、最初の一歩だったのだろう。

 文字通り、打ちのめされた。
 そして少しずつ、変わっていった。
 手段でしかなかったはずだった過去の絶コンテンツはひとつひとつがやりがいのある難解さを抱えていて、辛抱強く追いつくのを待ってくれる七人の仲間と、やさしい言葉で応援してくれる周りのひとたちに助けられながら、のめりこむほどに夢中になっていく自分がいた。
 名を挙げていけばきりがないほど、親身に教えてくれるひとがいた。
 それまで何も考えずに動かしていたはずのスキルも、どうすれば効率よく動けるのか、バーストにあわせるためため込むことの必要性を考えるようになったのも、絶や零式に取り込まれたころからだったのだろう。
 長期間、攻略のために全員の時間を合わせることがどれだけ難しく、そして重要なことかを思い知ったのも。
 そうして。
 手が届くはずもなかった遠い世界、関係のない話だと目を背けていた自分は、確かに、いま手を伸ばせば指先が掠めるところにまできているのではないのかと、確かにあの時、欲を出したのだ。



 実装直前。レンジの到来を待っていた、七人のメンバーの中に飛び込んだ。
 最初の面談ではメンバーのほとんどがやってきた。圧迫面接会場はここですか、とメンバーの一人が口にして、どっと笑っていた空気はとても和やかで、そんな楽しい空気のまま攻略は始まり、そして。

 最初に彼を見たとき。文字通り、息が止まった。
 その場に確かに彼はいた。そしてまたあの時をなぞるように、どうしようもなく死んでゆく。
 配信で、誰もが彼を助ける手段を模索していた。希望はきっと、最初からあった。彼を救えるはずだ。絶アレキの真心のように、彼が凶刃に倒れずに済むことこそが攻略の要になるはずだと何の根拠もなく思い続けて。

 中盤で彼が助かる道があると知ったとき、どれだけ心が躍ったことだろう。
 そこに至るまでの長い道のりを、楽しみながら、励まし励まされながら一歩ずつ踏み重ねて。


 そして、その時が、来た。
 己の手で、ようやくつかんだ彼の命。




 彼を助けるためには、ひとりではいけなかったのだ。
 全員で溜めたリミットブレイクでようやく発動するタンクLB3。全力で彼を癒すヒーラーの存在。そしてあの、呪いの凶刃スピア・オブ・ハルオーネが彼を貫く前に全力で壊さんとするDPS。
 残酷なほどに夕焼けの美しかった日。自分がたったひとりであったから彼は死んだ。彼が生き残るためには八人いなければならなかったのだ。
 冒険者とは、その成り立ちからして孤独な存在であった。その場に八人なんて実現できるはずもない条件、その時点で、もうこれはあり得ない仮定の夢でしかないのだと思い知らされながらも、うたかたのゆめ、かすけき未来の袖先にすがらずにはいられなかった。
 冷静になってよくよく見れば、槍を壊して彼を救ったあの場面で、盾は確かに壊れているのだ。
 詩人がどれほど時を歪めて正史に干渉し、彼が生き残った世界を見たとしても。槍が盾を貫き、彼の血で染まった事実はけして覆らないと、盾は確かに語っていたというのに。

 彼は確かに、うたかたの夢の中で生きていた。
 それは何年もの間膿み続けていた胸の内で、あの噂を聞いたときからずっと、そうあってほしいと願い続けてきた奇跡という名の夢、というべきなのか。
 偽典と呼ばれた、彼の生きた世界は正史よりもあまりに苛烈で、悲惨で、そしてあまりにも魅力的であった。

 わたしは、彼が生きた世界を確かに「生きた」のだ。
 これが本当に正史であったなら、世界は、エオルゼアは、イシュガルドはあまりに悲惨な未来となっていただろう。けれどその絶望を垣間見、手を伸ばし、騎竜神となったトールダンを倒してでも、彼が生きた世界を駆け抜けた。駆け抜けたかった。
 ひとりではできなかった。八人いなければ成しえなかった。飲み込みはけして早くない、むしろ苛立つほどに遅かっただろうに、皆、明るく辛抱強く追いつくのを待ってくれた。そんな、かけがえのない仲間たちがいなければけして見ることのできなかったうたかたのゆめを、確かにこの手に掴んだのだと。

 なんと贅沢な日々だったのだろう。
 彼を助け、彼とともに戦い、共に竜詩戦争を終結させる、うたかたのゆめ。きっとこのために、自分はこれまでエオルゼアの中でも本当は身の丈に合っていないのだろう、狭き道を駆け抜けてきた。
 たくさんの人に助けられながら、思いが報われた瞬間だった。そうして、彼が生きた証、彼とともに見た、あの夕焼けを閉じ込めたような光を放つ武器を手にしたとき、


 わたしは。











 絶・竜詩戦争。6.2パッチ直前の8月21日に、無事平定しました。
 58日目にしてのクリア、といえばそれなりに聞こえはいいけれど、実際にかけた時間はとてもとても長かったです。
 仲間に入れてくれて本当にありがとう。最後まで一緒に駆け抜けてくれて本当にありがとう。クリアの瞬間を一緒に迎えることができて、私は本当に幸せでした。
 あと、別に過去の絶をクリアしていることが挑戦権なんてことは全然なかった! 初絶に竜詩を選んだメンバーさんはどこの重鎮かってくらいものすごく頼りにさせてもらいました! よ!


(初出:20220823 AM2:44)
Commentaires (5)

Carol Natalis

Gungnir [Elemental]

思い入れのあるコンテンツでお気持ち表明をちょっと小説風に書いてみましたが書き方はともかくお気持ちはそのまんまかもしれませんねこっぱずかしい!

Pain Demie

Aegis [Elemental]

きゃろちゃんの想いが伝わってくるとても素敵な文章でした!

改めておめでとう!そしてお疲れ様でした!
おかえりなさい!

Carol Natalis

Gungnir [Elemental]

深夜テンションの勢いで書いちゃった!後から読み返すと色々粗が目立つのであとからこっそり修正しときます!

ずっと応援してくれてありがとう〜!!ただいま!パッチに間に合ってよかったー!!

Kohola Anuenue

Gungnir [Elemental]

実は今になって読んだよw ああきゃろるさんだなって。とにかくそう感じたんだw

Carol Natalis

Gungnir [Elemental]

すっごい遅くなって、いまになってこほらさんにコメントもらったことに気づいたよ!w読んでくれてありがとう!本当に本当に、絶竜詩戦争はわたしにとってとてもとても好きなコンテンツなので、行ってもいいかなって思ったときがあったら是非一緒にわたしと行ってね!
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