やっぱり3000文字制限はきっついわ
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ラウンジ“クイックサンド”。ウルダハで開いているここは冒険者ギルドの窓口がある。その為か、クイックサンドでは人が居ない時間は存在しないと思われるほどであった。
第七霊災後、エオルゼアはその対処に追われていた。都市の復旧、人員の確保、民の救済、食料問題、資材不足等々とまさに問題は山積みであり、未だに解消の目途すら経ってはいなかった。
その問題が多大であるからこそ、このクイックサンドには人が絶えない。仕事を求める冒険者、その仕事を発注する依頼者、情報を求める者、提供する者。様々な目的を持った者達が集まるのだ。いわば、クイックサンドは冒険者にとっては出発点でもあり、最前線でもあった。
そのクイックサンドの扉をアトラスは開ける。
中には屈強な男や頭が切れそうな者、小太りした商人と様々な人達がいた。しかし、誰もが楽しそうに、やる気に満ちている表情を見せている。
アトラスは一望し、冒険者ギルドの窓口らしきものを見つける。
「冒険者ギルドの窓口はここであっているかい?」
アトラスがカウンターで何やら書類仕事をしている女性ララフェルに声をかけた。
仕事を中断させられた彼女は、嫌な顔を一つもせず、顔を上げてアトラスを見る。
「えぇ、そうよ……。あなたは……冒険者として、登録に来たのね。ウルダハを訪れてくれて嬉しいわ」
「わかるのか?」
「えぇ、ここに来る冒険者は覚えているもの。貴方は初めて見る、だから新しい冒険者とわかるわけよ」
当たり前のように言った彼女だが、アトラスは目を見開いた。第七霊災後、冒険者の役割は重要な物となり、アトラスのように新しく冒険者となった者多く、また消えていった者も多い。その数多くの冒険者を全て覚えているという事に、アトラスは感心した。
「わたしはモモディ。ここ“クイックサンド”の女将よ」
彼女――モモディは机の上の書類を横に置き、アトラスと話す体勢を作る。
「ここウルダハは、蛮族である“アマルジャ族”との争いが絶えなくてね……」
アマルジャ族。丁度、アトラスが乗ったウルダハへ向かうチョコボ・キャリッジを襲った黒き巨体の事である。
「おまけに最近では、北方の大国「ガレマール帝国」も何やら動いているって話でしょ。それに霊災の後遺症も、そのひとつ」
「後遺症?」
「貴方もない? 第七霊災でザナラーンもかなりの被害が出たんだけど、なぜか皆、そのあたりの記憶が曖昧でね。未だに原因も、よく解ってないの」
「あぁ、その事か……」
アトラスも覚えがあった。
五年前に起きた第七霊災。月の衛生“ダラガブ”から現れた黒き龍が、このエオルゼアに壊滅的な被害をもたらした。
しかし、それだけの大事件であったにも関わらず、その当時の出来事を正確に覚えている者がいないのである。いや、正確に言えば何が真実なのか酷く曖昧になっていた。記憶も曖昧で、証言も一致しない。
アトラスも被災したにも関わらず、やはり記憶が曖昧であった。もっとも、それを後遺症とは捉えていなかったようだが……。
「その後遺症の中でも一つだけ確かな事があるの。エオルゼアの危機を救うために戦ってくれた“英雄たち”がいたことよ」
「噂には聞いた事があったな……」
「彼らの名を呼ぼうとすると、日に焼けた書物の如く、読み上げられず……その顔を思い出そうとしても強烈な日差しの中にある影のように見えない……」
「中々、詩的表現だな」
「茶化さないの。まぁ、人々は光の中で佇む英雄達を“光の戦士たち”と呼んでいるわ。私達は冒険者の力を必要としているの。光の戦士たちのようになってくれることを期待してね」
「ちなみに、その光の戦士たちに借金を背負っている者はいたのか?」
「……? いえ、そんな話は聞いた事ないわね……どうかしたの?」
「いや、何でもない。もしそうなら、俺も光の戦士になれるかなと思っただけさ」
「……貴方、もしかして」
モモディの視線が、歓迎の目から疑惑の目と変わっていく。
「あーっと! 俺は冒険者の登録に来たんだけど、対応してくれない?」
視線がより厳しい物に変ってしまう前に、アトラスは作り笑いをして話題を変える。アトラスとしては、これ以上突っ込まれて借金のせいで冒険者の登録が出来ないとなれば、不味い事になる。
「まぁ、前置きも長くなったし……それじゃあ、冒険者の登録を済ませましょうか。ここに、貴方の名前をサインしてくれる? 仕事を頼む時も、お墓を作る時も、名前がないと困るもの」
「後者には使われて欲しくないもんだが……っと、これでいいか?」
アトラスは目を細めて、やれやれと言った感じで、モモディに出された記帳にサインをした。そこに黒インクで、しっかりと“アトラス・ランド”と記載される。