エリディブスが呼び寄せた幻影の都。
偽りのアーモロートに、彼はなお誇りを携えて立っていた。
英雄を打ち倒すために。
いや、その在り方を確かめるために。
「君の奪ったものを……思い知れ。」
深い声が告げた試練は、あまりに鋭く。
かつての同胞たちを象った怪物の影は、
ただ倒すだけでは癒えない痛みをこちらに刻みつけてくる。
それは敵でありながら、彼にとっての仲間だったはずの幻。
理解など要らないと吐き捨てながらも、
それでも譲れぬ想いを護り続けようとする孤高の意志に、
どこかで重なるものを感じてしまう。
けれど道は止まらない。
戦いの末に待っていたのは、かつて英雄と謳われたアルバートの影。
彼を通して、なおも「英雄」を問いかけるエリディブスの渇望。
「私は……英雄を模倣し、導き、敵となり、成長を促してきた。
それは自らの力であり、星を護るための舞台でもあった。」
英雄を利用し、英雄に憧れ、そして自分自身が英雄になろうとしたその姿。
ヤ・シュトラはそこに、一つの推論を突きつける。
「あなた自身が……蛮神なのでしょう?」
想いから生まれる偶像。
世界を救いたいと願うあまりに、願いそのものと化した存在。
それが彼の真の姿であるのなら――
人の願いを糧とする蛮神と、どれほど違うのだろう。
問いを投げかけられた彼はなおも抗う。
己の欠けた記憶を顧みることもなく、
「それでいい」と。
ただその座と役目を守るために立ち尽くす。
「エリディブス……その名こそが私のすべてだ。」
彼が自らに刻んだ誇りの名。
それだけを支えに、星を救うという理想を抱き続ける哀しき調停者のかたち。
──けれど、わたしは進む。
誰かの願いに縛られるだけでなく、
自分自身の想いで未来を選び取るために。
議事堂の外に戻ったヤ・シュトラは、ほっと息をつく。
「……迷惑をかけてしまったわね。」
気を失い、連れ去られていたことを詫びながらも、
アニドラスに残した荷物を取りに戻りたいと告げる。
「あなたがここに招かれたときのエーテルの流れが、
まだ残っているはずだから……すぐに追いつくわ。」
小さな笑みとともに、一度別れることになった。
わたしたちはまた進む。
英雄の名を継ぎながらも、英雄の悲しみをも超えて。
ただ、未来のために。