鎮守の森に囲まれたグリダニアから始まった私のエオルゼア生活。
“森の都”の呼び名に相応しく、
自然に溢れ静謐な趣のあるこの都市での生活が、
遠きガラルの地で、獣使いとして戦いに明け暮れ、
荒んでしまった私の心を浄化していく。
聞けば、このグリダニアでは調和と協調の精神が重視されるようで、
東方の閉鎖的な島国に生まれ育った私にとっては、
この地に生きる人々の気風はどこか馴染み深く、心が落ち着くのだ。
グリダニアを訪れて数日後のある日、旧市街を歩いていると、どこからか微かに声が聞こえてきた。
「・・・ミ・・・・・・・・・・・」はじめは空耳かと聞き流していたが、
やはりどこからか不思議な声が何度も聞こえてくる。
「・・・ミ・・・・・ャ・・・・・」声の主を探して彷徨っていると、気づけば大木の前にたどり着いていた。
声はそう、幻術の総本山、碩老樹瞑想窟の奥深くから聞こえてきていた。
とある話を思い出す。
この洞窟には森の木々の囁き声が集まるという。
そしてその精霊の囁きを耳にしようと幻術士が修行に励むというのだ。
もしやこれが精霊の声・・・?そんな考えが脳裏によぎったが、
ハイランダーである自分には、魔法の類のセンスがないであろうことを思い出した。
幻術士ギルドの人々が何かを唱えているのだろう、と納得し、
瞑想窟を後にしようと踵を返したときだった。
「エ・スミ・・・・・ヤン・・・!」あの声が、一際大きく頭に響いた。
聞こえてきたのはそう、
角尊の長老「聖哲のエ・スミ・ヤン」、その人の名だ。
ただならぬ気配を感じた私は、恐る恐る瞑想窟へ立ち入った。
そこは静けさで満ちた、荘厳な空間だった。
しばらくして、洞窟に足を踏み入れてからというもの、あの声が聞こえなくなったことに気付いた。
戸惑っていると、若いミッドランダーの男と目が合った。
自分の身に起こった出来事を伝えると、彼は落ち着くよう私を諭し、名を名乗った。
「私はエ・スミ・ヤン。 ここ幻術士ギルドのギルドマスターです。 」
なんと彼こそが、幻術士ギルドの長エ・スミ・ヤンであった。
私が修行も経ずに精霊たちの声を聞いたことに、驚いているようだった。
「声の真意を知りたくば、幻術士となり修行するのです。」
好奇心に心突き動かされ、私は彼の誘いを受けた。
師の課す修行に身を投じる日々、
エ・スミ様の下での幻術士としての生活は順風満帆そのものだった。
はじめて瞑想窟を訪れエ・スミ様に弟子入りして以降、
あの不思議な声が聞こえることはなくなってしまった。
精霊の気まぐれだったのだろうかと一時は悩むこともあったが、
修行を積むうち、声を聞いたことすら忘れてしまうほどの時間が過ぎ、
その日、私は瞑想窟でギルドに伝わる魔法「ケアルラ」をエ・スミ様から授かった。
ついに私は一人前の幻術士と認められたのだ。
その時だった。どこからともなくあの声が聞こえてきた。
「エ・スミ・・・・・ヤン・・・!」師の名を唱える精霊の声が脳内にこだまする。
久しく聞いていなかったが、まさしくあの日聞いた声だった。
これまでをかえりみればこの声の真意は明白だった。
エ・スミ様に師事せよとの精霊の助言だったのだ。
深い感慨とともに、ギルドでの修行の日々を思い返す。
師への感謝と敬愛の念が溢れた。
ふと師の方へ視線をうつせば、弟子に教えを説いていた。
いついかなる時であれ、驕ることなく、真摯に後進の育成に励んでおられるのだ。
視線を感じたのか、こちらに気付かれたエ・スミ様が私に微笑みかけてきた。
その瞬間だった。
再び、あの声が、高らかに、頭の中に響き渡った!
「エ・スミ・マキコ・ヤン・・・!」