どうしても、越えなければいけない壁がある...
ずっと心の中に燻っていたわだかまり。
自らの信念の為に戦う者を、羽虫の如く払うだけの相手だとは言わせない。
一人の武人として相対した以上。
彼の意思を、
受け止めなければ先へ進んではいけない。
お前を越える、それだけの為に今日まで俺は生きてきたのだ...
我が宿敵『リットアティン・サス・アルヴィナ』
...さぁ決着をつけようか。
おそらく総ての冒険者にとって、初めて8人パーティで挑むことになるリットアティン。
属州出身でありながら実力で現在の地位を手に入れた生粋の武人。
信念を曲げず。奸計にて惑わず。窮地にあって退かず。
そんな彼に対し、暁の取ったゲリラ戦術。
それに乗せられる形で挑む事になる...それについては飲み込むより他ないのだろう。
しかし、問題はその後だ、高性能の装備で固めた8人が、まるで道端の雑草を踏みしだくかの如く
寄ってたかって袋叩きにし、一瞥をくれることなく去ってゆく。
個人的にこの扱いには納得がいかない。
最終決戦を終えた後でも、ココだけはどうしても納得のいく形で終わらせたかった。
初めて挑んだ時は、なし崩し的な参加だったが高揚感はあった、先行するフレンドに追い付き、しかも初の8人戦という未知の場でどれほど強敵なのだろうと不安と期待に満ちたのを今でも思い出せる。
蓋を開けてしまえば何のことはない、会話のログを追うだけで終わってしまう様な肩透かし。
作業とも言えない程度の時間...討伐後に流れるイベントムービーにて初めて気づく、こんなにもバックボーンのしっかりした敵がいともたやすく敗れてしまう事実。
その瞬間に感じたのは、達成感でも虚無感でもなく。ただ。絶望だった。
コンテンツの仕様上、仕方のない事なのだろう。だが、この経験以降8人以上のコンテンツで楽しめたことはただの一度もない。
最終決戦を終わらせたとはいえ、心はここから一歩も先へは進んでいなかったのだ。
置いて行かれたまま先へと進む物語、それはいったい誰の為のものなのだろう?見せつけられるのは自分ではない誰かの軌跡。
・どうすれば先へ進めるのだろう?
・どうすれば納得のいく決着に至るのだろう?
・これからも増えていくフルパーティ以上の戦いにどう向き合えばいいのだろう?
考えなかった日はない。
・相手の行動をすべて受けきって勝てばいいのか。
・IL制限下での8人パーティならば互角と云えるのか。
・こういうものだと割り切ってしまうべきなのか。
どれも違うように思う。何が正しいのか答え合わせの毎日に気持ちばかりが焦っていく。
真っ直ぐな信念を持つ相手が敗者で。
何のために戦ったのかすら解らない自分が勝者。
もう、そんな日々には耐えられない。ただ終わってほしかった。
正しい道も解らないまま、正しき断罪を求めて、結果がどうなろうと構わない、今の自分に出来る全力だけでただ挑もう。
そう思いこんな時間にも関わらず一騎打ちを挑んだのだ...少なくとも以前とは違いこれは【挑戦】なのだから。
対峙し交わされる剣戟。ゆっくりと確実に減ってゆく体力。
レベル、装備、共に圧倒的な差が有るにも関わらず、気を抜けば押し切られてしまうほどの威圧感。
窮地に駆けつける部下の1人1人に至るまで油断のできない強さ。
こちらは文字どおり必死になって、初めてまともに触ったガンブレイカーのスキルを撃ち続ける。
一人づつ倒れていく敵の部下たち。
確実にその刃によって迫るこちらの死期。
戦況はほぼ互角、相手の一撃が早いか、スキルのリキャストが早いか、ミスの許されない状況で頭の中にあるのは『まだ倒れたくない』その一念だけ。
...そして決着の時は来た
武器を下ろす、リットアティン。
最後の咆哮と共に彼はその役目を終える、帝国の勝利を見ることなく信念と共に逝くその最後は、
あの日見た以上に確かに俺の心を打ったのだ。
これが正しい決着なのかは未だに解らない。
それでも、今回は確かに【挑戦】をし、【結末】には至ることができた。
『ここで倒れたくない』その一心だけは貴方を上回ったのだ。
その事実だけは胸を張って言える。
本当の意味でその信念を凌駕出来たとは決して思わない。
未だ頭痛は治まらず、
目的も目標も失って、
在り方すら定まらない。
そんな信念無き者が先へ進んでも悲しい結末しか生み出さない。
だから、いつまでたっても挑戦者として対峙する事になるだろう。
それでも貴方に巡り合ったことは掛け替えのない幸運だった。
貴方との一戦以上に胸を打つ感動はここから先では得られないだろう?
だってここが俺にとっての最終決戦なのだから。
ここまでの道のりは短く永いものだった。
その全てに思いを込めて。
友よ!ありがとう。そして。さようなら。
我が生涯の宿敵『リットアティン・サス・アルヴィナ』へ捧ぐ