Personnage

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all I ask (1/2)

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これは昨年末より個人的に続けさせていただいていたロールプレイ・セッションを、
ククル視点で文章におこしたものです。


また、私とのセッションに時間を割いてくださり、心配りをしてくださった Claude Ruelle くんにも、プレイヤーの方にも、この場を借りて礼を言わせてください。

いつも楽しいひとときを、ありがとうございます。 :)

尚、タイトルは Adele(アデル) の All I Ask より。
もし機会があれば、この曲をククルが弾き語りすることがあるかもしれません。


あともうちょっとだけ続くんじゃよ。 続きが出来ました。




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嫌いなの、命を粗末にする人って。


私は彼にそう話したことがある。
それは私にとっては重要なことであったはずだったが、状況が変わってしまった。湿気た空気と、篭った嫌な臭いが私の肌にまとわりつく。

少し視線をずらせば、砂時計の砂はまだ半分以上残っている。しかし覚悟が決まらないまま、私は暫し、目を伏せた。




彼と出会ったのはキャンドルキープ埠頭だった。
いやに頭に残る"彼女"の声が気になって、このような辺鄙な小さな港まで赴いたのだ。
もちろん暇ということもあったのだが、"彼女"のお気に入りの選抜について調べてみたかったというのもある。

私と"彼女"は、いつだって切っても切れぬ仲なのだから。


下らない喧嘩を始めた海賊相手に、イエロージャケットが仲裁に入っている。
ここリムサ・ロミンサの大地ではよくある光景といえるそれに、褐色肌の男性が斧を振り回して参戦を始めたのが見えた。
額が重く痛み、"彼女"を感じる。

間違いない、彼だ。

独特の長身から遠目でもエレゼンだとわかったのだが、服装が奇抜で、一瞬"彼女"のセンス……いや好みを疑った。
エレゼン好きを自称する私としても、露出過多は好まない。

もちろんありがたく拝見させていただくフリは得意だけれど。

さてこのサブリメンのエレゼンだが、自分はアウラ派だとか叫びながらも、中々健闘している。
ただ私の立場から言わせてもらうとするなら、ララフェル派以外は滅べばいいのだ。彼がララフェル派に改めることもなく、私は彼を見殺すことにした。


……いや、死んでいないのだから見殺したといった表現は適切ではないだろう。
彼は無謀にもその貧弱そうな装備で海賊にひとりで挑み、ノックアウトされただけだ。もちろんこのまま放っておいても死にはしない。

なぜなら、"彼女"が彼にはついている。

そうとは知らずに死ぬかもしれないと、あられもない姿で倒れながら心配しているのだから愉快なものだ。
もちろん愛用の写真機でその姿を撮っておくことも忘れない。きっとこれは後で必要になるだろう。

私は彼に取引を持ちかけることにした。

「ギルを支払うのなら助けてもいい」彼はふたつ返事で承諾する。私はリザレクを軽く唱えた。どうせフリなのだから、それっぽく見えれば十分である。
彼に持ち合わせがあるようにも見えず、また私もそれを求めてはいなかった。あくまで口実だ、"彼女"が気に入った彼を知りたい。

そしてどうか、彼が"彼女"の期待を裏切ってくれれば……。

案の定、彼にはモラビー造船廠まで逃げられたが、程なくして彼は私と契約した。
もちろんあの写真をちらつかせて、脅したに等しいのだが。とはいえ彼にとっても悪い話ではないはずだ。

私は彼を支援しながら、"彼女"がどう接触していくのか、どうやって"英雄"を作るのかを知る。
彼は私の支援を受け、成長し、選択する。

尤も、今後も彼は私の目的を知ることはない。
彼にとっての私はエレゼン好きの変態盗撮魔であるし、あながちそれは間違いではない。表向きの私はいつだって『楽しそうに生きていて』『好きなことをし』『好きな場所にいる』のだから。
今は他に優先することがある、それだけのこと。

クロード・リュエルと名乗った彼に私は名を告げる。
潮風のにおいが鼻を擽って去っていく。大きく見上げた私と、大きく俯いた彼。
造船の音が耳障りなこの場所で、私たちの関係はここから始まったのだ。

そう、その時はまだ、彼が何者かだなんて私は知らなかった。




彼がずっと私に隠してきた過去は、一体なんだったか。

先日私が彼宛てに送ったチョコについて、文句を言う彼の言葉をのらりくらりとかわしながら、少しばかり探ってみようか……そんな意地の悪い気持ちが芽生え、トトラクの千獄に広がる粘液のサンプルを採るフリをしながら尋ねた。

背後にいる彼には私の表情は見えないだろう。私は一体、どんな表情をしているのか。粘液には映るはずもなく、上手く上げられたかもわからない口角を元に戻す。
普段の私なら上手に作れるだろう其れも、まるで油の切れた機械人形のような動きしかしない。
一体私は何を迷っているというのだろう。

「アナタの大切なヒトは、チョコをくれたりした?」

次に彼が誤魔化す言葉を選ぶことは容易く予想可能だった。

私には、アナタの人生における重要な事柄は何一つ漏らしたくないのでしょう?
それは彼が、野生の勘のようなもので私を警戒しているからなのか……。

いいえ、それは違う。私の情報を得ていたとしたら。"星の寵児"である私のことを知っていたのだとしたら。
今までの会話からそれを推察されていたのだとしたら。

とんだヘマをやらかしたものだと、私は自嘲気味に嗤った。
どうして"彼女"が彼を選んだのかはわからない。ただ彼は、恐らく、私の人生に於ける『厄介』だ。

案の定誤魔化された言葉に、いつものようにとぼけたフリをしながら、何事もなかったかのように話を流す。
まだ、砂時計は時を知らせない。私は彼に背を向けたまま、やはり目を伏せた。




サスタシャ侵食洞の依頼を終え、蛮神イフリートの供物にされかけていた彼に呼び出され、助け出してから少し連絡が途絶えた。
次に個人的な連絡があったのはそれから数週間が経った後だった。

その前に彼と会ったには会ったと言える為、それほど心配はしていなかった。
ただ、あの時の私はひどく動揺していて、腸が煮えくり返りそうなほどに不快なやり取りしかしていなかったため、どのような会話のドッヂボールだったかはよく覚えていない。

彼が私の領域を侵そうとしていること、前々からの疑念が過ぎって、とにかく裏切られた気分だった。
エオルゼア外の出身だという彼はドマの民にも見えず、過去は漏らさず、しかしひとりで、このエオルゼアにやってきたという。
実力もないくせに、どうやってきたのか。そう尋ねればチグハグな返答しかしないのだ。

そんな彼が、私以外に礼儀正しく(とは言い難いが、少なくとも私によりはマシな態度で)接しているのを見て、とにかく不快だった記憶しかない。
冷静さを取り戻すため口を閉ざしていれば去るし、その後も連絡ひとつ寄越さず、それから数日が過ぎた頃が前述の『数週間後』ということになる。


通信用パールに連絡が入った。
エーテルからして彼のものなのだが、妙なことに女性の声だったために返答の言葉が中々思い浮かばず、しばらく思案してから何も知らないフリで挨拶を返し、名を尋ねるも相手は名乗らず。
しかし彼女が言うに、自身はイシュガルドの誇り高き騎士だという話だ。やけにプライドが高そうな口調なのにも合点がいく。

なぜ彼と関わるとこうもロクなことにならないのだろうといったため息を心の中で思う存分吐き出して、彼女の用件を聞く。
そのような誇り高き騎士様がなぜ彼のパールを持っているのか、彼女の言葉の続きを待った。


彼女の話では、どうやら彼は喧嘩をしたらしい。人騒がせすぎる、と私は今度こそ素直に大きく息を吐く事となった。

「それで、何故私に連絡を?あのバカが私の名を口にするとも思えないのですけれど」

知り合いでもなんでもなくただ保護した身であるだけという彼女に、通信用パールの中から私を選んだ理由を聞いた。
私が先日不快であったことは(よほどの愚鈍でなければ)察しているだろうことから、他人に私を探らせたのかと一瞬不穏な考えも浮かんだが、彼女の返答は幸いなことにそのようなものとは縁遠いものであった。

彼は通信用パールをふたつしか所持していないという。
ひとつは言わずもがな私が差し出したもの、そして前述の、先日彼が受け取ったリンクパールである。
つまり個人的な付き合いは私だけだというのだから、これには私も驚かされた。

多少、私と彼の関係について詮索されたとはいえ、彼の所持している通信用パールは把握した。
彼がどうやって"彼ら"と連絡を取り合っているのかはわからなかったが、すぐに連絡がとれるわけではないことも理解できた。


そうしてまた数日が経った頃、彼の傷が癒えたか私から連絡をとることにし、私は通信用パールを耳にあてた。
先日の無礼な態度について物申したい気持ちはあれど、そもそも新年の挨拶すら寄越さないことについて物申したかった気持ちもおさえ、なんとか大人として譲歩することにしたのだ。

頭を多少打って私の名前を忘れていたフリをした彼にもう一度打って差し上げましょうか、そうしたら思い出せるかもと皮肉のひとつも言いたかったのだが、それすらも一応今は飲み込んで彼に探りをいれる。この後結局そう口にしたが。

……とはいえ、意識を失うほどの怪我なのだから、私の怒りも収まるほどには多少は心配したと言うべきかもしれない。
勝手に死なれても困るだとか、だから私のいないところで厄介を起こすなとか、言いたいことは山ほどあった。

でもなぜか、前より彼に対して苛立ちはしなかったのだ。
相変わらず無礼で、口は悪く、性格も悪いのだが、私は彼の唯一の保護者なのだ。表向きには。それが何より私に優越感を与えていた。
誰と競うわけでもないのに、取り合っているわけでもないのに。奇妙な感覚には見向きもせずに、当時の私は彼に話を聞いた。

結局彼はただの物取りに遭っただけのようで、向こうが二人、こちらは一人と不利な状況下で気を失うくらいまでやられたという話だ。
物取りの情報について情報屋に探らせるべきかはともかく、それを聞いた私は少し安堵して、つい口を滑らせてしまったのだ。

「あまり心配させないでちょうだい」

なんでもないように、私がため息を漏らせば、彼が暫し黙り込んだ。
言葉が出てこないまでに強く頭を打ちでもしたのだろうか、と私が思案し始めたあたりでようやく彼は口を開く。

心配していたのか、と確認するように、戸惑うかのような言葉が私の耳に届いた。
つまらないことに拘るものだと思ったが、改めて確認されるとどこか気恥ずかしく、慌てて話題を逸らしたのを今でも覚えている。


それでも私は、今日のこの日の為、まるでなんでもないことのように彼と小さな約束を交わして通信を終えた。






悪臭もこの胸の痞えの前では苦にすらならず、私に冷静さと冷酷さを削る要因にはなり得ない様子だった。
悪あがきのひとつでもしてみましょうか、それとももう、現実から目を背けてみましょうか。
私の中の弱さに唆されて私はつい、質問を重ねてしまった。

「ねえ、最後にもう一度だけ聞かせてほしいのだけど」

彼はまだ気付かない、まだ気付けない。
だから彼が気付いてしまうその前に、ひとつだけ彼と私の今までの関係のまま、本当のことを教えてほしかった。

今の不安定だけど居心地の良い、遠くないけれど近くない、そんな関係の間に、どうか全てを聞かせてほしかった。
そんな私の願いなど彼は知らないし、知っていたとしても聞き届けてはくれないだろう。

「アナタがエオルゼアにきた本当の理由は、なに?」

どう問えば彼が答えてくれるのか、私には最後までわからずに、真っ直ぐな言葉そのままを問いにのせた。
もちろん彼が答えないことはわかっていた。ただ一縷の希望があるならと訊いてみただけ。

案の定そんなものはないと、首を少し横に振った彼が強いて言うなら、と付け足す。

「誰も、俺を知らない、そんな国にいきたかっただけだ」

その言葉に、私は唇を噛み締めた。砂が全て落ち切り、時を知らせる。
これが御伽噺のように素敵な知らせなら、どんなに幸せなことだろう。阿呆らしいことを思いつき、こっそりと笑った。

私は彼を信じたかったのだと思う。
できれば何も察することのできない、幸せな人間だったならどれだけ良かったことか。

しかし、私は"厄介"が嫌いだ。

何も出来ない、誰も守れない、そんな弱さを抱えた私は5年前に死んでしまった。
私はあの時の誓いを忘れたりなんかしない。できない。だから……。

立ち上がった彼に微笑んでみせた。
彼はバランスを崩し、湿った壁へと身体を預け、再度座り込む。

「どうかしら、私の麻痺毒。おいしかった?」

さあククル、騙しなさい。彼を。そして自分を。
毒の入っていたはずのカモミールティーのカップは空の状態で、役目を終えたように斜面を緩やかに転がっていった。




彼に怪文書を送りつけられた私は、その暗号をなんとか解読することに成功しリムサ・ロミンサへと足を運んだ。

性格や口調、品のなさは誰が見ても明らかなほど教養のなさがうかがえる彼だが、まさか文字を書くことすら満足にできないとは思わなかった。
そのため運んできたレターモーグリから事情を聞くまで、誰からどんな目的の手紙だったか察することもできなかったのだ。

リムサ・ロミンサに呼び出した彼は場違いな場所に立ち、これまた場違いな仏頂面で立ち尽くしている。
仕方なく通信用のパールを使って声をかければ、私の到着に文句をつけてくる。
でこぴんのひとつも食らわせたいところだったのだが、当時の私はこのおかしな状況の説明を先に聞くことにした。

どうやら彼は私を雇いたいらしい。
彼の視線の先にはリゼット・ド・ヴァレンティオンが色んな人間に囲まれている。今年もそんな時期か、と一年振りの、そして相変わらずの彼女を尻目に彼から簡単な説明を受けた。

今年は(というよりは、今年『も』であるが)ふたり一組がペアとなり、占い師に相性を占ってもらうというものらしい。
しかし例年通りまだ客足も伸びず、今年も冒険者に手伝いを要請することになった。そこで運悪く彼が捕まったということだった。

なぜ彼女が(失礼を承知で言えば、いかにも知り合いの少なそうな人間である)彼に頼むことになったかはさておき、なぜ彼がそんな依頼を引き受けたかも置いておくことにして、私は彼の同行依頼を快諾することとなった。

先に断っておくと、彼とはこういった催しに参加することはなかったし、どちらかというと町の外の危険な依頼をこなす以外の関わりはほとんどない。
もしかしたら冒険者として多少の実力がついたことで、こういった催し物を見る余裕もできたのかもしれないが、なんとなく面白そうなことになるのではとふたつ返事で頷いたのだった。


結果を言う必要もないとは思うのだが、それほど運は悪くなかった。
冒険者としてのこれからについては、少しばかり歩み寄りがなくてはいけないとは言われたものの、彼と私は概ね良好といったかんじだ。

接待されてしまったと彼に微笑めば、視線を逸らされるばかり。

怪我をして以来の再会なのだが、前の通信からどうにも調子が狂うことが増えてしまった。
彼が何を考えているのかさっぱり読めなくなってしまったし、私もどういった態度で臨めばいいのか、わからなくなった。

彼の依頼は恐らくここまでだったと思うのだが、なにやら雑用を頼まれ、依頼をついでにして食事に誘われた。
仕事が終わった一服に食事を共にしたことはあるが、このように(恐らく)なりゆきではなく仕事以外のことに誘われるなどとは、明日の天候は槍なのではと心配してしまう。

私が聞き込みをしている間にちゃっかり注文したらしい彼の皿から安そうな肉をつまみ、暫し奇妙な沈黙が訪れた。


彼にそれとなく、こんな戦いとは無縁な依頼を受けるとは思わなかったと、軽く『戦闘バカ』といった意味合いの言葉を投げかければ頭を少し掻いた彼が言葉を選び始めた。
言葉を選ぶ、などとはとんと縁のない生き物だとばかり思っていたため、暫し私は呆けることとなった。

「こないだ、連絡しろっていってただろ、お前?」

ようは、彼は私が口にした小言をおぼえていて、連絡ついでに私を誘ったのだと説明する。
まさかそのような気遣いのできる人間であったとは到底思っていなかった私はどう答えるべきか己に問うこととなった。
結局意地悪く彼をからかうことで平静を装うことに成功したが、彼はもしかしたら、先日の私が滑らせた「心配した」という言葉を真に受けすぎた……のかも、しれない。

その事実を私が受け入れてしまうと、私はきっと、今後彼に対し躊躇してしまうだろう。
それは私が自身を捻じ曲げることと同時に、私を救った彼らに対する恩を仇で返すことにかわりない。だから私は、その時理解していただろうその事実を、見てみぬフリをすることでやり過ごすことにしたのだ。


その後礼にと彼女から受け取った帽子を被った私に、肯定的な言葉をかける彼の優しさに気がつかないフリをして、私は彼と別れた。





砂時計やサンプル回収キットを鞄にしまいこんで、腰に下げていた狩猟用のナイフを抜いた。

ここに訪れる前、酒を飲んで酔っていた彼に勧めた酔い覚ましのカモミールティーだなんて、嘘。
サンプルを採るだなんて口実も、嘘。
顔の隠れる鎧は、素敵な顔が隠れるから嫌だなんて、嘘。
心配しただなんて言葉も、
アナタの世話係だからだなんて理由も、
好みのエレゼンだから声をかけただなんてきっかけも、全部、ぜんぶ嘘。

何があってもいいように、私は最初から隠してアナタに近づいた。

アナタの先にいる"彼女"に知られるわけにはいかなかったから。

麻痺毒で動けない彼はかろうじて話せる程度で、私の顔を覗き込むことはできないだろう。
私にはそのほうが都合が良かった。彼の表情を確認せずとも、彼が本当のことを口にしないだろうことは予測できていた。表情を確認する必要性も今の私には感じられなかった。

彼はエオルゼアの外から来た。基礎すらできてないその腕で、路銀を稼ぎながら。
そのようなこと、彼にできるはずがない。教養もなく、力もなく、ツテもなく、そんな芸当ができるなら相当運の良さがなければいけないのだ。

だから私は『信じなかった』。

エオルゼアの外はガレマール帝国の領地となっているところがほとんどである。ドマの民が逃げ出せたのも、かなりの腕利きが何人かいたからできたことなのだ。
だから彼がスムーズにエオルゼアに侵入できたのには、ガレマール帝国という後ろ盾があったからだろう。

そして私と出会い、何度かのやりとりで私が"星の寵児"であることが向こうが彼に教え、私に取り入るために同じリンクパールを受け取り、私の弱みを探り、そして私を連れ帰るつもりなら。
彼が帝国の犬だとしてもそもそもは下っ端だろう。教養がないのは余程演技が上手いということがなければそのとおりなのだろうし、私と出会ったのもたまたま、偶然だ。

問題はなぜ"彼女"が帝国の人間を選んだのかという点だが、今となってはそんな私的興味はどうでもよかった。

私は、家族を危険にはさらせない。どんなことをしてでも"厄介"を始末する。
だから、

「私の作る薬は皆、目的の効果とは別の副作用がありますのよ」
「なぜかは知りませんけれど…そうね、その麻痺毒の副作用は…アナタですと30分くらいかしら?肺に水がたまっていくはず」

「さ、溺死する前に教えて。アナタは、ガレマールの犬ですの?」
「簡単にエオルゼアにくることなんてできないわ。とくにアナタ程度の能力で、しかもひとりで」
「私の知り合いを調べるつもりでそのリンクパールを受け取ったのかしら?私が星の寵児だとどこで漏れたのやら…油断できないわね、まったく」

彼は何も知らないかのようなフリを繰り返す。
まるで本当に何も知らないかのように見えるのだから、おかしなものだ。

ひとつだけ、どうしても彼に確認しておかなければならないことがあった。
前に彼が滑らせた大切な人……その人間のことを。

「もし大切な人が帝国の人質になってるなら…手を貸すわ。だから、本当のことを教えて。」

ガレマール帝国が現在、どのように広大な領地を、元々は別の国の民をおさめているかは知らない。
しかしそれが人道的とは言えないやり方だろうことは想像に難くはない。彼の大切な人が人質にとられているなら、そんな、私の少しの情けにも彼は耳を貸すことなく、繰り返された否定の言葉を続けるだけだった。


これ以上はもう、無駄なだけだ。私に残された時間は少ない。

私は視線をナイフに落として、一瞬息を止め、そしてそれを元に戻した。
これが正しいかはわからない。もし私から何かがまた欠けても、やはりそれは、私の負けなのだ。
最初から負けていた。最初から、このカモミールティーを淹れたあの瞬間から既に私は、彼に負けていたのだ。

だから、せめてもの嘘を。今までの私と彼の関係が全て嘘なのだと、それだけを信じてもらうために。
パーティー用の通信パールを外して投げ捨てた。かつんかつんと、複数の音がしたような気もするがこんな場所なのだから反響音か何かだ。
だから音になど一切気を配ることなく、私は彼に言い放った。

「じゃあ、ナイフで一思いにだなんて情けはかけてあげないわ。ゆっくり、孤独に死になさい。」

でももし奇跡が起きて、生きて出られたとしても次はない。そう言い残して、私は彼から逃げるように奥へと走った。
それが私と彼とが交わした、最後の会話である。







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