
「はい?」
間抜けな声……というのはこういう時の声を言うのかもしれないなとサファは一人、後ほどそうごちった。
「今、何て言った?」
「だから……」
少し言いにくそうに、サファから視線を外してはまたこちらの顔を伺いまた視線を外す……。
丸い満月のような、紅玉海を思い出すような澄み切った青色の瞳。
少し切りずぎたように思える、短く整えられた漆黒とはいかないまでも月明かりに照らされた夜のような黒い髪。
その黒髪を際立たせているのが何より特徴的なその抜けるような白い肌だ。
恐らく、ミコッテ族に詳しいものであればこの二つの特徴から感づいた人間も居るかもしれない。
そう、サファの目の前にいる少女はミコッテ族でもムーンキーパーと呼ばれる種族の少女だった。
背の高さはサファとはさほど差がなく、視線は丁度よい高さでぶつかり合う。
だからこそ、少女は先ほどからその大きな瞳をあちらこちらに移動させてはどう説明するべきか迷っているようだった。
しかしこのままでは埒があかないと観念したのか、ようやく小さいながらも聞こえる声でこう言った。
「ちょっと竜が好きな子に、アルテ・ロイテを見せてあげるって約束を……。」
アルテ・ロイテ。
オメガによって創造された疑似生物。
その名前はとある古典小説に登場する老魔導士のものと一致するという。
竜のような姿に変化するという記述から、その姿を模して想像されたと推測される生物だ。
この生物はクリスタルに封じ込められており、そのクリスタルを破壊することで使役することが可能らしいとサファは同じ猟団仲間から雑談の何気ない会話で聞いた記憶があった。
「あのな、オルフィーナ。」
サファは血の繋がりこそないものの前世の因縁のせいで腐れ縁化している目の前の挙動不審なムーンキーパーの少女……
オルフィーナに呆れながらこう言った。
「あれを使役するにはかなりの腕前、冒険者としての経験や運、オメガ最深部への調査の認可が必要なんだぞ?
そう簡単に行ける場所じゃない事は、お前もわかってるだろうが。」
恐らく言うだけ無駄だろうと思いながらも一応伝えてみる。
きっとそんな事は、冒険者たるオルフィーナも重々承知している事柄だろう。
「分かってる。でも私はその子に是非見せてあげたいんだ……。」
先ほどとはうって変わって真剣な眼差しでサファを見つめ返すオルフィーナ。
"前世でもその「お人好し」が原因で命を落としたというのに……"
サファは頭を軽く振った。
またあの声だ。
たまに自分ではない誰かの声がする事は、オルフィーナにすら秘密にしている。
その仕草を否定ととったのかオルフィーナは淡々と語りだした。
「その子、ちょっと特殊な病気に侵されてて…… いつ逝ってもおかしくないって状況なの。
でも、担当の癒し手の人が生きる気力さえあればこのままうまく成長することでその病気への免疫も出来るかもしれないって。
だから私、その子に絶対に見せるから頑張ってってつい……」
大きい溜息をつく。
学習能力がないのは自分の方だったようだ。
サファは傍にあった球体……アストロメーターから一枚カードを抜き取った。
「世界樹のカードか……。」
地神ノフィカが植え、時神アルジクが育てた大いなる世界樹。
樹は小さな芽から大きな大樹へと成長をしていく。
枝には葉が茂り、その枝に花が咲きやがてそこには……
カードは自分にある方向性を示していた。
やるしかないようだ。
「わかったわかった。ただし危険な場所への任務だ。お前は残りな。」
「え!? でも……!」
「オレがいく。じゃねーと、オレの胃がもたねーよ。」
「サファが!? でも一人じゃ…… わ、私も行く!」
「お前はほかにやる事沢山抱えてるだろうが。んじゃ、オレが都合悪いときはお前が頼む。
あとあんな場所に一人で乗り込むほど、バカじゃねーよ。」
そう言いながらその時のサファの瞳はここでない場所を確かに見ていた。
「仲間を集める。危険な任務を共にできる仲間を……な。」
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