※ご注意ください。
本作は、FF14の世界を舞台に、作者の妄想で勝手に創作しているパラレルワールドです。
そういったものが苦手な方はご遠慮下さいますよう、よろしくお願いいたします。m(__)m
前話 [ 第6話 不屈のクロガネと、緋剣円舞 ]次話 [ 第8話 変わってく事と、変わらずにいる事 ][ 第7話 月と、太陽 ] 3人の連携による猛攻により、文字通り、この場から消え去ったサンドウォームの大群。
舞い上がる砂埃は渇いた風に流され、そこにゆっくりと姿を現す巨大生物。
静かにじっとこちらを見ているが、あからさまな敵意と怒りを、その赤黒い巨体から発している。
リリル「では、私とグレイでやつの動きを封じます。あんずさんは極大魔法でとどめを!」
あんず「わ、わかったわ!」
グレイ「いくぞ!」
リョウ「あんな怪物を前にしても、ひるまない....。
私もいつか、あの輪の中に入れるかな.......先輩の隣に立てるかな.......。」
仲間を殲滅させられ憤り、猛り狂うウルハドシ。
唸るような叫び声をあげ、その巨大な口から猛烈な砂嵐が発せられる。
構う事なく突進していくグレイ。
ダメージを気にせず、全速の助走から全体重をかけ、開幕の豪斧を振り下ろす。
刹那、グレイの初撃の創傷部と同じ箇所に細剣を突き立てるリリル。
やはりどうやってそこまでいったのか分からない。グレイの後方に居たはずである。
リリルはそのまま反対側へ、ウルハドシを飛び越えるように跳躍。
斬撃を浴びせながら鮮やかに宙を舞う。
ララフェル族特有の小さな体ゆえに、軽やかな身のこなしと、美しい細剣術が見る者の目を奪う。
間合いを取ったリリルは攻撃の手を止めない。嵐のように連続赤魔法を放つ。
たまらず、攻撃対象をリリルに切り替え振り向こうとするウルハドシに、グレイが渾身の一撃をお見舞いする。
「おおおおおおおっ!!!」
心臓にズシンッとくるような重い衝撃音が響く。
ウルハドシを覆っている赤黒い表皮は相当な硬質のようであるが、それを上回る力で叩き割らんとする斬撃である。
暴れ、のたうち回る巨大生物。村の入り口付近の設備や樹木などを、めちゃくちゃに薙ぎ倒していく。
怒りと痛みに我を失い、ウルハドシは純粋な破壊衝動のカタマリへと化していく。
リリル「かなり見境がなくなってきましたね。一気にたたみ掛けますよ!」
勝機ととらえたリリルはその表情を見るや、口角が少し上がっている。バトルを楽しんでいるのだろうか。
彼女の昂りを反映するかのように、その手に握る煌めく剣身が、炎に包まれていく。
直後、けた外れのスピードでの突進。勢いそのままに突きからの斬撃。
絶美なる技巧に、悶え狂う巨体。
「エンツヴェルクハウ!」
神速で二度、斬り返された裂傷は同時に炎熱によるダメージも負わされる。
寸断させる事なく、まるで音楽を奏でるかのように技を紡いでいくリリル。
突きを3つ見舞い、後方へ大きく跳躍する。再び間合いを取った。
大きく息を吸い、ありったけの魔力を束の宝玉に込める。
今までのどの魔法よりも強く、激しく輝く!
「ヴァル....フレアーッ!!」
ウルハドシの体を中心に、膨張した魔力が大きく爆ぜる!
そこから溢れ出すように、大量の炎が沸き起こり、その身を焦がす。
通常のモンスターであれば、とうの昔に絶命しているであろう、さすがは"砂漠の神皇帝"の二つ名を冠するだけはあり、未だこちらに対する敵意を失わない。
だがダメージは著しく、動きがかなり鈍っている。
リリル「今です、あんずさん!とどめを!
グレイ!退避して!」
グレイ「おう!」
闇宙の真理を穿ち、白天の秩序を歪めんとする罪。不浄なる人の手が神威に及ばんとする罪。今一度の禁忌破戒を許されん事、請い願わん。
祈りを捧げるように静かに詠唱を終えたあんずが両手をかざす。
ウルハドシの頭上が、紫色に染まり出す。
「ファウル」
耳をつんざくような衝撃音が響き渡り、紫色の閃光とともに一瞬、空間が歪んだような感覚が襲う。
一呼吸おいて、ウルハドシが崩れ去っていく。
あんずはその多大な魔力で、瞬間的に空間を断裂させたのである。
空間はすぐにまた元に戻るが、その空間に存在した全てのものの組織構造が不可逆的に崩壊し、見かけ上の変化を何も見せず、それはすでに滅びた存在となったのである。
今ここで、ウルハドシは絶命し、土に還ったのだ。
あんず「ハァ......ハァ......ハァ......。」
リリル「やりましたね、あんずさん!」
ウ・オド・ヌン「し、信じられん....。あのバケモノを倒しちまいやがった....しかも、いとも簡単に....。」
リョウ「先輩....すごいです......リリルさんもグレイさんも、みんなとっても強い....。」
この襲撃で、村は大きな被害を受けた。だが幸いなことに、ケガ人こそ出たものの、誰一人、命を落とすことは無かった。
偶然、居合わせたあんず達がいなければ、おそらく生き延びた者はいなかったであろう。
リョウ「せんぱぁ~い!大丈夫ですかぁ~!?」
あんず「リョーコ!無事だったのね、よかった....。
久々にあんな強烈なやつ打っちゃったから、腰が砕けちゃった....はは。」
リョウ「ムリし過ぎです、先輩!ちょっと待ってて下さい、お水取ってきますから~!」
あんず「あ~、ごめんねぇ、ありがとう。」
そう言うとリョウは不滅隊の詰所へと駆けていく。お水と一緒に甘いものでも持っていこうと思い立ったのであろう。詰所に置いた荷物をガサゴソと掻き分ける。
ウルダハのクイックサンドで買った、クランペットを手にした、その時....!
ウ族の少女「キャーッ!!」
リョウ「 !? い、いまの声は!! 」
突如、少女の悲鳴が聞こえる。慌てて外へ飛び出すと、あんず達が殲滅したはずのサンドウォームが1匹、ウ族の少女に襲いかかろうとしている!
少女は足をケガしているようで、うまく動けない。
ガチガチと牙を鳴らし、まさに少女に喰らいつかんとする瞬間、リョウが身を挺して割って入る!
リョウ「きゃっ!!
.....つっ!いたたた......。」
ウ族の少女「あ、あなたは!大丈夫ですか!? 」
リョウ「くっ....! お、襲ってきます.....ごめんなさい....。咄嗟に助けようと思ったのですが、私じゃ何もできなかったです....。
せ、せめて、時間稼ぎだけでも......!」
尻もちをつきながら、目前に迫ってくるサンドウォームに、初歩の白魔法"ストーン"を放つ。
だがそれは返って相手を刺激し、怒りに満ちた魔獣の牙がリョウに食いつく!
リョウ「っ............!?
えっ!?これは......いったい....」
ウ族の少女「族長!!」
ウ・オド・ヌン「何とか間に合ったな。」
狩り用の手斧だろうか、2人を襲うサンドウォームの背中に、それは深々と突き刺さっている。
騒ぎを聞きつけ、あんずとワララゴが走ってくる。あんずは顔面蒼白だ。
あんず「リョーコ!大丈夫!? きゃ!血が出てるじゃない!!」
ワララゴ「こちらの少女も足をケガしておる、とにかく二人を詰所まで運ぶのぢや!」
腕から血を流すリョウに応急の血止めを行い、少女にも同様に処置をする。
よほど怖かったのであろう、少女は助かった安堵から、涙が止まらない様子だ。
リョウ「あ、あの、族長さん......助けていただいてありがとうございます....。」
ウ・オド・ヌン「感謝するのはこちらの方だ。村の者を守ってもらい、おかげで命が救われた、恩にきる。」
リョウは満足気に、とびきりの笑顔になる。
こちらは嬉し涙のようだ。
2人を詰所へ運び込み、再度、処置をし直す。
あんずはリョウが心配でたまらないらしく、ずっと離れようとしなかったが、「大丈夫ですから」と笑うリョウに促され、隣室に戻っていく。
少し落ち着いたのであろう、リョウは体を起こし、隣で横たわる少女の足に、治癒魔法をかける。
リョウ「よかったです、これくらいの傷ならすぐ治りますよ。」
ウ族の少女「あ、ありがとう......ございます....。」
リョウ「あなたは、さっきそこで座ってた娘ですよね?
あっ!お腹空いてるんでしたっけ!これをどうぞ、ウルダハのスイーツですよ。私もまだ食べてないので、半分コしましょう♪」
ウ族の少女「べ、別にお腹がすいてたわけじゃなくて.....!
あ、でもおいしそう....いただきます....。」
リョウ「うまうま....。そういえばまだ名前、言ってませんでした。私はリョウといいます。」
ウ族の少女「もぐもぐ....。あ、えっと.....パメラです....。」
芳醇なバターとメープルシロップの香りが部屋を包む。ウルダハのクイックサンドの女性店主、モモディが作る名物スイーツ、クランペットの甘すぎない風味とパンケーキの優しい食感が、2人を日常へと引き戻す。
あらためて、お互いが一命を取り留めたのだと実感する。
リョウ「そう言えば最初に会った時、何か言おうとしてませんでしたか?」
パメラ「あっ、えっと.....その.....実は.....
話を聞いて欲しかったんです。
旅をしてるって言ってたので.....村の人には話せなくて.....。」
誰にでもある経験ではないだろうか、この人なら何でも話せると思う人との出会い。
パメラにしても、村の人間には話せない悩みがあったにせよ、外部の者であればだれでもよかった訳では無いだろう。
リョウから感じ取る雰囲気、物腰、話し方、声のトーンなどから、この人は自分を受け入れてくれる人だと、そう思ったからこそ、彼女自身の内気な心を開こうとしたのではないだろうか。
命の恩人であれば、なおさらだろう。
パメラ「私、村を出たいんです。.....というか、外の世界を知りたい。この村の事は好きなんです、村のみんなも....。でも、その、何と言うか....。」
リョウ「(これはもしや、お悩み相談!私でいいんでしょうか!?)」
パメラ「この村では、いかに狩りができるか、というのがその人の価値を決めるんです。私は狩りが苦手で.....。どうしても怖くて....。」
リョウ「わかります。私もてんでダメです。なんで冒険者なんかになったんだろうってよく思います。」
パメラ「そ、そうなんだ.....
リョウちゃんはムーンキーパーなんだね。
私たちはサンシーカー。氏族のために生きなきゃいけない。
結婚相手も決まってるの、族長の後ろに息子が二人いたでしょ?あのどちらかと契りを結ばないといけないの.....しかも他の女の子もみんなその人と....。」
リョウ「そういう伝統なんですよね。しきたり、というか」
パメラ「うん、それは私もわかってるんだけど....。
将来も決まってるし、ずっとここで暮らしていかなきゃいけないって思うと、窮屈で息が詰まりそう。」
閉鎖社会が生み出す外界との落差。この類のフラストレーションは当然起こってくる。抑えつけようとすればするほど、外へ向かうベクトルも強くなるものである。
同じミコッテ族のリョウが自由に生きている姿を見て、その思いはより強く、外の世界へと惹かれていったようだ。
リョウ「じゃあパメラさん、家出しちゃいましょう!」
パメラ「い、家出!?要するに村を出るって事だよね?」
リョウ「しきたりとか、伝統とか、重たく背負っちゃうから窮屈になるんです。もっと軽く、こんな家出てやる~!って言っちゃえばいいんですよ!
一時避難と考えてください。」
パメラ「そ、そっか!少しの間だけ出ていくって風にすればいいんだね!
うん、何か軽くなった! でも、とはいっても一人で外の世界でどうやって生きていけばいいんだろう.....。この村以外の事、何にも知らないの....。」
リョウ「ふっふっふ.....私に名案がありますよ!」
不安な表情のパメラをよそに、リョウは得意気な笑みを浮かべる。
するとそこに、ドアをノックする音が2つ。
そのままリリルが入ってきた。
リリル「具合はどうですか?我々が討ち損じていたサンドウォームが潜んでいたと聞きました。命の危険にさらしてしまい、本当に申し訳ありません。」
パメラ「そ、そんな!みなさんが居てくれてなかったら、この村は無くなっていました。感謝の気持ちでいっぱいです!」
リョウ「私がもっと強ければ、こんな騒ぎにもならなかったんです。もっと訓練して、みんなと一緒に戦えるくらい、強くなります!」
リリル「あなたのその勇気があれば、必ず立派な白魔道師になれます。その時は是非、パーティーの癒し手として共に戦ってください!」
リョウ「にゃはぁ~っ!がんばりまっす!
ところでリリルさん、いいところに来てくれました。実は、折り入って相談が.....。」
パメラとの話のいきさつを説明する。
リリルは真剣に聞き入っており、何度もうんうんと頷いている。
リリル「なるほど、そんな思いをされていたんですね。と言う事でしたら是非、我が商会「月の沙漠」で仕事をしてみませんか?
と言うよりむしろ、こちらからお願いしたいです。先ほど族長と、少し言葉を交わしたんですが、今回の件で我々の事を痛く信頼してくださり、どうやら手を取り合っていく運びになりそうなんです!
そうなると、ウ族の人々との橋渡し役として、どなたかに商会の一員になっていただきたかったのですよ。
それは即ち、この村のしきたりと伝統から抜け出し、我々と一緒に世界中を周ってもらうことになりますけどね!」
パメラ「ウソ.....信じられない、こんな事って.....。
わ、私!がんばります!よ、よろしくおねがいします!」
リリル「こちらこそ、パメラさん。とは言ってもちゃんと族長の許可を頂かないといけません。
けどご安心を。
私が問題なく話を運びますので。」
リョウに心を軽くしてもらい、リリルに村から連れ出され、仕事までさせてくれる事となり、一気に3つのストレスから解放されたパメラは、喜びと驚きを隠せない。
ずっと両手を口に当て、目をまん丸くしている。
砂漠に夜が訪れる.....。
昼間の出来事が嘘のように静寂と、満天の星に包まれる。
この一日でいろんな事が起き過ぎたのだろう、パメラは疲れ切って詰所のベッドでそのまま眠ってしまっている。
リョウも、うつらうつらと眠りに入ろうとしていたが、表のドアがパタンと閉まる音に気付き、体を起こし部屋を出る。
ドアを開け外を見渡すと、小川に架かる橋の真ん中で一人、ポツンと空を見上げているあんずを見つけた。
リョウ「眠れないんですか?先輩。」
あんず「あぁ、リョーコ。うん、ちょっとね、いろいろ考えてた。」
リョウ「リリルさんとグレイさん、普通の商人だと思ってたらビックリでしたね。すごかったです。」
あんず「そうよね、あたしもビックリした。何かね、元々冒険者をしてて、その時からのコンビなんだって。」
リョウ「そうなんですかぁ、息もピッタリでしたもんね!でも先輩の強さにも驚きです!
初めて本気の黒魔法を見せてもらいました!」
あんず「う、うん.....。」
伏し目がちに視線を落とし、あんずは表情を曇らせる。
あんず「リョーコ.....。傷、見せて?」
リョウ「あ、はい、もう出血は止まりましたよ。先輩の応急処置がよかったんですね!」
シュルシュルと、まかれた包帯を解いていく。リョウの右腕から肩にかけて、サンドウォームの牙による傷があらわになる。
出血は収まったとはいえ、痛々しい生傷である。
あんずは、傷を隠すようにそっと手を重ね......
「ごめんね....」
そして、リョウの背中におでこをくっつける。
リョウ「せ、先輩.....? 泣いて.....」
あんず「........約束したのに....危険な目には会わせないって.....。
あたしがもっとちゃんとしてれば....油断しなければ、グスッ.....こんな傷も付かなかった....。」
リョウ「.......先輩は優しいなぁ。お母さんみたいです。
先輩のそんなあったかい気持ち、大好きです。
あんまり自分を責めないでください。
私、もっと強くなりますから。
強くなって、みんなも、自分も、守れるようになりますから。
だから、泣かないでください。」
あんず「うん.....グスッ......ごめんね....。
でも、もう......誰も、失いたくない....
傷付かせたくない......。」
リョウ「先輩.....。」
リョウは父親を亡くし、あんずは両親をなくしている。
この動乱の時の中で、それでも生き抜き、他にもたくさんのものを失ってきたのかもしれない。
そう察したリョウは、ポロポロと涙を流すあんずに向き直り、そっと抱きしめる.....。
リョウ「大丈夫ですよ、私はここにいますよ。
先輩を置いて行ったりしません。
こんなに泣き虫な先輩を、放っておけないじゃないですか。
ほら、見てください。キレイなお月さまです。
私はムーンキーパー。
月は太陽が無いと輝けないんですよ?
笑ってください♪」
あんず「うん.......うん......グスッ」
まるで、子どもが甘えるように、リョウの腕の中で泣きじゃくる。
微笑み、背中をさする。
「先輩、ありがとう......。」
昼間とは打って変わり、少し肌寒い夜の砂漠。
2人は肩を寄せ、互いの心、思いやりを通わせる。
金色の砂の海は、静かに輝く月の優しさに映しだされ、幻想的に夜に浮かぶ。
やがて昇り来る、太陽を迎え入れるように。
第7話 おわり