第六章 ドマそしてザ・バーン
翌朝、第二波止場で、マコト、ミツヨシ、ゲンヨウサイ、ザドゥ、ルクレチア、フ・デモラの六人を新たに乗船させて、 『Piume rosse II号』はヤンサに向けて飛び立った。
「なんだこりゃ、これが船か?」
「兄さんも同じ船を持っているって言ってたわね、なんて無駄遣いを」
「総艦隊『トライアンフ号』やウチの『アスタリシア号』よりも大型な空を飛ぶ船とは、恐れ入りました」
と三人の感想だ。
そしてクガネ組は
「わからん、なんでこんな物が空を飛ぶんだ、羽はついていないし、気球も無い、ゲンヨウサイ殿
なんでだ?」
「いくらワシでもこれは分かりません、マコト殿は?」
「以前エオルゼアに行った際に、もっと小型の飛空艇なら見かけましたが、これ程とは……」
とこちらは絶句している。
メインブリッジでは、ジェーニオとグ・エンベルトが編成について打ち合わせをしている
「なぁ、ヒエン殿は参加すると思うか?」
「当然だろ、あの方はいつも戦の先頭に立つのを信条にしてるからな」
「そうすると、護衛に誰をつけるかだな」
「それはゲンヨウサイに頼もうと思っている、それで四隊に別けるんだが、前衛にお前とルクレチア、ラハは確定として、もう一人欲しいな、ツィルンベルクは大丈夫なのか?」
「ああ、あれからかなり鍛えたからな、充分任せられるぞ」
「よし、では次は「癒し手」今回は各隊二人ずつ、お前の所の三人とうちから五人で良いよな」
「ああ、残りは全員攻撃担当で良いのか?」
「そうだな、後は孔雀は空を飛ぶから、遠隔攻撃が得意な師匠とアリア、サドゥ、デモラとウチの誰かだな、青龍はエスティニアン、俺、ネロ。
玄武は硬いから攻撃力重視で、ヒエン殿、テオドレット殿と、チャクハにゼンツア、ミツヨシ殿、白虎はマコト殿とオボロにジャックにユウギリ殿、と言う感じだな、
「フウマ衆は?」
「ゲンヨウサイはヒエン殿の護衛、そして今度の作戦は各隊の連携が大事だから、アカネ、カエデ、アヤメは連絡要員兼遊撃隊だな」
「良いだろう、相変わらず見事な陣立だな」
「まぁな、お前も東方の軍学書を読めよ、為になるぞ」
「いやそっちはお前に任せておく、お、そろそろ着くぞ」
「船長、どうでしょう、あの町人町の船着場に降ろせそうですか?」
「あれは『無二江』の川港ですね、少し狭いですが、水深があれば大丈夫です」
「では、降りてみてください」
「了解です、総員着水、接岸準備」
船長は乗組員に指示を出す。
ヒエンの居城『帰燕館』……城と呼ぶには粗末すぎるが、国主の館なので居城と言う扱いになっている……では、ユウギリが
「ヒエン様、ジェーニオ殿達の飛空艇が到着する様です、現在船着場に降下中との事で……
ですが、その、想定外の巨大船と言う事で……」
「ほう、そんなに大きな船なのか、それは見に行かなければな」
とヒエンは、館を出ると愛馬『絶地』に跨って船着場まで駆けた
「おう、ヒエン様じゃ」
「ヒエン様、あの大きな船はなんじゃ」
と町人地の領民達が、声をかけてくる。
「ヒエン様、お待ちを……」
絶地の後を走って追いかける、警護の『人狼族』の侍達が数名続いている。
「おう、これはまた見事な、『カストルム・フルーミニス』で見かけた帝国の飛空戦艦よりも更に巨大とは」
ヒエンが素直に感嘆しているとタラップが降ろされ、ジェーニオとグ・エンベルトを先頭に全員が下船して来た。
「ヒエン殿、国主自らのお出迎え感謝いたします」
「ジェーニオ、グ・エンベルト、良く来てくれた、他の者も加勢を感謝する」
「よぉ、ヒエンの殿様、また楽しそうな祭りが有ると聞いて、手伝いに来てやったぞ」
「サドゥ殿か、此度も頼りにしているぞ、草原一勇敢なドタール族の族長よ」
「おう、まかしておきな」
「では皆様、『帰燕館』までお越しください」
とユウギリの案内で、ゾロゾロと歩いて行く
「街が随分と発展しましたね、人が増えている様で何よりです」
「ああ、それは嬉しいのだが、そろそろ手狭になって来ていてなぁ、城下町の方の復興をしないといけないと思うのだ、だがそうすると城をどうするのかが、悩みの種でなぁ」
と道中、ジェーニオとヒエンは話しながら歩いている。
帰燕館の大広間は臨時の会議室の様になっていて、奥に、ヒエン、ユウギリ、ネロ、そしてネロの横にはシャーレアン魔法大学講師の制服を着たヒューラン族の女性が座っている。
ジェーニオ達は、その前に並べられた椅子に腰を降ろした。
全員が着席したのを見計らって、ヒエンがユウギリに向かって頷くと、ユウギリが軍議を始めた。
「では、最初に調査隊のエーテル学者、シアーナ・スカエウァさんから説明をお願いします」
「え、待て待て、スカエウァってネロ、お前まさか?」
「ああ、言って無かったな、シアーナは俺の嫁だ、優秀なエーテル学者だぞ」
「ジェーニオさんグ・エンベルトさんお久しぶりですね、まぁプライベートな事は後にして、話を進めさせて頂きますね、 そもそも、「エーテル属性変換装置」は地脈や水脈を流れるエーテルを使って、環境を本来あるべき姿に戻す為の装置です、
ザ・バーンの地は環境エーテルが枯渇していました、それは長らく『古代に、相次いで神降ろしが行われた結果、極端に環境エーテルが枯渇した』と言われていました、しかしそれだけでは無かったのです、この地は人為的に水脈、地脈共にエーテルの供給が完全に絶たれていたのです、そしてそれはアラグ帝国の行いでアジムステップで発見された『楔石の虚』がその装置の一つだと確証しています、更にエーテルと地質学の調査の結果ザ・バーン西方に存在した山地が、『魔大陸』として浮上させられ、帝国側からこの地への侵入路とされたと推測しています。
それで、以前帝国軍に対する防御フィールドを生成させる為に『楔石の虚』を使い、再びザ・バーンに地脈を通わす事に成功しました。
私達の装置はその地脈のエーテルを使い、最初の実験で小さなオアシスを再生させる事に成功しました
そして、次のステップとして、全部で20台の「エーテル属性変換装置」を使用して、大規模な環境再生実験を行ったのです。
その結果、永久焦土と言われた『ザ・バーン』には大地が蘇り、雨が降り河川が復活したのです。
そして、西方に残されたったクリスタルの残滓の砂丘が消えていくと、砂の中から古代の遺跡が姿を現したと言うわけです。
グ・エンベルトさん、主人によれば貴方が一番その遺跡に詳しい様なので、よろしければお話しをお願いできますか?」
「分かりました、一昨日にみんなに話した事と同じ内容になると思うが、みんな我慢して聞いてくれ」
「俺たちは聞いてないぞ」
とサドゥが茶々を入れるが、エンベルトは気にしないで話し始めた。
「……と言う事で、その遺跡は『天都』で間違い無いと思う、先ほどのシアーナさんの話しと合わせると
アシエン達の支援を受けた『アラグ帝国』と戦った結果、敗北して国が滅びたのだろうな、だが『四聖獣』に守られた都は国が滅びても陥落する事は無かったと言う事なのかな、
僕は東方の『風水術』がアラグと戦う為に生まれた『魔法』だったのでは無いかと思っているんだ
そして、この都の門は古代の風水術の粋を凝らした物と言う事だね、シアーナさん門には魔紋が彫りこんで有ったとの事だけど、解析はどうなってますか?」
「はい、その結果が、門を守る聖獣を同時に四体討伐して魔紋を壊す、それで聖獣へのエーテルの供給が絶たれて、彼らは消滅するという結論です」
「なるほど、よく分かりました、それでは予定通りに聖獣討滅と言う事でよろしいですね」
ネロとシアーナは同時に頷いた。
ヒエンが立ち上がり
「あいわかった、では明朝ザ・バーンの遺跡に向けて全員で出陣じゃな、もちろんワシも行くぞ」
と声をかけると
「そうこなきゃな」
とサドゥが応じたが、そこに大音量で
「それはダメじゃ」
と年配の男性の声が響いた。
開けたままになっていた入り口には僧形のルガディン族の老人が腕を組んで仁王立ちになっている。
「ヒエン様、今は国主となられた身、軽々しく出陣なさるなど国主としての心がけに欠けますぞ」
「おう、爺よ久しぶりに顔を見たと思ったらまた小言か」
「当然でござる、このゴウセツお役目を辞したとは言え若の傅役として言いたい事は言わせていただく」
「そうか、その方の言う事も一理ある、だが爺よ先の戦いではイシュガルドのアイメリク卿、リムサ・ロミンサのメルウィブ提督、グリダニアの幻術皇カヌ・エ・センナ殿もワシと轡を並べて前線で戦ったぞ
みな国を率いる者達では無いのか?」
「それは……」
グ・エンベルトは助け船を出す事にした
「ヒエン殿、ゴウセツ殿の言われる事も一理あるのです、大将は本陣にて指揮を取るべし、前線に出るのは匹夫の勇とまで言われる事もあった位ですからね」
ゴウセツが我が意を得たりと頷いた
「ですが、古来より『子曰、古者、言之不出、恥躬之不逮也』とも言われ王や大将が先頭に立って戦う事も大事な事なのです、ただそれには事前の準備、兵力の確認など色々な条件が必要ですが」
「ふむ、それは確かにそうじゃが」
「それで、ゴウセツ殿貴殿も今は『僧侶』、どうでしょう、癒し手として今回の遠征に参加いただけ無いですか、それでヒエン殿の後に控えていただければ良いと思うのですが」
「ううむ……」
「ははは、爺よそう言う事だ、わしの背中は任せたぞ」
「はは、このゴウセツ命に変えましても」
「たわけ、お主は一度死にかけているのだぞ、もう二度目はごめんじゃ」
そこで事情を知っているジェーニオやグ・エンベルト達は笑い声をあげた。
「では陣立を発表します、東の門……」
「すまんグ・エンベルト、その中にシアーナも癒し手として加えてくれ、俺が言うのも何だが『賢者』として優秀だぞ」
「それは助かりますね、では改めて……」
とグ・エンベルトは船の中でジェーニオと立てた編成を一部変更して発表した
東門青龍 前衛グ・ラハ、癒し手ビアンカ、シアーナ、攻撃役にエスティニアン、エンベルト、ネロ、アルバ、エイジア。
西門白虎 同様にツィルンベルグ、イリス、モニカ、マコト、オボロ、ユウギリ、ジャック、セレナ
南門朱雀 ルクレチア、クロエ、ジュリア、シ・ルン、アリア、サドゥ、フ・デモラ、クリス
北門玄武 ジェーニオ、ミラ、ゴウセツ、ヒエン、テオドレット、チャクハ、ゼンツア、ミツヨシ、
と言う布陣だ。
「……です、みんな持ち場を覚えておいてください、それと各隊に伝令としてフウマのアカネ、カエデ、アヤメが同行します、ゲンヨウサイ殿がジェーニオとヒエン殿の隊で攻撃の指示をするので、皆それに従ってください、何しろ四体同時に倒さなえればいけないのですからね」
「グ・エンベルトよ見事な陣立だが連携はどうするのだ、リンクパールは使えるのか?」
「いえ、蛮神戦と同様にエーテルの乱れが有ると予測されますので使えません、ですがその為にフウマの忍び達を伝令として使うのです」
「なんだ、どういう事だ?」
「ジェーニオ、気がついていなかったのか、フウマの忍び同士は離れていても思念を伝達する技があるんだよ、『念話』の術って言う」
「旦那様、どこでそれを?」
ゲンヨウサイは慌てている。
「いや、前からアカネ達がどうやって連絡を取り合っているのかが不思議だったんだ、それでこの間入手したこの巻物を読んでいたら、フウマ独自の技として記載されてたよ」
とエンベルトが取り出したのは、先日入手した『諸国忍び術』と言うひんがしの国の忍びの各流派の技の解説書だった」
「その巻物は公儀隠密が纏めた物、なぜ旦那様が?」
「まぁその話は後でゆっくり、それでゲンヨウサイ、貴殿がこの作戦の要になるけど、頼めるね?」
「は、かしこまってございます、このゲンヨウサイ、いえフウマ・コタロウお役目見事に果たしてご覧に入れます」
とゲンヨウサイは頭を下げたが、内心では
「やはり恐ろしい人だ」
とグ・エンベルトの事を思っていた。
「だが、伝令はそれで良いとして、どうやって倒すタイミングを合わせるんだ?」
「ジェーニオ、良い質問だ、それはネロ御夫妻が答えてくれる」
とエンベルトはネロの方を見た、ネロは少し勿体ぶった様にして
「これは俺が昔使っていたエーテル測定器、こっちは暁月の奴らが使っていた測定器だ、まぁどっちも一長一短あるんだが、それでこいつが、俺とシアーナで開発した『エーテル測定グラス』だ
これを使うと魔物や蛮神などのエーテル量が可視測量できる、そしてな一度測定対象をセットすると
その対象のエーテル量の変化が色でわかる様になっている、魔物も蛮神もこの聖獣も、何ならお前達だって、エーテルが無くなれば終わりだ、だからフウマの忍び達がこれを使って聖獣を観察していれば、同時に倒すタイミングを間違える事は無いって事だ」
「なるほど、お前の嫁さんは凄いって事がよく分かったよ」
「馬鹿野郎」
ここでその場が笑いに包まれた事で、ヒエンが立ち上がった、
「これで良いな、では宴としよう、明日の為に英気を養ってくれ」
ヒエンのその言葉で、全員の前に豪華な膳が運ばれて来た、もちろんドマ名物の『白酒』付きである。
次の朝、一向を乗せた『Piume rosse II号』は「ザ・バーン」西方の「天都」遺跡へ向かって離水する
ドマ町人地のほぼ全員が、船に手を振って見送ってくれた。
ヒエンはメインブリッジの中央に腕を組んで立っている。
「グ・エンベルトよ見事な船だな、いずれドマに国力が付いたら、ワシも一隻欲しくなったぞ」
「ヒエン殿、この船は無理ですが今造船中の新型貨客船なら一隻差し上げても良いですよ」
「ほう、条件はなんだ、タダほど高い物は無いと言うからな」
とヒエンは笑っているが目は真剣だ。
「東方連合の物資貯蔵施設として使用されている、ヤンサの元帝国軍の基地『カストルム・フルーミニス』あの基地を貸していただきたい」
「何?カストルム・フルーミニス?倉庫しかないが?何に使うつもりだ?」
「新型の飛空貨客船の発着場にします、私たちが空の港『空港』と名付けた施設を作りたいと思っています」
「空の港とな、お主らその船を交易に使うつもりか、なるほどな、良いだろう」
流石にヒエンは国主と言う名の専制君主だ、なんの躊躇いも無く許可を出した、もちろんこの空港を使った交易がドマにとっても大きな利益を生むと言う事を即座に理解したからだ。
実は同様な空港は、エオルゼア三国の旧帝国軍基地を使って順次改築工事が行われる予定で
現在は、西ザナラーンの『カステッルム・マリヌム』で既に工事が始まっている。
この空港の運営は「エンベルト・ブラザース」が行い飛空艇の整備や修理を「ガーロンド・アイアンワークス」が、集客、集荷、空輸された物資の各地への輸送を「東アルデナード商会」行う事が既に合意されていた。
ウルダハの海運の中心地『ベスパーベイ』をそのまま活用する事で、初期投資費用の節約とロロリトの持つ既存の権益を犯さないと言う大きな効果がある。
実際、グ・エンベルトが空港の計画をロロリトに相談しに行った所、ロロリトは乗り気では無かった
だが、ウルダハの空港を『カステッルム・マリヌム』にすると聞いた途端に賛成したばかりで無く出資も申し出たのだった。
メインデッキではネロとシアーナが窓から外を眺めている、そこへジェーニオが近づいて
「なぁ、一応確認だが、このまま船で「天都」の上空から遺跡に降りられるなんて事は無いよな?」
ジェーニオに聞かれて、シアーナは答えた
「遺跡の外壁から上空には強力な魔法障壁がありますから、上空からの侵入は無理ですね」
「やはりそうだよな」
「でもこの障壁のおかげで、遺跡はとても綺麗な状態で保たれている事が確認されました、
きっと貴重な史跡や資料が入手できるでしょうね、調査が楽しみです」
とシアーナは既に門を開けた気分になっている様だ。
「見えてきたぞ、あれが今の「ザ・バーン」の姿だ」
ネロに言われて外を確認すると、確かに大地とそこに流れる河川、それもかなり大きな川が確認できる
「なるほど、あの土地が畑や水田だったとすれば「天都」がウルダハ以上の大都市だったのも納得できる」
とジェーニオは納得した。