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Juliette Blancheneige

Le Bouclier humain

Alexander [Gaia]

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【魂を紡ぐもの セイン】1.75話『初めての』前編

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「これは……僕の予測より使い込まれているね」
 ルーシーから渡された魔本を一瞥し、ク・リド・ティアが呟いた。
 リムサ・ロミンサ下甲板層。巴術士ギルドの置かれたメルヴァン税関公社と、国際街商通りを繋ぐ大通りの一角。
 そこで、ルーシーは巴術士ギルドマスターであるク・リド・ティアと共にいた。
 ルーシーが召喚獣の召喚や、様々な術の行使に用いる“魔本”と呼称されるアイテム。実は、ルーシー自体は魔本が無くとも召喚や術の行使が可能なのだが、確実性や安定性に難がある。大きすぎる力を制御し、指向性を与えるための端末がこの魔本だ。
 そして、魔本の作成者が、彼――巴術士ギルドマスターにして天才の誉れも高い碩学、ク・リド・ティアなのだった。
 彼の呟きを聞いて、ルーシーは破顔した。
「どーよ!」
 得意げに腰に手を当て、やや反り返る。あまり偉そうには見えないポーズだが、本人は余裕のポーズのつもりだった。
「ふむ……ラウズを使ったのか。いい記録が採れているね」
 ク・リド・ティアは魔本に接触し、そこに記録されたエーテルを読み解いていた。
「あー、そこは後から考えたら結構賭けだったんだけどさ、ま、ヤってるときは成功するとしか思ってなかったね」
 自慢げに述懐するルーシーの言葉を聞いているのかどうかのタイミングで、ク・リド・ティアはもう一冊の本を取り出した。
「わかった。この魔本は引き取ろう。以後はこちらを。機能をいくつか追加したので、手引きを読んでおくといい」
「……むむ」
 差し出された魔本を見て、ルーシーの眉根が寄った。途端に不満そうな表情になる。
 最初「僕の予想より使い込まれている」と言われたときは、ついにこの計算魔の予測を超えた! 「換えの本を持ってきて(用意して)いない」と言わせられる! と思ったのだ。この場合、換えの本が無い方がルーシーにとっては困る事態なのだが、今この瞬間でいえばそういうことではなかった。
 またしても『計算内』だったことにむくれるルーシーを見て、ク・リド・ティアは笑った。
「キミたちの旅がどういうものか知っているからね。百四十日ぶりともなれば、それは用意してくるさ」
「ちぇ!」
「ははは、けれど僕がここで回収できると予測したより遥かに多い記録が採れてるよ。誇ればいいんじゃないかな? むしろもっと早くに回収するべきだったかな、と思ってるよ」
「マジ?」
「ああ」
「ならいーや!」
 ルーシーはけろりと表情を変えると、新たな魔本を受け取った。
 それを両手で掴むと、目を閉じる。
「――コネクト」
 一瞬だけシアンの光がルーシーの体から魔本へと走った。それで、彼女の力の制御装置たる端末の変更が完了していた。
「問題なさそうだね」
「ばーっちり!」
 魔本をホルダーに納めたルーシーが笑う。そこへ、
「待たせた」
 雑踏の中からセインが現れた。
「セイン見ろコレ! 装備更新だぜ?」
 先ほどまでの不満は完全に捨て去られ、ルーシーは魔本をセインに見せて笑う。
「やるじゃないか」
 微笑んでルーシーに頷いた後、セインはク・リド・ティアを労った。
「――すまんな、助かる」
「僕も楽しんでるからね。礼は不要だよ。――それじゃ、僕はこの記録を解析するよ。しばらく退屈しないですみそうだ」
 微笑みを返して、ク・リド・ティアは二人に背を向けた。後ろ手に別れを示すと、税関公社へと戻っていく。

「セインとク・リドってさ」
 去り行く彼の背中を見たまま、ルーシーは問う。
「ん?」
「前からの知り合いだっけ」
「ああ。カルテノー前からの付き合いだな。互いに駆け出しから見知っているし組んで仕事をしたこともある」
「ふーん」
「そう考えると、今日は昔馴染みに多く会う日だな。そろそろ行こうか。ヴェスパのほうも着く頃合いだ」
 ルーシーを促すと、セインは再び国際街商通りへと足を向けた。

 賑わうマーケットを抜けて、八分儀広場へ。そこからエーテライトを用いて、ミスト・ヴィレッジへ。
 冒険者居住区であるミスト・ヴィレッジは、低地ラノシア地方、レッドルースター農場の西にある住宅地だ。冒険者のみならず、その関係者や家族などが住むこともある。
 緩やかな斜面に色とりどりの屋根が並ぶさまは、さながらリゾート地といった風情で、冒険者たちにも人気があった。
 セインとルーシーは、心地よい海風が吹き寄せるミスト・ヴィレッジの船着き場に向かう。
「あれじゃね?」
 階段を降りながら、ルーシーが指差す。船着場へ着いた一艘の小舟。そこから桟橋へと上がる姿があった。この距離からでも目立つ金髪が風に揺れている。
 ヴェスパ・アーヴァントだ。
 彼女とは、事前に合流の手筈を整えてあった。
「そうだな」
 首肯したセインに頷くと、ルーシーは足を早めた。何故だかわからないが、そうしたいと思ったのだ。歩くセインを置き去りにして、小走りで桟橋へと向かう。

 数十秒後。
「なにしてんだ三下コラ」
 ルーシーは桟橋の警護をしている黒渦団兵士にガラの悪い口調で絡んでいた。
 原因は、この兵士が桟橋に上がってきたヴェスパに誰何したことによる。
 ここは冒険者居住区であり、厳密にいえば『リムサ・ロミンサ国民』ではなくとも冒険者であれば居住が可能だ。それは第七星暦宣言の時点で、三国間でそのように取り決められた事項だった。
 だが、それゆえに出入りに対して一定の基準を設けなければ、『自称冒険者』による闇取引の場所となり、暗黒街が出来かねない。 
 そのため、地上と海上の各ゲートには黒渦団の兵士が常駐し、警備を行っている。冒険者ギルドに加入し、正規のギルド員としての証書を有している冒険者ならば問題ない。それ以外の、例えば冒険者の家族に対しては居住に際し許可証が発行されることになっていた。
 ヴェスパは冒険者だが、冒険者ギルドに加入したいわゆる『正規の冒険者』ではない。いままでも裏稼業のようなことをしてきた。当然証書などはない。
 また、ヴェスパにとって黒渦団といえば今までは取り締まられる相手、避けるべき官憲だ。その相手から誰何されて、一瞬とはいえしどろもどろになってしまった。
 兵士にしてみれば、通り一遍の手続きのつもりで話しかけたら胡乱な反応が返ってきたのだ。
 問い詰めるのは職務上全く問題がない。
 だが、ルーシーにとってはそんな事情はどうでもよく――
「さ、三下!? ぼっ、僕じゃない私は職務上必要な手続きをだな」
 凄まれた兵士はまだ年若いミッドランダーで、しどろもどろの反論をした。その鼻先に、ルーシーは自分の冒険者証書を突き付けた。
「コレはあたしのツレ。それで文句ねーよな?」
「い、いや、よくない」
「あ!?」
「ぼ、冒険者の関係者ならば許可証があるし、商人なら商人の免状がある! なんにもない奴を入れるわけには……!」
 兵士は必死に反駁した。怖いのだろう、脚ががくがくと震えている。冒険者という明確な武力を備えた相手であることに加えて、ルーシーの怒った顔は美しさと剣呑さを同居させた凄みがある。彼が押し切られないのは、むしろ賞賛に値した。
 手続き上では完全に兵士が正しく、ルーシーがごり押しをしているだけなのだが。
「えっと、ルーシー」
 とうとうヴェスパまでもがルーシーをなだめようとしたとき。
「あー、悪い悪い。その人はウチの客だ」
 野太い声がした。砕けてはいるが、粗野な感じはしない。その場に居た三人全員が声のしたほう――桟橋の入り口を向く。
 そこに、セインと共に立っているゼーヴォルフの男がいた。簡素な作業服を着たいでたちだが、身のこなしには荒事をこなすだけの余裕が感じられる。
「あ、トシントルーグじゃん」
「トシントルーグさん!」
 ルーシーと兵士が同時に言い、顔を見合わせた。
「すまんなライナス。前もって言っときゃよかったな。ルーシーは久しぶりだな」
 笑いながらゼーヴォルフ――トシントルーグが歩きながら兵士とルーシーに挨拶をした。ヴェスパの前に来ると、一礼した。
「アンタがヴェスパ・アーヴァントだな。俺はトシントルーグ。社長の使いで迎えに来たんだ」
「ええっと」
 トシントルーグの傍らに立つセインが、軽く頷いた。それで、ヴェスパの不安も解消したようだ。
「アーヴァント一家の、ヴェスパ・アーヴァントです。よろしく、トシントルーグ」
「なんだ……そうならそうと言ってくださいよ」
 二人のやり取りを見て、兵士――ライネスが安堵の表情を浮かべた。
「すまんすまん。書類は後から居住区担当官に出しとくよ」
「お願いします。――では、どうぞ」
 ライネスはトシントルーグとヴェスパに敬礼をした。ルーシーのほうを見ないようにしていたのはご愛敬だ。

「可哀そうに。震えていたぞ」
 桟橋を離れて階段を登りながら、セインがルーシーに言った。咎めるというより面白がった言い方だったが、ルーシーはむくれた。
「だぁってさあ」
 拗ねた声に一同が笑う。そのあとで、ヴェスパがトシントルーグに言った。
「ずいぶん顔が効くのね」
 まあな、とトシントルーグは破顔して返す。
「訳アリの客もいるんでな。普段からあの辺の見張りの連中とは仲良くしすることにしてんだ。まあ、それもこれもウチの社長が信用されてるってコトだろうがな」
「へええ」
 三人はトシントルーグと共に、居住区の最上層へ上がる。セインとルーシーには見知った風景だが、水平線を見渡せる絶景はヴェスパを感嘆させた。
「わ! すごい眺め! んー、いい風も吹いてる!」
 喜ぶヴェスパに、トシントルーグが言った。
「さあ、着いたぜ。あれが俺たちのミードだ」
 緩やかな坂の頂上、居住区でほぼ一番と呼べる高さの場所に、その建物はあった。赤い屋根の堅牢なそれは大きく高く、庭もまた広々としていた。冒険者居住区において冒険者が建築できる最大サイズの邸宅だ。
「うっわ、でか……!」
「ヴェスパ、口開きっぱ」
「え!?」
 慌てて口を閉じるヴェスパ。それを見てルーシーが笑う。
「さあ、入ってくれ」
 じゃれ合う女子二人に、トシントルーグが声を掛ける。扉が開けられた。 

(後編に続く)
Commentaires (1)

Juliette Blancheneige

Alexander [Gaia]

Juliette's note
冒険者居住区への出入りに関しては、作中の設定では冒険者ギルドの証書を提示しての入場としています(オリジナル設定)が、ゲーム中では簡略化されてその場面はスキップされている、くらいにお考えください。もしくは、プレイヤーキャラクターはヒカセン=英雄なので、顔パスかもしれませんね(プライベートエーテライトも設置基準が実は厳しいのかも)。
フレンドテレポやエタバンテレポはゲーム的簡便さの産物なので、作中では出さないと思います。
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