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Juliette Blancheneige

Le Bouclier humain

Alexander [Gaia]

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【魂を紡ぐもの セイン】1.5話後編『圧縮世界 フォルス・ヴォイド』6 戦鬼の庭

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6 戦鬼の庭

 荒野を進むと、セインたち一行の視界にそれが見えてきた。
 妖異の軍勢。
 デーモンの歩兵たち、首無し騎士アンクハガーの騎兵。そして、一際大きな――イフリートやタイタン並みの大きさの妖異が一体。馬の首があるところに、人の上半身が付いている人馬兵型だ。
 それが、セインたちに語り掛けてきた。かなりの距離があるはずだが、それをものともしない大音声だった。
「来たか、セイン・アルナック」
「ずいぶんと姿が変わったようだが。己の姿に自覚はあるか、ギード・オーレンドルフ」
 確かめもせず、セインはそれをギードだとして語りかけた。
「あるとも」
 首肯するギード。その声は傲岸さと覇気に満ちている。
「俺は妖異を喰った。妖異の強さを、この身に取り込んだのだ。そして、俺は俺の軍勢を手に入れた。この妖異軍を引き連れて、俺はエオルゼアへ帰還する」
「どうするつもりだ」
 知れたこと、と前置いて、ギードは語る。
「無論。――闘争だよ。戦いだ。他に何がある? アラミゴを見捨てたエオルゼアの連中にも、アラミゴを踏みにじった帝国にも戦いを仕掛けてやる。無論、帝国に従うアラミゴ人も、祖国奪還と吠えるしか能のない反乱軍も蹂躙する。
 誰も逃げることのできない戦争をやってやる。未来永劫闘争する世界だ。どうだ、ワクワクするだろう?」
 いっそ無邪気なほどに、野心と狂気を開け広げ、ギードは吠える。だが。
「いいや。毛ほどもそそられないな」
 返答には、何の熱も篭っていなかった。
「そうか。お前もその程度の――」
「むしろ」
 ギードの言葉を遮り、敢えて声を大きくして、セインは言った。
「お前のその姿を見て落胆している。惰弱に落ちたな、ギード。“餓王”の名が泣く」
「……貴様」
 一瞬の沈黙のあと、ギードが唸り怒りを露わにした。それさえも取り合わぬように、セインが告げる。
「悪夢を終わらせよう。ギードのなれの果て、死骸に取りついた妄執よ」
 もはや、問答は不要だった。セインの言葉が、開戦の合図だった。
「――包囲しろ! 圧し潰せ!」
 ギードの叫びと共に、妖異たちが陣を敷く。ギードを起点として、両翼に騎兵と歩兵が展開していく。両翼はさらに伸びて交わり、円形の包囲網となった。包囲し、数で圧倒しようという戦術だ。
「では、こちらもいこうか」
「あいよ!」
 セインが言い、ルーシーを招く。セインの前にルーシーが、セインと同じ方を向いて立つ。
 それから、目をつむった。常の明るく悪戯っぽい表情は消え失せ、人形のような静謐を彼女は纏った。
 無機質な声色で、ルーシーはセインへと問う。
「命令を。我が主君」
「敵首魁への攻撃、撃滅。魔本の封印を解く。全力でやっていい」
「拝命した」
「行け――“ルクレツィア”!」
 セインの声と同時にルーシー――セインに“ルクレツィア”と呼ばれたその姿が、変貌を遂げた。
 全身に幾本もの直線状の紋様が現れ、その中央をシアンの光が貫いていく。アラグの魔科学によって作られた証。
 瞳が真紅に光る。両腕は肘から先、両足は膝から下に、ヴァイオレットの光の渦が現出した。それは流動し、激しい明滅を繰り返していた。
 変化は一瞬のことだった。
「さあ! イくぜ!!」
 牙を剥き出しにして吠えたルクレツィアが、手にした魔本を高らかに掲げる。その途端、魔本に炎が宿った。魔力イメージが、噴き上げる炎となって――魔本を燃やし尽くしていく。
 同時に、カーバンクル・サファイアとマジャの体に異変が起きていた。二体とも魔本を灼く炎と同じ炎に包まれ、苦しみ始める。
「ちょ……だいじょうぶなの!?」
 慌てるヴェスパ。それに答える代わりに、ルクレツィアは技の名を叫んだ。

「ラウズ!」

 次の瞬間、炎が弾け――変異した“二人”が現れた。
 カーバンクル・サファイアは、まだ十代初めと思しきミコッテの少女に。腰までの黒髪、白い肌。ツリ目に輝くのはサファイアの瞳。身に纏った黒い装束は薄く密着するもので、細身の体を際立たせていた。
 その両手に嵌められた手甲には、明らかに本来の手よりも数倍大きい爪と、肘から張り出した大きな刃が装着されていた。凶暴な獣である本性を見事に写し取った姿だ。
 一方のマジャ・ト・セトランは、三十代初めと思しきミコッテの男性に。紫がかった黒髪に褐色の肌、不敵に光る赤紫の瞳。クァール時の自身の肌を写し取ったかのような、銀色の鋼線で編まれたかのような派手なコート。前を全開にしたシャツから、逞しい胸筋が覗く。
 豪快な身振りで炎を払うと、その両手には黒い銃が握られていた。形状としてはハンドガンだが、異常な長さと大きさだった。銃把の底につながった銀の鋼線は、二つに分かれた自身の尾だ。
「はっはー! やっぱこの姿はいいなあ! オレが一番映える! ――ようチビッ子、相変わらずちんちくりんだウォゥ!?」
 豪快に笑ったマジャに皆まで言わせず、カーバンクル・サファイアがジャンプしてマジャの顔面に蹴りを放った。あっという間の挙動だった。
「ちょーし、のんな。おっさん」
 言い捨てながら、カーバンクル・サファイアはルクレツィアの元に駆け寄る。その彼女に頷くと、ルクレツィアは敵陣の最奥、異形と化したギードを見る。
「一気に駆ける。ザコは無視。着いたら……暴れまくれ!」
「ヤ!」
 短く了承の叫びをあげて、カーバンクル・サファイアが低く構える。隣でルクレツィアが軽くステップを踏みながら、長く息を吐いて、吸った。
 次の瞬間、二人の姿は消え失せた。
「え……!」
 ヴェスパが驚きの声を上げたときにはすでに、二人はギードへと攻撃を開始していた。
「はっや! でもいいの? 孤立しちゃうよ」
「だぁいじょぶだって。姐さんとチビッ子なら、そもそも敵の攻撃が当たらねえ。俺たちがザコを片付ける間くらいは余裕だろ。なあ旦那?」
 蹴られた鼻をさすりながら、マジャが請け負う。セインが頷いて、言った。
「ああ。俺たちの仕事は、敵をひきつけて仕留めること。マジャ、全力までどれくらいだ?」
 不敵に笑ったマジャが、包囲を完了して押し寄せてくる妖異の軍勢を見ながら言った。
「この規模なら三十キルってとこだな」
「了解した。ヴェスパ、マジャが全体攻撃をするタイミングで、そちらも合わせてくれ」
「りょーかい! この広さなら、コレ使えるしね!」
 ヴェスパが緑色の珠を出す。風生みの珠だ。
「お! イイもの持ってんじゃねーか!」
「うっふっふー。そっちこそ期待してるよん」
「――来るぞ。“切り札”発動まで、敵視を取って引きずり回す。確実に削るぞ」
「おう!」
「あいあい!」
 二人の返事を聞きながら、セインが敵集団に突撃した。

 フラッシュ。
 走り込んで、再度別の集団にフラッシュ。
 集まった敵集団にサークル・オブ・ドゥーム。アルティメイタム。敵を釘付けにすると、マジャが両手の銃で敵を撃ち抜いていく。その攻撃は強力で、双銃が吠えるとき、そこには必ず屠られた妖異がいた。
 戦場には百を下らない数の妖異がいたが、密集してしまったことで逆にその数の優位を生かしきれない。
 一度に接敵できる数は十から二十に限られ、結果的にたった三人の集団を潰すことができないでいた。
 無論、いかなセインとて、休みなく訪れる妖異たちから無傷ではない。特に範囲攻撃を重ねられた場合逃げ場がなく、耐えるしかない。
 そこにヴェスパの治癒が飛ぶ。攻撃を継続ダメージの風魔法に絞り、巧みなヒールワークでセインを支えていく。
 さらに言えば、敵指揮官をルクレツィアとカーバンクル・サファイアが分断したことが大きく影響していた。
 妖異たちはいまひとつまとまりに欠け、数を減らされていった。

「――キタァ!」
 マジャが叫んだ。敵を屠るたびにその身体は紫の電光を身に纏い続けていたが、ついにその紫電が最高潮に達したのだ。
「いけるぜ、旦那ァ! ヴェスパちゃん!」
「やってくれ!」
「かしこまり! ――アタシからだね!」
 応えたヴェスパが、風生みの珠を高く投げ上げた。そして唱える。
「――エアロ・バースト!」
 激しい竜巻が巻き起こり、巻き込まれた珠が割れ――次の瞬間、竜巻は戦場全体を覆う巨大な嵐へと成長した。
 戦場にいるすべての妖異が、身動きを封じられる。同時に、仲間たちにのみ風を遮断する結界をヴェスパは付与していた。
「マジャ!」
「おうよ」
 答えるその手には、いつの間にか双銃は無い。代わりに、自らの胴回りよりも太い銃身と、自らの身の丈よりも長い巨大な機関を備えた銃を構えていた。
 腰を落とす。銃の後部に付いていた巨大な杭が、地面へと振り下ろされる。機関が紫電を纏い起動する。銃身を螺旋の光が覆う。
 懐から遮光眼鏡を取り出し、器用に片手で嵌める。
「いくぜ。ショウタイムだ」
 低めた声で決然と言うと、マジャは引き金を引いた。

「ぬぅあ!」
 衝撃波さえ伴って振り抜かれるギードの斧。だが、ルクレツィアとカーバンクル・サファイアはそれを躱し、馬状のギードの足を攻撃し、そして離れる。
「ちょこまかと……!」
 超高速で移動する二人は、それぞれ別の場所を狙う。片方を狙えば、狙われた方は回避に専念して被害を最小限に留める。そしてもう片方が攻撃をする。
 さりとて、双方を狙うような大振りの打撃は二人ともに回避される。今のように。
 無論、ダメージがないわけではない。それでも、二人はギードを少しずつ削り続けていく。この繰り返しだった。
「ハッハー! どうした、でくの坊! くじテンダーの五等より稼げてねえぞ?」
「――ふざけ……」
 ギードが突然その馬体を持ち上げた。後足だけで立ち、前足を高く掲げ――振り下ろした。
「るなあ!!!」
 地面に突きたてられた前足から広がった衝撃波が二人を同時に襲う。振り上げた時点で全体攻撃と読んでいた二人は後退していたが、予想以上の広域が攻撃の範囲だった。
「――チッ!」
 耐える二人。ダメージが容赦なく体力を削り取る。
 有効と見たギードは、再度立ち上がり――
 直後、戦場全体を覆う竜巻に巻き込まれた。
「ぬ……!」
 身動きが取れない。態勢を崩した体が倒れるのを立て直すのが精いっぱいだった。
 そこへ。
 死神の咆哮が戦場へ響き渡った。
 轟然と吐き出される弾丸。強力無比な超硬サーメット・ジャケットの物理弾丸を電磁加速し、雷属性のエーテルを纏わせ、毎秒八十発の速度で射出する。
 命中した弾丸は敵対内に侵入時点で炸裂、サーメットの破片と雷属性の魔法爆発により体内をぐずぐずに引き裂いていく。
 弾丸を喰らった相手は体内破壊の余波で体をがくがくと痙攣させながら倒れ死にゆく。
 これがマジャの“切り札”、『バレット・バレエ』。
 マジャたちを囲んでいた妖異は、悉くが倒れ、エーテルへと分解されていく。
「な――」
 驚愕に目を見開いたギード。その隙を、ルクレツィアとカーバンクル・サファイアが見逃すはずがなかった。
「サファ!」
 呼びかけながら、ルクレツィアが跳躍する。同時に跳んだカーバンクル・サファイアとともに、ギードよりも高い位置から――
 手刀を振り下ろした。
「「カオス――セイバー!!」」
 必殺の手刀が、二撃。ルクレツィアとカーバンクル・サファイアからそれぞれ放たれた。
 躱す暇など無く、ギードは二人の攻撃をまともに受けた。ルクレツィアが袈裟懸けに、カーバンクル・サファイアが逆袈裟に放ったそれは空間を歪ませ、次元を斬り裂いた。
「がああああ!!」
 絶叫するギード。だが、まだその身体は消失しない。
 馬状の足がふらつき、後足が力を失い膝をつく。斬られた胸の中心から、地面へ鉄の塊が落ちた。斧だ。人間としてのギード・オーレンドルフが使っていた両手斧。
「……まだ……だ!」
 がくがくと体を震わせながら、それでもギードは立ち上がろうとする。
「くそ……ッ、しつっこいな……!」
 カオスセイバーを撃ったことで、変化状態を終えたルーシーが毒づく。カーバンクル・サファイアも――マジャ・ト・セトランも、それぞれの切り札を撃ち終えたことで限界を迎えていた。
 人の姿のまま、その姿は光と化して消え去った。
「俺は……まだ! まだ戦える! お前たちを喰らい、力を得よう! そして……」
「いや」
 セインの声は、ギードの足元から聞こえた。その手には、かつてギードが使っていた両手斧が握られている。
「お前は、ここで終わりだ」
 両手斧が、光を帯びた。武器そのものが内側から光を放っているのだ。目を閉じ、一瞬集中したセインの腕の中で、斧が消失する。
 そして。
 その手の中に、マテリアが現れていた。赤く明滅するマテリア。生命の鼓動のようなマテリアだった。
「――『原初のマテリア』」
 短くそれだけ言って、セインは手にした武器――刃の無い、柄と鍔だけの剣――へマテリアを装着する。赤く明滅する刃が生まれた。
「お……おおお!」
 思わず見入ってしまったギードが、慌ててセインへ斧を振りかぶる。その武器が何を意味するのか、直感で悟ったのだ。それを受ければ、力を失う、と。
 だが。
 全力で振り下ろされた斧は、セインへ届かなかった。踏み込んだセインが斧を刃で受け、斧が斬り飛ばされたからだ。
「――!」
 ギードが驚愕する中、セインは動きを停めなかった。受けた勢いを駆って跳躍。捻りを加えながら、刃を振り抜いて着地した。――ロイヤルアソリティ。
「お……」
 刃が砕ける。同時に、ギードの体が黒い靄となって分解されていく。
「があああああ!!!」
 絶叫と共に、妖異としてのギードの体は消失した。あとには、人間としてのギード・オーレンドルフが倒れ伏していた。
「……なに、今の」
 ヴェスパの問いに、セインは倒れ伏したギードへと向かいながら答える。
「こいつの武器をマテリアにした。――俺はちょっとだけ他人と異なっていてな。マテリアに人の想いをさらに加えることができる。
 ――武器に宿った、こいつの“人間としての”生への想い、渇望、情熱……生きているからこそ得られる魂の鼓動に、かたちを与えた」
「すご……」
 そのとき、ギードの手が、傍らに立ったセインの足を掴んだ。
「え! 生きて……」
 駆け寄ろうとするヴェスパを、ルーシーが止めた。ライムグリーンの光を湛えた目を閉じ、首を横に振る。
「――もう、肉体は死んでる」
「…………俺……は、まだ……負けて……ない……」
 ぶるぶると震える腕で、ギードはセインの足に、腰にすがりながら、立ち上がろうとする。
「勝負……しろ……セ、イン……」
 セインは、答えない。ただ、黙ってギードを見ていた。
「おれは……つよく……なりたいんだ……だれよりも……そう……ちかったんだ……」
 セインの腰にすがって立ち上がろうとした、その膝が、消えた。黒い靄となって消失したのだ。再び倒れるギード。
「おれは……つよくなって……つよくなって……そうしたら……もう……だれにも……」
 再度セインの足を掴んだ、その手が消えて。
 ギード・オーレンドルフはエーテルに還っていった。
 セインは何も言わなかった。ただ、消えた直後に、ほんの少しだけ瞑目した。それだけだった。

(7に続く)
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