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Juliette Blancheneige

Le Bouclier humain

Alexander [Gaia]

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『Mon étoile』(3)中編2

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3-2-2

 拠点の整備にさらに二日をかけ、いよいよ一行は本格的な調査を開始した。
 目標は二つ。
 ひとつは周囲の探索。この地域に、かつて人が住んでいた痕跡が残っているかの調査。
 もうひとつは、湿地中央部へのルート検証。最終的な目標である“マハの発見”のため、その可能性が最も高い湿地中央部へ至る道筋を求めなければならない。
 どちらも必要なことであったが、ヤヤカはまず周囲の探索を選択した。この湿地北部に人の住んでいた痕跡があるか否かが、かつてのマハの規模、あるいは人の住まう様式を知る手掛かりになるからだ。中央へ集中して暮らしていたのか、それとも広く領域を展開し暮らしていたのか。それらを知る手掛かりになり得る。
 空は灰色の雲に覆われ、雨の気配を肌に伝えていた。
 まずは川沿いに東へ向かうことにした一行は、周囲を警戒しながら、草を払い、道を作るようにして進んだ。川に沿うと言っても、近付きすぎれば例の巨大鰐と遭遇する可能性がある。ヤヤカたちは川を視認できる範囲で、適度に離れた場所を進んだ。

 異変があったのは、昼食のあと、探索行を再開してすぐのことだった。
 エオルゼアでは見たことのない植物を採集していたヤヤカは、手に触れた大きな塊を最初に石だと思った。それは確かに石だったが、ただの石ではなかった。
「待って」
 ヤヤカの声に、同じく周囲を探索、もしくは警戒していた冒険者たちが集まってくる。
「どうしました」
「これ」
 ヤヤカが指し示したその石は――加工されていた。
 ボロボロであったが、それは確かに人工的な尖った角を地面から突き出させていた。
「……!」
 一同が息を呑む。イシュガルド出身のテオドールが、失礼します、と言ってかがみこんで石を観察する。
「……加工された石材に見えます。掘ってみましょう」
 抑えた声だが、テオドールの声には張り詰めた緊張があった。ヤヤカも含め、一行全員が同種の緊張を以て頷いた。
 そこから先は誰も大声をあげなかった。
 一行以外に余人など居ないというのに、彼らは囁き声で注意し合い、慎重に、石の周囲を掘り進める。
 二ヤルムほど掘り進んだところで、それは全容をあらわにした。
 組み合わされ、漆喰のようなもので接着された石材の塊。石壁の一部、に見えた。
 冒険者たちはさらに二ヤルムほど掘り進めたが、その『石壁』とつながるような建造物は出てこなかった。
 さすがに疲労した一行は小休止を採った。テオドールが、ヤヤカに声をかける。
「ヤヤカさん。少し、休みましょう」
 ヤヤカは、じっと『石壁』を見つめていた。それが掘り出されてからずっと、食い入るように一人でそれを見つめ続けていた。
「――テオドール」
 ヤヤカにぽつりと名を呼ばれたテオドールが、はいと返事をしながらヤヤカの隣に座る。
「分かる範囲でいいから教えて。この『石壁』の加工の仕方、見えにくいけど少しだけ残っている装飾のパターン――あなたは故郷で見たことがある?」
 静かに、確認するような声だった。故郷を皇都に持つ自由騎士は、いいえ、と首を振る。
「見たことがありません」
「わたし――似た装飾を見たことがある」
 テオドールだけではなく、冒険者全員が、ヤヤカを見た。
「ナル・ザル教団の資料室で見た、カルン埋没寺院の出土品。古代神殿の石壁に、これと似た装飾があったと思う」
「ベラフディアはマハの系譜。……伝説が、真実なら」
 ノノノの呟きに、ヤヤカは頷き、直後に首を横に振った。
「まだ、分からない。持ち帰って比較しないと、憶測で断定はできないわ。浮足立って早合点なんかしない。だって……わたしはがくしゃだから……」
 言葉の最後は、唇がわなないてよく発音できていなかった。なぜなら、ヤヤカは必死に涙を堪えていたからだ。
「ヤヤカさん」
 テオドールがヤヤカの名を呼んだ。穏やかで優しい声だった。
「これが何であれ、紛れもなく、貴方が手にした最初の成果です。貴方の言った通り、ここに来なければ得られなかった成果です。私は、貴方と共にこの瞬間に立ち会えたことを誇りに思う。おめでとうございます、ヤヤカ・ヤカ」
 その言葉が、ヤヤカの心を解きほぐした。
「―――!」
 ヤヤカは声を上げて泣きじゃくり、メイナードとリリが拍手を送った。テオドールの腕にすがって泣くヤヤカの背を、ノノノが優しくさすった。

 やがて雨が降り始め、あっという間に豪雨へと変わった。
 一行は探索を中断し、『石壁』をテオドールとメイナードが交互に担いで拠点へと帰還することにした。
 だが、そのままのルートで帰還することはできなかった。
 川があっという間に氾濫し、その幅を大きく増したこと。そして、川辺に住む鰐たちが広がった川岸に応じて姿を現したことが理由だ。
 一匹ならばともかく、複数の鰐たちとの戦闘は避けたい。まして、今一行のもとには『石壁』がある。戦闘で破損させるわけにはいかなかった。
 結果的に一行は大きく迂回するしかなかったが、それは同時に未知のルートをとらざるを得ないことを意味していた。

 豪雨によって視覚と聴覚の感知度が低下する中、それらは不意を突いて襲い掛かってきた。
 平均的なララフェルほどの大きさを持つ蜘蛛だ。大きく丸い緑色の胴体は、湿地の長い植物に隠れるのに適していた。彼らは六本の肢で這い、残り二本の短い鉤状の肢で攻撃を仕掛けてきた。以前にヤヤカが指摘した通り、基本は屍肉喰らいだが、能動的に死体を作ることで食料を確保するタイプのようだった。 
 そのとき彼らは、テオドールが最前方を切り開き、リリとヤヤカがその後ろに続き、『石壁』を担いだメイナード、最後がノノノ、という隊列だった。
 数は五匹ほどだ。
 襲われたのは再後方――ノノノだった。
「ぎゃッ!」
 忍び寄った蜘蛛に襲われ、彼女は地面に引き倒された。やっと襲撃に気付いた冒険者らは慌てて態勢を立て直そうとする。
「ノノ!」
 リリがヤヤカから離れながら、最大の回復魔法を飛ばす。回復による敵対心の上昇も含めて、ノノノから蜘蛛を引きはがそうという狙いだった。
「チッ!」
 メイナードが舌打ちし、しかし彼は一度離れ、『石壁』を下ろしてからでなければ蜘蛛たちに突撃できなかった。
「ヤヤカさん、後ろへ!」
「はい!」
 今や事態から最も離れてしまったテオドールが走り出し、ヤヤカは彼とすれ違うようにして後ろへ回った。
 そして、ノノノは――
「うにゃらぁああ!!」
 よほど頭に来たのだろう、ヤヤカが初めて聞く叫びを上げると、地面に倒れたまま魔法を撃った。収束する光が黒い球に呑まれた瞬間、轟音とともに閃光と爆炎が蜘蛛を灼いた。
 だが蜘蛛は死んではいない。焼かれつつも、なおも攻撃を続けようとする。
 下がりながらそれを見ていたヤヤカは、冒険者たちの身を案ずるあまりに、自らの足元の異変に気付くのが遅れた。
 ずぶり。
 足が地面にめり込む。いや、そこは――地面ではなかった。
 堆積した枯草や土が覆っていただけの、いわば、自然の落とし穴だった。何年、何十年もの時が創り上げた自然のカムフラージュ。ただそこを通るだけだったなら、あるいは崩壊しなかったかもしれない。しかし、予期せぬ敵の襲撃に冒険者たちは慌て、荒々しくそこを再度通り抜けた。
 結果、最後までそこに立っていたヤヤカの重さで、自然の罠は始動してしまったのだった。
「えっ?」
 周囲の草や土と共に、身体が沈む。
 逃げようにも、ヤヤカを中心として周囲が沈み込んでいくのだ。逃れることはできなかった。
「テオ……ッ!」
 視界の中で、テオドールがこちらを振り向き驚愕している。
「ヤヤカさんッ!!」
 テオドールは。
 テオドール・ダルシアクは、一瞬も迷わなかった。
 叫びと共に全速で駆け出した彼は、ヤヤカに向かって飛んだ。
 足場が無くなり落下が始まるヤヤカを、地を蹴って飛び込んできたテオドールが奪い取るように抱きしめた。
「掴まって!」
 テオドールの叫び。ヤヤカは無我夢中でしがみついた。混乱と恐怖の中で、一心不乱に、彼にすがった。
 そのまま二人は、闇の中へ落ちていった。
 
(3章後編へ続く) 

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