■□■姫との出会い■□■わたしが姫のことを知ったのは2年前(と姫には言ったけど1年前かも?)
当時、姫の日記は、ロドストの「お勧め」に載っていたと思います。お店を開くことにしたとか、どういうお店にするとか、開いてみたら人が来すぎて大変だったとか、そういう話題だったと思います。
その後、CWLSのマスター、ミントさんが、姫の店でバイトを始めたという日記を公開しました。ミントさんは、わたしがやらかしたときに、いつも、わたしの心配をしてくれる、エオルゼアのお姉さんみたいな存在です。そのミントさんが、姫の店でバイトを始めたという話は、わたしの興味をそそるに十分な話題でした。
姫ってどんな人なんだろう?
でも、わたしの思いは、ここで中断を余儀なくされます。わたしはFF14を休止して、エオルゼアを去ることになったからです。
その後、FF14を再開し、日記も書くようになって、わたしが初めて姫を見たのは、今年の夏も終わろうとする頃でした。
「会った」というよりは「見た」という方が正確です。姫は、フラタニティー飲み会にやってきました。たくさんの人が挨拶していたけど、姫は日記からは想像できないぐらい静かで、簡単に挨拶を返していました。
それから、姫が飲み会に来る度に、わたしは、「あ、来た」と思い、だからといって声をかけることもなく、流れていくチャットを、じっと目で追っていました。わたしは、大勢がいるところでは気後れして、うまく話せません。人が少なくなったときに、よくミントさんが心配して、「楽しんでる?」と声をかけてくれるぐらいです。借りてきた猫のように、おとなしくしています。
やがて、姫が「タイマンデー」と名付けた1対1で会うイベントの参加者が募集されました。
わたしは、姫に会いたい気持ちはあっても、「みんなのように姫を昔から知ってるわけじゃないし」「ミントさんのように店でバイトをするほど親密じゃないし」と「会えない理由」を付けて、いつものように姫のポストに「いいね」を押して眺めるだけでした。
そんなわたしにもチャンスが訪れます。先日の、姫主催のイベント「あの日の思い出を駆け抜けろ!姫をヴァナディールに連れてって!」です。新しく実装されたアライアンスレイドに平日ど真ん中の23時出発という、普通だったら人が集まらなくて流れてしまうような企画です。わたしは、これならわたしの入り込む余地があるかもしれないと思い、かなり早い段階で申し込みました。この行動がターニングポイントになったのです。
イベント当日、休暇を取って夜に備えるという、並々ならぬ気合いで参加しました。
姫は姫でした。姫らしく姫でした。わたしは、姫が走る背中を追いかけながら、来てよかったと心底思いました。正直、せっかくの初見ダンジョンの美しい情景は、ほとんど目に入って来ませんでした。
数日後、わたしは、イベントの様子を日記で公開しました。Xにもポストしました。正直に言うと、この時、「姫が読んでくれるかも」という淡い期待を寄せたのです。果たして姫は、わたしの日記を読んでくれて、コメントも付けてくれました。
それがきっかけになり、詳細は伏せますが、姫とは直接やり取りをすることができました。しかも、わたしが企画するトレハンに来たいと言ってくれたのです。わたしは即座に「真夜中の秘密結社」を立ち上げました。
姫はロドスト界の超有名人です。わたしは、姫のことも、姫のファンのこともよく知りません。これまで、どんなことがあったかも知りません。ただ、何となく、姫は自分の影響力をよく理解していて、その影響力を恐れているのではないかと思いました。控え目でない人が、控え目にしているときは、何かに気を遣っている時です。見当違いかもしれません。ただ、わたしも、人を集めるために姫の名声を利用していると思われるのは心外です。姫の参加を秘密にしておこう、姫をただの一人の参加者として扱おうという思いが、「秘密結社」という名称を生みました。
■□■グングニルの姫■□■姫は、かつては「グングニルの姫」と呼ばれていたそうです。自ら名乗ったわけではなく、そう呼ばれていたと。
グングニルは、エレメンタルにあるサーバーです。今も昔も過疎サーバーですが、古くからあるレガシーサーバーであり、かの有名な光のお父さん、マイディさんが在籍していたサーバーとして知られています。
「姫」という呼称はオンラインゲームでは、「実力も経験もないのに他のプレイヤーに守られながら攻略を進めているプレイヤー(女性)」という陰口になります。
上の説明が、ご本人の心臓にざっくり刺さっていたらごめんなさい。でも、わたしが、ここで、あえて、「姫」の説明をするのは、姫が「姫プ」をしているプレイヤーではないことをわかってもらうためです。
姫は、自分の日記で、自分のことを「お姫様よりうんこから数えた方が近いような人間」と言っています。
リアルのことを詳しくは語れませんが、わたしは、心理学に基づいて人を分析する仕事をしています。それこそ「ガチバトル」で対面したり、収集した情報を基に仮説を立てたりして。そのわたしが、姫と対峙しました。姫はどんな人間だったのか。
姫は正しく「グングニルの姫」だった。
名付けた人の意図は、単に「グングニルサーバーのお姫様」だったかもしれませんが、もしかしたら、伝説の武器としてのグングニルの意味が含まれていたかもしれません。もし、そうだったら、すてきなことだと思います。
グングニルはドワーフが作り、ロキがオーディンに渡した槍です。投げれば必ず命中し、手元に戻ると言われています。槍を向けた者に必ず勝利をもたらすと言われています。
後ほど詳しく書きますが、2時間の姫とのガチバトルの結果、わたしは惨敗しました。
浅はかな人のことを「底が浅い」と称します。姫は深すぎて底が見えませんでした。闇も光も全てを呑み込み、軍勢の先頭に立つ姿は、「姫」と呼ぶにふさわしいものです。「名」の後を「人」が追いかけた形かもしれませんが、圧倒的なエネルギーが周りを惹きつけるのでしょう。
わたしは対等なプレイヤーとして、姫が遊ぶ場所を用意したいという思いでした。でも、姫はそれを望んでいなかったかも。なぜなら姫は姫だから。それでも、わたしは思うのです。どんなすごい人が相手でも、対等なプレイヤーであり友達になれると。
わたしは、今このときから、姫のことを、姫とは呼びません。アンジェリカ・シャルロットという彼女が思いを込めて付けた名を愛称で、いつかは友達になれる願いを込めて、「アンジェ」と呼びます。
■□■アンジェ、魔紋をこじ開ける■□■わたしのトレハンは「真夜中の秘密結社」と装いを変えて11月22日より再開しました。
1回目は空振りに終わりました。
アンジェは、参加は難しいようなことを言っていたので想定内です。
2回目は、今度こそ、来そうだという予感がしました。わたしは、木曜日の夜から、トレハンのことで頭がいっぱいになり、そわそわして夜も眠れず、11月29日は定時に職場を飛び出して、あらゆる用事を済ませて、早々にエオルゼアへと突入しました。
時間までに集まったのは7人。アンジェはいません。顔見知りのメンバーがほとんどで、わたしを迎えてくれます。みんなには、遅れてくるメンバーがいることだけ伝えてトレハンを開始しました。
いつtellが来るのか、気が気でなかったことは、言うまでもありません。
23:00頃、アンジェが合流しました。わたしは、ただでさえ、トレハンの主催には慣れていないのに、この日はトレハンの運営の傍らでアンジェのことが気になってしまい、常にいっぱいいっぱいの状態でした。
いわば、舞台を回すのが精一杯で、シナリオ通りに演じることしかできない大根役者のような状態でした。わたしは、リアルでも感情の揺らぎを見せずに淡々と進めるキャラ付けを自らに課しているので、アンジェが合流して、心は沸点を超えていましたが、スムーズにトレハンを回すことだけに集中しました。
わたしの様子が常とは違うことに、メンバーは気付いたかもしれません。
自分の地図が最深部までの扉を開いたときも、そこで強欲が出て、負けて、全てを失ったときも、何も特別な感情が湧いてこないぐらい緊張していました。しばらくは夢に見るぐらい悔しいはずなのにね。
アンジェの地図は最後にとっておきました。アンジェの前にわたしが魔紋を開き、あまつさえ最深部まで到達したので、アンジェのプレッシャーは相当なものだったのでは?本人も「手汗がすごい」と言ってましたし。
いや、わざとじゃないよ。ほんとだよ。
アンジェは、みんなの期待(無言の圧力とも言う)に応え、見事、魔紋を開いたばかりか、リボンパラソルまで落としてくれました。
さすがすぎる■□■アンジェと深夜のガチバトル■□■2時間半に及ぶトレハンが終了し、リムサ・ロミンサに戻って解散することになりました。時刻は、すでに深夜0時30分です。
わたしは、このところ3日間連続で睡眠時間が4時間を切っており、長時間のトレハン運営で、精神力を削られ、へろへろでした。
が
頭の中では、アンジェを以前から約束していたツーショット撮影に、どうやって誘うか、そればかりを考えていました。深夜とはいえ、アンジェはログインしてまだ1時間半。寝るまで多少の時間はあるはず。ここで逃したら二度とチャンスはないかもしれません。でも、どうやって失礼のないように、さりげなく誘うか……
「みなさん、お疲れ様でした。ここで解散にします。
アンジェはわたしとツーショットね」
何これ?
そんなこと言う?
わたしは、「人に興味がない」と評されるほどで、自分から誰かを強引に誘うなんてことは、リアルだろうがエオルゼアだろうが、まず起きません。
リムサは折り悪く夜で、しかも土砂降りでした。
こんなところでツーショット撮った日には、永遠の別れを告げるドラマの一幕みたいになりかねません。
わたしは即座に決断しました。
「アンジェ、雨降ってるから、自由探索でIDに行きましょう!」
「わかりました」
アンジェは怖いぐらいに素直です。
行き先は「魔法宮殿 グラン・コスモス」。姫の名にふさわしい古典様式の壮麗な宮殿です。
最初に断っておきますが、わたしは、サクッと1枚だけSS撮って、すぐにアンジェを解放するつもりでした。もう遊びに行くような時間ではなかったから。
でも、姫が無造作に撮影用の衣装に着替えたとき、わたしのなけなしの自制心は粉々に砕け散ってしまいました。
可愛すぎる!「あやなさんのアウラ、くっそ可愛いな」
いや、くっそ可愛いのは、
あなただからね!自覚ないのかな!?
苦労してヤウェワータ・ディフェンダーコートをもぎ取ってきたのは、ほんとによかった。青と赤の対比が偶然にもベストマッチです。
でも、残念ながら、アンジェのお姫様ミラプリに合わせられるようなミラプリは用意してなかったので、この騎士服で通しました。
たっぷり時間をかけてSS撮影し、「さすがにこれ以上は、アンジェの健康に差し支える」と思い、「さっきの、ふわふわ真っ白なドレスでもう1枚お願いします」と喉から出かかったせりふを強引に喉の奥にねじ込んだその時、アンジェから質問が。
「最初に読んだのは、わたしのどの日記?」
この質問には前提があって、アンジェとのやり取りで、わたしは「2年前にアンジェの日記を読んだ」と伝えました。でも、改めてアンジェの日記を読み返してみると、公開日的には1年前なのではないかと思い始めていました。大幅にサバを読んでいたことになり、「嘘をついた」と捉えられかねません。
そして、記憶をたどるためにアンジェの日記を読み返している途中でした。毎回6千字を超える日記を書くわたしからしても、アンジェの日記は情報量が多く、これを一つ一つ丁寧に読むとなると、時間がかかります。そして、記憶力が不自由なわたしにとって、この質問は急所を突くようなものだったのです。
「記憶がスープみたいになっていてわかりません」なんじゃ、そりゃ!自分でも叫びたくなるような意味不明の答えです。
「そう」
アンジェの短い返答に、わたしの焦りは募ります。
「フードコートで女の子と話す話はおもしろかったです」
「はなくしょの話?」
「そう。マキバオーも面白かった」
「……」
睡眠不足に長時間のトレハン運営、アンジェとのデートで頭は冴えているものの、疲労は知らず知らずのうちに蓄積し、スープになったのは、わたしの脳のようでした。
「ああっ!マキバオーは違う日記だった!」
痛恨のエラーです。エラーが重なって、満塁になったところに、イージーな内野フライが上がって「やった!」と思った瞬間に球を落としたぐらいの致命的なエラーです。野球、知らんけど。
「実はわたしの日記読んでないでしょ?」
アンジェは、そんなこと言いません。でも、そう思われても仕方ない受け答えです。
こうなると、敗色濃厚となり、諦めムードがわたしの心に一気に広がりました。どちらにせよ、さっきから制限時間の終了を予告するメッセージが繰り返し入っています。
「うまく言えません。ごめんなさい」
アンジェは、わたしが楽しめるようにと、撮影やおしゃべりに長時間付き合ってくれました。こんな微妙な空気で終わってしまうのは、ほんとに申し訳ない><
「タイムアップですね。今日はありがとうございました」
逃げるように言うのがやっとで、この至福の時間が永久に終わってほしくないという気持ちと、もう限界という気持ちがごちゃごちゃになって……
わたしが最後に「退出」ではなく「ギブアップ」を押したのは、もちろんIDにアンジェを一人置いて自分だけ先に出るのはありえないと思ったのはほんとですが、これほど、わたしの心情に合った退場の仕方もないと、自虐的に思いました。
ガチバトルは、わたしの惨敗に終わりました。
甘いふわふわの綿菓子にトウガラシ詰め込んで、口に一気に放り込んだような、そんな思い出に残る夜でした。
アンジェのいない、アンジェのお店にて。
また、来ますね。
* … * … * … * …* … * … * … * …* … * … * … * … *◆毎日とはいかないけど、少しずつ日記を書いていくつもりです。
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