Personnage

Personnage

  • 4

FFで恋愛小説を書いてみた。「水彩のセレナーデ」 最終話

Public
14話 水彩のセレナーデ 最終話


↓これまでのお話。




ーーー



「……ありがとう。暖かい、暖かいよ。」


「……そうか。君は白魔道士だったのか。すごいなあ。」













ーーー



……その言葉で、救われた。



ーーー




「どう?素敵でしょ?」



「……君の絵。」







ーーー



……その言葉に、心を奪われた。



ーーー





「今話したことは、所詮クリスタルに還る人間の戯言さ。」

「さあ、ララ。元の世界へとお帰り。」









ーーー



……あなたのいない寂しさを、知った。



ーーー




「行かないでくれ、ララ……。僕を置いて行かないでくれ……。」


「君が居なければ僕は、僕は……。」







ーーー



あなたの弱さも、知った。



ーーー




「もう死んでもいいと思っていた。」


「綺麗な景色を見ながら、絵を描けていれば満足だと。」


「でも、僕は知ってしまった。」



「君の温もりを……。」



「今は、君が来る明日が待ち遠しいんだ……。」



「意識がなくとも、なんとなく感じる。」



「暖かいエーテルが、僕のそばにいる。」



「それがどれほどの幸せか……。」


「君に笑顔になってほしくて、」



「君の笑顔が見たくて、」



「でも、僕のこの身体じゃ難しい……。」



「君は悲しい顔をする、ばかりなんだ……。」



「申し訳ない、申し訳ない……。」



「だから、せめて絵の中だけでも……。」



「幸せになってほしくて。」



「……ララ、これまでありがとう。」











ーーー




自分の愛の深さを、知った。




ーーー




「自分の身体だからね、わかるんだ。」



「ララ、僕は風になって、君のそばにいるよ。」



「ずっと、ずっと……。」



「そよ風が時折、君の頬を撫でるだろう。」



「それが、僕だと思ってくれ……。」



「ララ、さよなら……。」


「僕も大好き……。だいす…き……だ……。」









ーーー



「忘れられない、」


「忘れられないよ!」


「何を犠牲にしたって、」


「どれほど時間をかけたって、」


「どんな難しいことだって!」


「あなたを助けるためなら!」


「何だって!」








ーーーー



二人で一つの魔法を唱えるのは想像以上に難しいことだった。

お姉ちゃんと両手を繋ぎ、詠唱を始める。

「「ベネ……!」」

しかし、私とお姉ちゃんとでエーテルの流れが微妙に異なっていて、

魔力がうまく流れていかないのだ。

魔法はあっという間に途切れ、呪文は空に逃げていく。

今すぐにでも治療したいのに、気持ちだけが焦る。

「ララ、駄目なものは駄目。」

「気持ちだけではどうにもならないこともあるわ。」

お姉ちゃんが優しい手で私をさする。

「そんな、そんな……!」

「早くベリルを助けないといけないのに……!」

私の手には、汗がにじんだ。




ーーー



ひと月が経った。


まだまだ、うまくいく気配は無かった。

「……お姉ちゃん。私、駄目なのかな。」

「私が、お姉ちゃんの足を引っ張っていると思う。」
いつものように愚痴を言うと、草むらから何かが飛び出してきた。


「弱い心に負けたらだめクポ!」

「わあ!」

「ププル……。びっくりした。」

「ララならきっとできるクポ!」

「モグが保証するクポ!」
そう言ったきり、ププルは元居た茂みに戻っていく。

「うん……。私、頑張ってみる。」

「ププルの言うとおりだわ。」

「まだまだ頑張ってみましょう。」
多少のことでは全く動じていないお姉ちゃんを、改めて頼もしく感じるのだった。


ーーー


さらに1年が経った。

100回に1回、うまくいく気配がした。

コツ、といえるかわからないけど、何かわかって来た気がする。

魔力を紡ぐということ。

他の人とエーテルの波長を合わせるということ。

毎日ずっとお姉ちゃんと一緒にいたから、心が通じ合ってきたのかもしれない。

それでも喧嘩することもあった。

くじけそうになるのも相変わらずだった。

でもそんなときはいつも、

「ララちゃん、エリカさん。いつも頑張ってますね。」

「最近、お菓子作りに凝っていまして。ケーキを差し入れに持ってきましたよ。」

「やっほ!あたしも来たよ~!」

みんなが会いに来てくれた。

「リリーちゃん!セピアまで!」

「あまり無理しないでくださいね。」

「ベリル君が起きたら、きっとびっくりしちゃいますから。」

「うん……。ありがとう……。」

「あら、二人とも気が利くわね。……ありがとう。」
お姉ちゃんも頬を緩めている。

「甘いもの大好きクポ~~!」

「あはは、君も太っちゃうよ?」
セピアがププルのお腹をつつく。


「……モーグリって、太るのクポ?」


「ええ。書物で読んだわ。」
ふとした疑問に、お姉ちゃんが即答する。

「食っちゃ寝の生活を繰り返したらいずれ、ボムくらいまん丸になってしまうとか。」

「えええー、クポ!!」

「もう、何百年もそんな生活クポ!」

「嘘よ。」

「えええええーー!!」
ププルがクポ、って言わないくらい驚いている。

お姉ちゃんが嘘つくところ、初めて見た。


ふふふ、なんだか楽しいな。



ーーー


ベリルは病魔に蝕まれ、全身が青いクリスタルと化していた。

レヴナンツトールの病室に、彼はずっと寝ている。

外部からエーテルを補充しない限り、あっという間に生命の灯は消えるだろう。

だけど、その時は来た。


「これならいける!」

「……!!」

「……!!!」

「今よ、ララ!」

「「ベネディクション!」」


お姉ちゃんと力を合わせ、渾身の魔法を唱える。

初めて、詠唱に成功した。


彼は淡い光に包まれていく。

竜に教わった古の魔法が、ただの石から肉体へと時を戻す。そのはずだ。


しばし時が経ち、光が消えた。


「ベリル、起きて!!」

私は、急いで彼のもとに駆け寄る。

尽きたMPなんで関係ない。
 
「ラ、ラ……?」
ベッドから首をもたげたその顔は、あまり血色が良くなかった。

ベリルの、いつもの顔だった。

「あ……。」
あなたに会えるのを、どれほど待ち望んでいたか。

「治療がうまくいったクポ!」

「リリーも、セピアも呼んでくるクポ!」
ププルが慌ただしく外へ出て行った。

「ベリル!」

「ベリル……!!!」

「……わあああ!」

ベリルにしがみつく。ただただ、涙が止まらなかった。

嬉し涙なのか、安堵によるものなのか、自分でもわからなかった。

「ああ、わたし…」

「この日のために…、今まで生きてきたんだ……。」

彼の胸に顔をうずめると、懐かしい匂いがした。

ベリルが優しく私を抱きしめ、頭をなでる。

「ララ……。」

「長い夢を見ていた気分だ……。」
すこししゃがれた声。久々に話すからだろう。

「3年、3年もかかっちゃった……。」

「ベリル、ごめんね……。」

「そん、なに……。」

「僕のために、そこまで……。」

「いいの……。」

「ベリルが元気なら、それで……。」


「その眼、その眼はどうしたんだい。」
ベリルが私の眼帯に気づく。


「いや、これは……。」


「あなたのために犠牲にしたのよ。」

「お姉ちゃん!」

「私もね。」
お姉ちゃんが余計なことを言う。

恩着せがましいようで、黙っていたかったのに。

「あなたは……。」

「初めまして、ベリル君。私はララの姉、エリカ。」

「治療のためには、難しい呪文を覚えないといけなかったの。」

「その習得には、己の眼を失う必要があった。」

「でも、気にしないで。」

「代わりにエーテルが見えるから、これはこれで便利なの。」
お姉ちゃんがふふっと笑う。


そんなに柔らかい顔も、初めて見た。

「そう、なんですね……。」
色々と心が追い付かないようだ。

「僕のために、エリカさんまで。」

「なんとお礼を言ったらいいか……。」

「いいのよ。」
お姉ちゃんは優しい表情を崩さずに言った。

「本当にいいの。」

「妹の幸せな顔が見れたんだからね。」

「あなたが眠っている間、いろいろ変わったわ。」

「私も、ララも。……リリーもだわ。」

「モーグリの友達もできたし。」

「私はあなたに感謝しているのよ。」

「あなたが居なければ、こうはならなかった。」

「私はエーテルを視る術を知ることもなく、」

「ララとこんなに親密になることもなかったわ。」

「だから胸を張って頂戴。」

「あなた、いずれ私の弟になるんでしょう?」

「ええっ!?」
ベリルも驚いている。

私は、もっと驚いた。

「へ、変なこと言わないでよ!」

「ふふふ。二人とも、お幸せにね。」

「二人の再会にに、お邪魔したわね。」

お姉ちゃんは軽い気持ちで言っているのかもしれないけど……。


私はベリルがどう受け止めたのか不安だった。



ーーーーー


銀泪湖。



僕は病み上がりの身体のまま、気がつけばここに来ていた。

クリスタルに囲まれたこの場所を、結局エオルゼアで最も気に入っていた。

時間が少しでも余ると、ここで絵を描き続けていた覚えがある。

特に、夜が好きだった。

光を蓄えた湖全体が、ぼんやりと僕を浮かび上がらせる。

真っ黒な絵具をキャンバスにぶちまけ、自分だけがそこに立っているかのようだった。

世界に僕しかいない。

そういう錯覚が僕を楽しませた。

だけど。

そんな孤独な世界に、君が現れた。

瞬きする間に、世界の中心は君になった。

ケアルを唱える君は淡い光に包まれ、

水面に映し出される君のその横顔は、柔らかな美しさを持っていた。

少し自信なさげな表情も、伝わってくる暖かいエーテルも、

君にしかないものだった。

その温もりは、僕の心の欠けた部分を急速に埋めていく。

絵にしても、言葉にしても、この感情の高ぶりはきっと伝わらないのだろう。

また、唇を奪ってやろうか。

そんな邪な考えに憑りつかれそうなほどだった。


僕は、文字通り君に救われたんだ。

3年の歳月をかけて魔法を練り上げ、石になっていた僕を治療した。

白魔法には明るくないが、きっとこれは歴史に残るほどの偉業なのだろう。

ララは偉大な白魔道士になってしまったんだ。

僕なんてただの絵描きである。

何ができようか。


「ベリル、ここにいたんだ。」

「ラ、ラ……。」
彼女は音もなく僕の隣に座った。

にこにことして、何も言わない。

尻尾だけがゆらゆらと動いている。

「何か用があったのかい?」

「ううん。何もないの。」

「ただ、ここにいるかなって。」
貰った恩をとても返せない、僕はそんな申し訳ない気持ちでいた。

「片目、ごめんね。」
とりあえず、謝る。

「ううん、いいの。」

そう言って、柔らかく笑っている。

その自然な笑みに少し、見惚れてしまうのだった。


……そんなやりとりを繰り返し、僕はふと気が付いた。


ララがこんなに笑うことがあっただろうか。


自信のない顔。苦しそうな顔。


……泣いている顔。


いつもそうだった。

だが、今のララの表情は、

その笑顔は、

「僕が絵に描いた表情だ。」

「それが見たかったんだ。」

ただ、絵にしよう。

ただひたすらに、君の絵を描き続けよう。

君が、傍にいていいと言ってくれる限り。


ーーー


「ベリル君。ララちゃん。」

「あなたたちには、この曲が似合います。」

「どうか、お幸せに。」
どこからかリリーの声がして、曲を奏で始める。

そうだ、彼女は吟遊詩人だった。


その調べは湖畔のクリスタルに吸い込まれて行く。


真っ黒だったキャンパスには、僕とララが立つ。


飽きることなく、見つめ合っていた。


言葉なんて、いらなかった。















水彩のセレナーデ 完

Commentaires (4)

Chihaya Akasaka

Chocobo [Mana]

まずはお話の完結にお祝い申し上げます。加えて、わたしどもに物語を開示し楽しませてくださったことに感謝します。

世の中には様々な(あるいは凸凹な)カップルさんがおられますが、人を繋ぐのはその能力ではなく、唯その人の持つ人柄であることを、あらためて肯かせるお話でもありました。

このエオルゼアでも同じでしょうが、多くのヒカセンが慕う人はやはり、人柄の良い世話好きな人物と決まっています。

小さなものは個人の単位で、大きなものはFCやCWLSでたくさんの人を惹きつけます。

物語に登場した姉妹も、白魔術と目覚めた人柄で、これからも多くの人を癒して行くのでしょうね。

傍にいる絵描きの男の子はやきもきしそうですけれどw

ともあれ、素敵なお話をありがとうございました♪☺️📖☕🌹

Mii Sama

Belias [Meteor]

ちはやさん、いつもコメントありがとうございます!

まぎれもなく、
ちはやさんのコメントが励みになって完結までこぎつけられました。

このお話には、
いろいろな愛を詰め込んだつもりです。

この殺伐としたエオルゼアで、少しでも心温まるように。


一度、ちはやさんにはお会いしてみたいと思っています。
応援していただいた感謝を伝えたくて!

最近私が忙しいのですが、タイミングが合えばぜひお願いします♪

Jc Crash

Tiamat [Gaia]

こんちは、完結お疲れさまでした。モードゥナの湖畔の情景が目に浮かびます。荒涼とした風景の出会いからその中に二人だけ暖かく彩をもって浮かぶラストの姿が思い浮かびました。勝手な想像ですが、二人の時間が永く続くことを願っています。素敵なファンタジーをありがとうございます。

Mii Sama

Belias [Meteor]

クラッシュさん、暖かいコメントありがとうございます!

読んでいただいてくれているだけで嬉しいですが、
気に入ってもらったようで何よりです。

次回作も構想中ですので、お楽しみに!

Écrire un commentaire

Mur de la communauté

Activité récente

Il est possible de filtrer les informations afin d'en réduire le nombre affiché.
* Les annonces concernant les classements ne peuvent pas être filtrées par Monde.
* Les annonces de création d'équipe JcJ ne peuvent pas être filtrées par langue.
* Les annonces de création de compagnies libres ne peuvent pas être filtrées par langue.

Filtrer
Monde d'origine / Centre de traitement de données
Langue
Articles