こんばんは。
この頃リアル事情でちょっと遊ぶ時間が制限されて、たいした活動ができない初級白魔道士です。
できることをということで、裁縫クラフト、マーケットの確認と出品、リテイナーさんへのお仕事の指示、釣りをしています(釣りは欠かせません)。
クラフトにいそしんでいますとアイテム枠が徐々に圧殺されていきますが、リーヴの納品で依頼される品物は一リーヴにつき一品なので、手帳の製作物を処分するにはそれほど役に立ちませんね。
それどころか微妙に名前を見間違えたりして(「ベルベティーンワークグローブ」「ベルベティーンハーフローブ」)一人でてんやわんやしています。
◆サメくん「姐さん、いい眺めでんなぁ」
私は現在、裁縫師をコツコツ進めています。ギャザラーやクラフター、また甲冑を伴わないジョブの服、帽子、あるいは靴などを製作できますよね。
基本的に私は「製作手帳の製作物チェック付け」「リーヴコンプリート」「ジョブクエスト」しかしていませんので、素材以外に同じものを繰り返し製作することはほぼありません。せいぜい大口の製作依頼くらいです。
それでもレベルは上がりますので、装備の更新やマテリアの精製、アイテム整理をしていると時間があんまりなくなっていきます。なので進みは遅いです。
で、そんな活動の中で初めて知ったんですけれど。
「別珍」と「ベルベット(ビロード)」が別のものだっていう。
ベルベットの日本語が別珍かと思ってたのでかなりびっくりしました。
天鵞絨とも書きますが、これはてっきり中国からきたんだろうなと勝手に思っていましたが、天鵞絨は和名だそうです。な、なんですとー…??
知ってましたか? 知ってましたね。よくこういう勘違いをするのが初級白魔道士の正体でございます。
というわけで今回は「別珍」を巡って右往左往する読み物を書いてみます。
「織物探訪 別珍と天鵞絨」【繊維と糸】【織ると編む】 1:織る 2:編む 番外:糸を紡がない布【別珍とベルベット】 1:ベルベット ◆語源 ◆もともとはどんなものか 2:別珍 ◆語源 ◆もともとはどんなものか 3:ベロア ◆語源 ◆もともとはどんなものか【終わりに】 別珍、ベルベティーン、ベルベット、ベロア、ビロード、天鵞絨。
「言い方だけで全部一緒かと思ったら違う」が結論ですが、じゃあどう違うのでしょうか。ついでにいろいろわいた疑問とともに、整理していきます。
【繊維と糸】 そもそも服を作るのに必要な素材をひもとけば、植物や動物などの「繊維」にたどり着きます。
繊維→糸→織物or編物→服
というような工程をたどって服が作られる、と。
例えばカイコガの幼虫の繭。植物の亜麻の繊維。羊の体毛。全部繊維です。
これらの材料を集め、煮たり叩いたり梳いたりして準備した繊維を、細く紡いでより合わせ糸を作る。
このときに使われるのが糸車(スピニングホイール)です。裁縫師の副道具は、糸紡ぎの道具に象徴されています。
◆スピニングホイール
なお、もっと原始的な道具にスピンドルがあります。糸を作ったときのアイコンはこのスピンドルによる糸紡ぎを象徴しています。
◆スピンドルに巻かれた糸
次に、作られた糸をどうするか。布にしますよね。
【織ると編む】 糸を組み合わせた布の作り方は大別すれば「織る」と「編む」があります。
1:織る 縦と横に糸を張り(経糸、緯糸)、交互に組み合わせて目をぐっと詰めます。規則正しく縦と横を交互にしたり、何本かをまとめて詰めたりと、縦横の組み合わせ方は種類がありますが、ともかくこうして糸を組み、目を詰めて一枚の布にしていくのが「織る」という工程です。
こうしてできた織物をさらに適切な形に裁ち、針と糸で縫製して服ができます。裁縫師の主道具は縫い針に象徴されています。
◆ニードル
Textileが織物を指す英単語で、Fabric(布製品),Cloth(服地),Material(材料)などいろんな言い方があります。
2:編む 一本の糸を絡めたり結んだりして布を作ることを編むといいます。糸を輪の形にしてわっかどうしを組み合わせることで一面の布になるというものです。
形を考えながら編み込めば毛糸玉から帽子ができたりしちゃいますよね。
わっかの組み合わせなので織物ほど目は詰まらず空間がありますから、ある程度の伸縮性が出ます。
Knitがこの編むという英単語です。関連語としてKnot(結び目)があります。
ちなみに船の速度を「ノット」といいますが、これはロープに等間隔につくった結び目の個数を数えて船の速度を割り出したことから来ています。なお最初期には丸太(log)を投げ込んで速度を測っていました。これが転じて、記録することをログをとるといいますよね。
番外:糸を紡がない布 正確にいえばこれは糸ではなく、集めた繊維をもじゃもじゃさせたまま、石けん水などをかけつつ叩いたりもんだりすることで繊維が一個の布の塊になる、という方法です。糸を紡いで布を織ったり編んだりする工程が全くありません。
フェルトがこれにあたります。
【別珍とベルベット】 さて、別珍とかビロードは織物です。
現代においては糸も天然素材だけでなく、樹脂や鉱石などから製造された化学繊維もありますし、技術も向上したうえ機械で製造できます。
ファッションの用語になるとどれが本当のことかわからない上、関連業者さんのWEBサイトからまるまる持ってきた説明を載せるだけのところもあって、なかなか調べるのは苦労しました。
そこで、ベルベットとは、別珍とは、ベロアとは、もともとどういうものなのか? というそもそも論をここではご紹介します。
1:ベルベット◆語源 Velvet。これは英語で、ビロード(Veludo、ポルトガル語)、天鵞絨(てんがじゅう、和名)、ベロア(Velours、フランス語)、ラテン語による語源はvellus(産毛、毛)だそうです。
holosericaが語源であるというサイトも発見しましたが、残念ながらここのほかにはちょっと見当たらず、単語のはじめがvとhで違ううえ、「holo」という接頭辞なのでVelvetの語源とはどうも思われません。
調べてみるとholosericaは「総(holo)シルク(serica)」「ピュアシルク」の意味だそうですから、つまりベルベットという織物をさした関連語と考えられます。
◆もともとはどんなものか 絹織物です。
つまり絹糸で経糸(たていと)と緯糸(緯糸)を織り込み布地に仕立てたものです。
ただの絹織物ではありません。毛足が長く手触りがよいという特徴を持っています。ふつうの織物は毛足がありませんから、特殊な加工を施して毛足を作っています。これが語源となるほどの特長なのですね。
この毛足は何なのか? 「パイル(Pile)」です。
パイル生地で真っ先に思いつくのが、タオルでしょう。
タオルの生地は表面にわっかになった糸がいっぱい並んでいますが、この出っ張りみたいなのがパイルです。
輪の部分を切って全部毛羽立ちにすると、いわゆる毛足ができます。
毛足、パイルを作るにはどうするのか。二枚の織物を縫い合わせ、その縫い目を二枚の真ん中から切るのです。
織物を上下二枚、同時に織ります。この二枚を重ねて縫い合わせるように糸を通します。
織り上がったら縫い合わせた糸を裁断します。
裁断された糸が毛足となり、織物は二枚になります。二枚の織物の距離を変えれば毛足の長さを調節できます。
これがベルベットです。
とんでもない職人芸です。誰が考えついたのか…。絹織物でこんな細密なことをするのでめちゃめちゃな高価となり、王侯貴族の布地として使われました。
なお、このベルベットがいつ頃からあるかですが、パイル生地自体は古代エジプトの時代からあったようです。ベルベットの織物は10世紀頃のペルシアのあたりから来たといわれており、おそらくこれは絨毯だったと思われます。
服地に使用するベルベットの絶頂期としては14、5世紀ころのヨーロッパ(特にイタリアの諸都市国家)が文献の初出のようです。おそらくこれはルネサンス期に織機が発達したことが深く関係していると思われます。
2:別珍◆語源 日本語。Velveteen(ベルベティーン)の日本語名称。
◆もともとはどんなものか 綿織物です。
ベルベットとは材質面ですでに決定的な違いがありますね。
パイルの作り方も大分違います。
別珍では織物の緯糸(よこいと)を経糸に織り込むとき、何本かの経糸をまとめて飛び越えます。経糸を川とみるなら緯糸は橋のようなかんじですね。
ぴょんぴょん飛び越えて織り上げたあと、布をぎゅっと圧縮すると、飛び越えた緯糸がタオルのパイル地のようにわっかとなって浮き上がりますので、頭のループを切り取って毛足にします。
この方法は毛足の長さをそれほど長くはできませんが(最大3ミリ程度のようです)、工夫によってベルベットよりコストを抑えられる製法となっています。
はっきり言えばベルベットのイミテーション(模造品)ですが、光沢と手触りは似ていて、さらに安くすむため、ベルベットよりは気軽に扱えるかんじでしょう。
裁縫師の製作物では「綿布」の次に「別珍」が来ますよね。綿製品の流れとして自然といえるかもしれません。
ただし、ベルベットを模すくらいです。上記の製造方法を見てもわかるように、織機の発展が鍵ですから、技術力がかなり高くないとできません。
ベルベットに比べて非常に新しい織物で、18世紀のリヨンから始まっているとの情報がありました。
リヨン!@@) ローヌ川の中途にある河川交易の超重要都市ですね。リヨンのお話をするとまたチョー長くなるし全然関係ないのでいつかまた。
3:ベロア◆語源 不明。Velours(フランス語)からと思われますが、これはそもそもベルベットなので、ほかに言いようがないのかも。
◆もともとはどんなものか 編み物です。
材質はいろいろですが、もともとは綿のようです。
編み物なので一本の糸を編み込むのですが、ベロアは毛足を作るため二本の糸を束ねて編み込み、片方の一本を切って毛足にするという方法をとっているそうです。
また、編み物なので伸縮性が出ます。
いつから存在するか調べましたがよくわかりませんでした。
別珍よりも新しいのは確かのようです。
【終わりに】 なるほどー…服飾関係の勉強をされている方はどのように教わったのか興味がありますね。
適当に手帳チェックしたりしてるとばんばんレベルが上がっちゃうので、別珍なんて超特急で過ぎゆく素材かもしれませんけれど、作れるものの種類は多くて「ベルベティーンほにゃらら」はいっぱいありますよね。
今日も今日とて別珍を織って服を作りますが、レベルが上がったらベルベットが出てくるんでしょうか。たのしみです。
◆サメくん「姐さん姐さん、究極のバランス感覚!」
書き手:雪