※黄金のレガシーのセルフ縛りルールに苦しむ英語力皆無の日本人プレイヤーの様子をしたためた日記シリーズ。今回はメインクエスト92レベルまで。
ストーリーの感想等は書いていないが、マップやアイテムの話は普通に出てくるので注意されたし
◆これまでの物語(暁月のフィナーレ)
第1話:
~直感で鯖を選択編~↑
↓
第28話:
~マイハウスへの訪問者~◆黄金のレガシー 旅路シリーズ第29話:
~アーリーアクセス初日~第30話:
~その街は、生きている~信じられないぐらい苦戦していた。
そう、自らに課した縛りルール
【メインクエに合わせて全ての材料を現地採集し、91-100レベル全ての調理師レシピをコンプリートする】に。
いつまで経っても見つからない。
トマトが。
楽勝かと思われた序盤の調味料作成がこんなに難航するとは思いもしなかった。
ググれば一瞬で解決するんだろうが、ネットでの検索は禁止している。ゲーム内の自力で何とかするしかない。
オルコ・パチャでの探索を諦め、新マップのコザマル・カにやってきた。滴るばかりの緑。うっそうとした密林がどこまでも広がっている。
この土地のどこかにが採集出来る樹海とやらがあるに違いない……とメインクエを放置し馬を走らせ未知のマップを踏破することから始まり。
採集手帳を開いてはヤクテル樹海、の文字に
「???」となり。
手あたり次第にハチェットとサイスを振り回していたら93レベルのレシピ【】が先に解放されてしまった。混乱は頂点に達する。
何かを見落としてしまった……?
トマトから作るチリソースを調達できない限りレシピ攻略が進まない。チリソースを用いる序盤の料理全てを飛ばして93レベルのレシピが開いてしまった……。初歩的なミスを犯してしまったのだろうか。胸に手を当てて思考に耽る。もはや何もかもが根本から間違っているのでは?シルクスのアモンがクリア不能になるバグが発生しているぐらいだ……採集手帳はミスリード……?
不具合…?まさか……!
釣り?釣りなのか?!トマトは種を土の中に植えて育てるもの……そういった常識に囚われ水中探索を怠っていなかったか?
よく考えろ、
これはファイナルファンタジーなんだ。水の中で育つトマトがあっても不思議ではない……
今思い返せば全部ツッコミどころしかないのだが、この時はマジで水中トマトの可能性に賭けていたのだ。件の野菜を求めて釣りも行った。
※所持品に用途不明の魚ばかり増えていくサバイバルコック王候補☑ コンプリートリスト(数字は制作LV)①91:メスカル料理酒
②91:ボイルド・アルパカステーキ
③93:ロイヤルメープルシロップ
④93:ロイヤルトースト
⑤94:スイートマフィン
計5品 トマトへの未練を引きずりながらメインクエを進める。81レベルダンジョン、
【イフイカ・トゥム】が解放された。
よし、気分転換にIDへ行くべ。野良の初見4人みんなで床に転がりまくって
「LOL」「whoooops」と活きのいい悲鳴をあげてこよう。
いい感じでリラックスした心持ちで
「他のプレイヤーと攻略」ボタンを選択。明るそうなダンジョンだしAOEもある程度は見えるやろ。
そして即シャキで突入したムービーを悠々と鑑賞し、眼前に広がった景色に指を鳴らして確信する。
樹海……!これぞまさしく樹海じゃないか!樹海以外の適切な表現が見当たりません。確定です!このIDを越えた先の土地にあるに違いない!
トマトを採集出来る樹海のマップが!!「hihi!let's enjoy together!」一人テンション高く挨拶し、IDを進んでいく。特にこれといったやり取りや出来事もなく、攻略で詰まるところもなくそれぞれが適度に被弾しつつ死者なしでクリアした。うむ、やはり陣と疾風怒濤は最強だな。全てを解決してくれる。
IDで新スキル
【埋伏の毒】を初めて使ってみたのだが、世界中からスタンディングオベーションが来るレベルのカッコ良さだな。学者に望まれている究極理想形のモーションだろ。知的さを保ちつつ、やや強引に敵に向かってDotを押し込むご様子をエンドレスで見ていたいものです。
思い返せば紅蓮時代は、
バイオラ・ミアズラ・ミアズマ・シャドウフレアの4種のDotを維持したまま
妖精は手動で動かさなくてはならず、モーションを堪能どころか一切見る暇などなくひたすらXHBをカシャカシャ回していたな。使いこなせた気になっていたがスペックの半分の力も出せていなかったでしょう。フェーズ終盤は光の癒しを放棄した妖精がただそこに立っているだけ、という
ニート状態になってしまっていた記憶があるわ。一番許されないやつです。
ちなみに埋伏の毒とは三国志由来の戦法のようで【
自軍の兵を投降したように見せかけて敵に取り込ませ、機を見計らって敵の動きを妨害させる計略】だそうだ。ええやん。グヘヘ……学者に求めているのはまさにこの路線だ。男キャラのヒラでも違和感なく強さと明哲さと海兵魂を見せつけていけるじゃないか。いやあ、残る新スキルも期待が高まるでござるな!
……。トマトの気配が消えました。IDを越えた先に樹海はなく、振り出しに戻された。トマトと樹海に執着するあまり、かなり時間を使ってしまった。ストーリーを進めなければ……
しかしグラフィックアップデートやらの賜物だろうか。存在感が半端ない。
メガネの。某キャラが画面に映るたびに透明感全開のレンズに視線がいってしまう。特にメガネ好きの属性は持ち合わせていなかったが、こんなにツヤツヤするなら自分も買ってみようか…でも実際に装備品からオシャレなメガネを探そうとすると候補が少なく、豊富なのは片眼鏡なのよな。眼鏡フェチ界では需要があるのか?それともデザイナーに片眼鏡推しがいるのだろうか……などと考えながら風脈クエストのテキストを高速タップし、フライングマウントを解放させる。
よし、次だ次。遅れを取り戻すぞ。急き込む感情のままオルコ・パチャの新エリアへと足を進めようとしたところで、ログウィンドウに出現した一つのシャウトが目に飛び込んできた。
「anyone have flying can help me go up? ▶コザマル・カ【24.1,31.0】」——フライングマウントが解放されてる奴いるか?ここに連れていってくれないか!示された座標はコザマル・カ中心部の小島。
小島には風脈がある。そこへ連れて行って欲しいのだろう。
ほほーん。分かる、わかりみが深いぞ冒険者よ。ここの風脈、一見罠なんだよな。
この者は久しぶりのマップ探索だから忘れているのでしょう。
飛び込める海と
飛び込めない海があり、該当の場所は
前者であることを。スプリントボタンを押せばクロールで泳ぐことが可能だし、スタミナゲージ等もないので溺れることもないことを!
足場から飛び降りれば20秒ほどで辿り着けてしまう楽勝スポットなのです。
恐らくこの者もじきに気づくはず。一見意地が悪そうに見えるこの風脈が、泳ぎで到達できる場所であることに。
だがこれは自分にとって空前絶後のチャンスの訪れでもあった。今自分に出来る範囲の英語でもやり取りできるかもしれない。焦りながらチャットを打ち、飛べるようになったばかりの馬で空を駆ける。
他の者に事実を伝えられる前に早く向かわなければ。
「okey!」
「otw」——今向かうから待っててくれ!otwは
on the way(今向かっています)の意。MMO用語を勉強していたのが役に立った……!
小島の対岸の浅瀬で佇むロスガルの姿を見つけ、着陸と同時にPT申請を投げる。複数人が乗れるマウントはいくつか持っていたが、北米鯖ならやはりこれだろう、とレガリアを選択した。
「ROOOOOOOOAD」
レガリアを高く飛ばして少し迂回し、ほんの数秒の空の旅を楽しんだ。その日の空は晴れ渡っていて、日差しが水面に反射し眩しいぐらいだったのを覚えている。ロスガルは興奮の感情をシャウトしてくれていたな。PTを組んでいてもシャウトなんだな。北米らしくていいな。
相手が風脈を解放したのを目視で確認して、このまま別れようかとも思ったが。真実を伝えないまま去るのも不親切だし、反応を見てみたくもあった。
PTを解散させつつ徒歩で海に飛び込み、華麗にクロールで去ってみせる。
「Really? lol」
「yeah」——え?まじ?ここ泳げんの?w
——そだよシャウトのやり取りは続く。そうして最後に
「ty friend」と礼があった。役に立てたなら光栄だ。というか、礼を言いたいのはこちらの方なんだがな。夢見ていた
「北米の民と旅をする」「MMOらしさを満喫する」「やりとりに積極的に参加する」この全ての目標が序盤のマップで叶ったのだから。
運命的なタイミングだった。あと3分遅ければ次のフィールドに旅立った後でシャウトを目にすることはなかった。あと3分早くてもフライングマウントの解放が間に合わず、駆けつけることが出来なかっただろう。
「誰かここに連れて行ってくれないか?」の要請に、
「ああ、そこは泳いで行ける場所だよ」とシャウトで親切に教えてくれる者がいたはず。
MMOで道行く人と色とりどりの世界の美しさを一緒に感じたい、街やフィールドの片隅でささやかなやり取りを交わして笑っていたい。日本鯖でその願いを叶えるべく何度かsayやシャウトで呼びかけをしていたものの、誰からも反応が得られなかった。FF14では無理なのか……と、たった数回のチャレンジで諦めてしまっていたな。気合いと根性が足りていなかった。
ありがとよ、革ジャンロックのロスガルニキ。君はいつものように、
”分からなければ他のプレイヤーに聞けばいい”のスタンスで何気なくシャウトしただけなのかもしれないが、おかげ様で心がかき乱されて情緒がハッピーパラダイスになった日本人プレイヤーが誕生したぞ。
君が拙者でも分かる英語で叫んでくれたから、難解な構文を投げかけられたらどうしよう、という不安よりチャレンジしてみようという気持ちが勝ったでござるよ。
うん、これからも持ち前の行動力を生かして可能性の枝を広げていこうではないか。黄金の旅はまだまだ始まったばかり。旅路の中でプレイヤーと対話していって、成長だとか衝撃だとか感動だとか、形に出来ないかけがえのないものを沢山拾っていくとしよう。
北米鯖に越してから色んな出来事があったけれど、これでまた一つ、良い思い出が増えてしまったな。これだからMMOはやめられねえよ