"ヒーラーはいない。私たちしかいないんだ"
(There's no healer, without us.)
かつてAzerothで同胞に言われた言葉です。
その時私はレイドレース常連のギルドに籍を置いていました。
最先端を追う者として周りよりいい装備を持ち、
優れたプレイヤースキルを持つ連中ばかりだったため
"我々に及ぶヒーラーはいない"という意味なのだろうと思いあまり深くは考えませんでした。
時は流れ、エオルゼア。
私もまるくなり、のんびりやりたいコンテンツを嗜む程度のゲーマーになりました。
流石にナギ期が続くと暇になったりしますが…。別ゲーに逃げることもしばしば。
そんな私でも野良零式にちょこちょこ顔を出すのは変わらない習慣になっています。
ちょっと詰めたい気分の時は身内達を呼び出したりしますが、基本的に零式は野良で行きます。
固定は絶でいいかなという理由と、零式も絶もボスは同じ動きしかしないので
プレイヤーも固定にしてしまうと単に退屈だからです。ランダム性を楽しみたいためですね。
さて、ある程度ヒーラーに精通した方ならば同意頂けるかと思いますが、
ヒーラーは熟達すればするほど全体の視野が広がっていきます。
慣れるほどギミックを片手間でできるようになるのと、
ヒーラーはスキル回しがDPSほど忙しくはないので操作量に余裕があるためですね。
プレイヤー全員の立ち位置が頭の中でイメージとして浮かぶようになり、
"あの位置は死んだなぁ"と予測して実際にその通りになったり、
各人のスキル回しや挙措を見てだいたいのプレイヤースキルを推察したりできるようになります。
特に相方ヒーラーの挙動や思考は顕著に理解できるようになるでしょう。
さて、ある程度…かなり…いえ、極めてと言ってもいいかもしれません。
とてつもなく熟達したヒーラーが相方になると、面白い現象が起きます。
思考がシンクロするのです。
最善のプレイングをするために必要な思考の論理過程を理解しており、
かつ相方ヒーラーの挙動を十分に注視する余裕があることが最低条件でしょうか。
(((
個人的に一番好きなのが学占構成で私が学をやっている時のリビデ戻しの対応です。
占側はヒールディレイを利用したベネフィラ -> 最速ディグを利用した戻しを行います。
最善択としては
マレフィジャ -> (シナストリー) ->
マレフィジャ -> (迅速魔) ->
ベネフィラ -> (ディグニティ) -> (ディグ or 何か)
となります。
学側の最善策は、まず秘策深謀 or 素深謀でMTを戻すことです。
が、ディグニティの回復量を減らす程度に早く使ってはいけません。
学側もヒールディレイを考慮してディグの邪魔にならないタイミングで深謀を入れなければいけません。
ここで面白い思考のやり取りがあります。
占星の場合、Clippingを防ぐためにディグを使う際は迅速ベネフィラを使うのが最善ですが、
"流石に無詠唱ベネフィラは学側が合わせづらいだろう"と判断し、
素ベネフィラを撃ってくれる場合が殆どなのです。例え桃業者であったとしても。
その優しさを噛みしめて深謀を合わせる時ほど学のやり甲斐を感じる時はありません。
1 Clippingの重みを感じつつ、最善のプレイングとは何かを改めて考える良い機会を与えてくれます
)))
この領域のヒラペアになると、相方ヒラのリキャが"見える"ようになります。
"このアビはここで使うのが最善"というヒールワークが当然のように二人で共有されており、
実際その予測通りに事が進んでいきます。
事故に対しても、"私たち"にとっての最善択が共有されているため、
カバーが重複することもありません。
ヒーラーをやっていてこれ程楽しいことはありません。
あたかも幾多の苦楽を共にした盟友と遊んでいるようです。
実際に盟友なのでしょう。共に研鑽を積む同胞という意味での。
"私たち"にとって意思疎通をするために、チャットもVCも外部ツールも必要ないのです。
ただ動くだけで理念を共有できる──あたかも踊るように。
美しい瞬間です。
私にとってヒーラーの至上の喜びです。
この一合に立ち会うためにFF14を続けていると言っても過言ではありません。
"私たち"に上辺の数値や勝ち負けはもはや問題ではありません。
全ての挙措に意味があることを、私が所詮一端のヒーラーでしかないことを思い知らせてくれます。
同時にまだ学ぶべきことがあることを、旅に終わりがないことも改めて認識させてくれます。
"踊れる"機会はそう多くはありません。
だからこそそのような時が来たら最大限楽しむようにしています。
フィールドは舞台、ボスは脇役でしかありません。
私の手を取ってください。貴方の手を取りましょう。
踊りましょう。踊りましょう。この心の昂ぶりが、消えてしまう前に。
そして心の中で叫ぶのです。
"ヒーラーはいない。私たちしかいないんだ"
と。