Personnage

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Sen Ortiz

Mage rouge Makai

Carbuncle [Elemental]

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旅人センと北への旅立ち

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第七星暦ストーリー


***


お前がやったんだろうと叱責を受けるたび、センはパンを思い出す。
艶のある、握り拳ほどの丸いパンだ。
疑いの目はいくらも向けられてきたのに、いつだって、そのパンのことばかり思い出す。

昔、センがまだ子供で、世界のほとんどすべてに牙を見せ、敵意を隠すことを知らなかった頃のことだ。
パンがひとつ、地面に落ちた。センはそれを見ていた。
すぐにセンに罵声が飛んできた。
お前が盗んだんだろうと、勿論、冤罪なのに
そんな声がかかるのは当然のことだと、センは受け入れていた。

痩せた子供に罵声が飛ぶのは当然のことだ。
たとえ盗んでいなくても、パンはただ地面に落ちただけだとしても、汚い孤児というのは、それだけで疑いの目を向けられる。

パンでなくたって同じこと。
薬、砂糖菓子、煙管、財布、帽子に靴。
貴人の命だって、こいつなら取るだろうと思われる。


***


センの目の前で、女王の小さな体が落ちる。
人の体は、倒れても音は少ない。
ただ、装飾品や手に持っていたグラスのほうが、派手な音を立てる。

まず思ったのは『まずい事になった』ということだ。
地位のある人間がセンと二人きりの時に意識を失った、それが嬉しいことじゃないと、センにもわかる。
次いで『そうじゃない』と思った。
理解を示してくれた貴人の容体よりも悲しみよりも、保身を考えた自分を省みる。
それはやっぱり、良くないことだ。
大丈夫なんだろうか。今すぐ駆け寄って、生きているか、死んでいるかだけでも確認して。いや、先に侍女を呼んで、私は何もしていないって説明しなきゃ──。

結局、センがどんな行動をするよりも先に、踏み入ってきた砂蠍衆が思った通りの発言をしてくれたのだけど。

貧しい人間はそれだけで悪だ。
悪と扱われても仕方ない、受け入れる他にないのだということを、センは知っていた。
もちろん、センはもう貧しいだけの子供ではない。暁の仲間達は、冤罪であることを……センが罠にかけられたのだとすぐに理解してくれたし、王宮から逃げることもできた。
だが、今はそこまでだ。
罪人の謗りを甘んじて受けて、センはこれから、逃げなくてはならない。

「……ちっくしょう……」

気をつけていたのだ。
店に入れば、購入するその時まで商品を手に取らない。
手に取って見るよう勧められても、極力避けたし、
なにか事件が起きたときは、早めに自分が無関係であること、関係しているのなら、どこでどのように関係したかを早めに主張する。
これはもう、シノンや仲間に言われるまでもなく、体に染み付いていた。

最近はそう言うこともなかったから、油断していた。
そう言う他ない。

もっと上手くやれたという後悔。
罠にかけられたという悔しさ。
それら全てを燃やすように、怒りの火が灯る。

裏切られた。濡れ衣を着せられた。


***


そもそも、自分が英雄などと呼ばれているのがおかしいのだ。
怒りは勿論あって、だからこの状況をセンに押し付けたイルベルドには、100回殺したって足りないくらいに怒っている。
だがそれは、殴られれば殴り返したいと欲するたぐいのもので、このような扱いにはどこかで納得していた。

だからだろう。センは冷静に、今からどうするか考えられている。
チョコボ・キャリッジに乗って、ウルダハから離れて少し。
センは星空の下、遠くに見えるウルダハの街を──丸いドーム状の建物の連なる影を見ていた。

今、戻るのは危険に過ぎるとはわかっている。
それでもウルダハには、センを追ってやってきて、リテイナーとして働いているシノンとムッテが今もいる。
一度戻って、二人に声をかけ、必要な物品を……せめて金と服を持ち出さなくてはならない。
イシュガルドは寒い国だ。逃げるにしたって、先立つものは必要だ。
無い袖を振るわけにもいかないが、有る袖は触れるようにしておきたかった。

そしてこういう時に大切なのは、見つからないことだ。

自分は犯人ではない罠にかけられたのだと、言って回ったって意味がない。
それはもう、諦めるとか諦めないとかの話ではなくて、当たり前のことだ。
センの言葉には、耳を貸すものなどいない。

見目をまず変える必要がある。
黒い髪と黒い肌はウルダハではまだ目立たない方だが、セン自体が英雄としてすっかり有名になってしまった。
今の服装のままでいるのも拙い。
センは岩陰に隠れると、着ている服を脱いで、頭からローブを被った。
センの黒い肌は日差しに強い。雨が降った時の為に持っていたものだが、これほど役立ったこともなかった。

ローブを目深に被り、髪を解く。
仕上げに泥を手に取って顔を汚し、人相を変える。
昔なら顔を綺麗にすれば変装になったが、最近は清潔にしているから、汚す方が顔が変わるのだ。
目立つ弓矢と、元着ていた服は、ひどく惜しかったがその場に捨てた。
チョコボに乗るのも目立つから、センは徒歩で、難民のような顔をして、ウルダハに再び戻る。


***


真夜中にもかかわらず、回廊には人が多かった。
ほとんどは暁の面々を探す人々で、センは不滅隊や銅刃団が通る度に、首を縮めてやり過ごさなくてはならなかった。
幸いというべきか、そのような一大事のさなかに、難民一人に拘う人間はおらず、
センは警戒しながらも、呼び止められることは一度もなかった。

「セン!?」

窓から入ってきたセンに、シノンは目を丸くした。次いで、窓を大きく開けて慌ててセンを迎え入れる。

「……あ、もしかして結構まずい?」
「まずいも何も……とにかく入って。誰もついてきてないよね?」

周りの言葉も騒動からも、真実味は感じなかった。
追われれば逃げることができて、見つからないように戻ってきても尚、怒りに酔ったような、奇妙な高揚があった。
けれど、シノンのその顔が、何よりも的確に、センに状況を教えてくれる。

「……あの。私、服……準備とか」
「わかってる。まずは食べて。何も食べてないだろ」

水牛乳とクイックサンドだ。
食欲などない気がしたが、口をつければ、たっぷりの具の乗ったサンドは胃に染み渡るようだった。

食べながら、シノンに事情を説明し、
次いで街の状況を聞く。

「おれが戻ってきたのは夕方でさ。
 食事して、ムッテさんと話して、
 そろそろセンが王宮に呼ばれてる頃だなんて思ってたら、
 いきなり騒がしくなったの。
 暁とかセンって聞こえたから、おれもまずいと思って……
 モモディさんと、オトパ・ポットパさんに話して、
 ここには誰も泊まってないことにしてもらった」

そこまで話し、シノンはセンに微笑みかけた。

「信じてくれる人もいるよ」
「うん」

信じてもらえることは嬉しかった。
どんな騒ぎが起こり、センが追われているのを目にしても
こうして匿ってくれる者もいる。
けれど彼ら彼女らへの感謝より心を占めるのは、やはり怒りだった。

結局のところ、あの場でどんな思惑が働いていたのか、センにはわからない。
テレジ・アデレジがその場で死んでも、イルベルドもロロリト・ナナリトもさして動揺していなかったし、
同じ目的や信頼があって団結していたわけではないように見える。
ただセンにわかることは、イルベルドは、彼だけは明確に敵だということだ。
センを、アルフィノを裏切り、クリスタルブレイブを離反させた。

「セン、ムッテさんにも話を伝えておいたよ。
 リンクシェル、買っておいてよかっ……」
「許せない……」
「セン」
「シノン、私絶対戻ってくるよ。
 戻ってきて、あいつだけは殺してやらなきゃ気が済まない。
 ウィルレッドを殺したのもあいつだ。
 仲間だと思ってたのに」
「セン、気持ちはわかるよ。でも、それどころじゃない」

わかるでしょ、と、いつの間にか纏められていた荷物を渡される。
日持ちする食糧と服。財布の中にはかなりまとまった金額が入っていた。

「こんなに貰っていいの?」
「預かってたお金だから。こういう時にこそ使わないとね。
 ……それから、これ」

渡されたのは片手剣と盾だ。
剣術はここで習っていたが、自信を持って使いこなせるというわけではなかった。

「なんで剣?」
「イシュガルドはそっちの方がいいかと思って。
 ドラゴンがいるんでしょ、あっちは」

飛びかかってブレスを吐かれれば、弓兵はひとたまりも無いから
多少鈍重になっても、盾があったほうがいい。
荷物の中にはちゃんと短剣も入っていたから、使い分けろということだろう。

「剣と盾なんて、わたしも普段持たないもんね。
 うん、目立たなさそう」
「あ、それなんだけどさ。……髪も切っておこう」
「髪?」
「汚したり解いたりするより、違って見えるから、
 ……嫌?」
「ん?んー」

長い髪を摘まむ。こだわりがあって伸ばしていたわけではないし、
ふだん結わえている髪を、これからも下ろしたままでいるのは邪魔だ。

「じゃ、切ろうかな。……シノン切ってくれるの?
 綺麗にやってね」
「努力する」


***


そうしている間に、控えめに戸が叩かれて、シノンが開けた。

「あ、ムッテだ」
「そうよ。無事で良かった。……あら、髪の毛すっきりしたわね。
 良いじゃない、お洒落で」
「そうかなあ」

やたらと洒落たローブを脱ぎながら、ムッテは髪についた砂埃を落とす。

「銅刃団の方とお喋りしてきたのだけど、様子がおかしいのよ」
「おかしい?そりゃおかしいけど」
「そういう"おかしい"じゃないのよ」

銅刃団はほとんどが、センや暁の人々を追っている。
だが、肝心の罪状については正しい情報が回っているとは言い難い、とムッテは話す。

「言ってることがみんなばらばら。
 センちゃんが王宮に火を放ったとか、
 女王を殺したとか……ラウバーン様を襲ったって話もあるわね」
「ラウバーンは私を逃してくれたよ。
 戦ってたのはイルベルドだよ」
「その程度のことすら、まともに伝わってないって事。
 何やったのかわからないけど、命令だから追ってるって人も多いわ。
 そういう人達は、ほとんど士気がないの……
 当然よね、突然、英雄様を捕まえろって言われるんだもの」
「……ムッテさん、よくそんな話が聞けましたね」
「ちょっと贈り物をね。緊急時だから大目に見て頂戴」

賄賂だ。シノンがなんともいえない顔をしているが
対するムッテの顔は涼しげだ。

「まったく、軍組織がそんな調子で良いのかしらね。
 ……でも、これは良い手がかりかもしれないわ」
「どういう意味?」
「どんなに腐ってたって、軍組織が国の難事に無茶苦茶な動きをするわけがない……、
 案外早く戻ってこられるんじゃないかって事」

ムッテの言葉はよくわからない。
だが、尋ねる前に大きな布包を手渡され、なんとなく質問する機会を逃してしまった。
包みを解いて広げると、

「コートだ!」
「ええ、どうにか用立ててきたの。
 この時間だから苦労したけど……裁縫ギルドのお陰ね」

揃いの帽子もある。耳垂れがついていて、見るからに暖かそうな帽子だ。
包みの一番上には、転送網利用券まで入っている。

「……ありがとう」
「ナル大門の守衛には、鼻薬を嗅がせてあるわ。
 言うまでもないことだけど、街でテレポなんて使うと目立つから、
 適当な場所まで抜けてからクルザスに飛ぶのよ」

ナル大門から出られる。ひとまずそれを覚えて、センは椅子を立つ。

「やり返すためにも、元気でいるのよ」
「おれも、イシュガルドに行く方法を探しておくから!」


***


目をそらす守衛の横を抜けて、ナル大門からザナラーンへ抜ける。
世界はまだ真夜中、満天の星の下、センは背負い慣れない盾を鳴らして歩いた。
怒りは今も胸を焼いて、振り返るたびに再起を誓う。

砂の都から山の都へ。
風通しの良くなった首筋をなぞりながら、センは一人、クルザスへ向かって歩いた。
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