

3 開店!スナック・モモ
ここはウルダハにある冒険者居住区、ゴブレット・ビュートの盛り場から、少し奥に入った静かな裏通り。
そんな裏町の角にひっそりと佇む、シンプルだけど品のある外観の母屋を改造した、知る人ぞ知る名店……、
「その名も、スナック・モモ!」
そんな風に、私が大きな声を出しながらドヤ顔でビシッ!と指差したその先では。
アウラ族の男性冒険者であり、フレンドのモモさんが、自分のお店の前で小さく笑みを浮かべながら、私達を出迎えてくれたのです。
「この店がそんな風に言われるようになったら素敵ですね。皆さん、お待ちしておりました。」
そう言って美しい動作で礼をするモモさんに、
「モモ君来たよ〜!www」
「おじゃまします^ ^ 」
「モモさん、開店おめでとうございます!」
私達は思い思いの言葉を投げかけました。
「おや、ルゼアさんまで。これは珍しい。再びお会い出来て光栄です。」
「モモさんお久しぶりねー^ ^ 」
手をひらひらとさせながら、ルゼアさんがモモさんと久しぶりの挨拶を交わしていると、
「皆さん、遠いところからわざわざありがとうございます。さ、何もないですが、どうぞ中へお入りください。」
モモさんは優雅な動きで、私達を敷地内に迎え入れてくれました。
「はーい」
私はヘラヘラ笑いながら一番乗りダッシュ!
……しかし、
「ってぇ、モモさん!?」
店に入った瞬間に、大声を上げた私。
「ラ、ランさん急にどうしたの!?」
「なになに?」
びっくりしたユーリさんとルゼアさんも店内を覗き込みます。そして……絶句。だって、
「お店の中に、何も無いですよ!?どうしたんですか!?」
本当に何も置いていない店内。いえ、辛うじてカウンターと椅子はありますけど!
ピッタリした動きで後ろのモモさんを振り返る私達。するとモモさんは、
「ああ、それですか。リキュールを仕入れていたらお金が無くなってしまい、家具が買えませんでした。こんな状態で開店することになってしまい、とても残念に思っています。」
そう答えながら、少し恥ずかしそうに紫色のリーゼントを揺らしていました。
「いやw なんなんこの店?www それにあの報奨金、全部この店で出す酒代で使い切っちゃったってこと!?www」
「この店、なんかモモさんの狂気を感じて入るの怖いんだけど^ ^; 」
ユーリさんとルゼアさん達のそんな突っ込みに、しかしモモさんは一切動じることなく、
「はい。ですが、そのぶんお酒の品揃えには自信がありますよ!さぁ皆さん、とにかく中へお入り下さい。」
そう言ってモモさんは優しげな笑顔を一切崩すことなく、私達をなかば強引に招き入れ、椅子に座らせたのです。
でも私は、一つの事にこだわる生き方は好きなので、モモさんの気持ちもちょっと分かりました。
「うーむ、そこまで言われたらモモさんのお酒へのすごいコダワリを感じちゃいますね。どんなお酒を飲めるのか、楽しみです!」
そんな風に、私がモモさんを尊敬の眼差しで眺めていると、モモさんは少し得意げに、こう言いました。
「皆さんようこそ、スナック・モモへ。今宵は美味しいお酒を、たくさん召し上がって下さい。」
おお、かっこいい!やっぱりモモさんは紳士ですね〜。
4 ミ・ラ・コスタ・デッラ・ソーレ!
「ごくごく……ぷは!」
私は、キリっと冷えた赤ワインを喉の奥に流し込むと、
「ブォーノゥ!モモさん、この赤ワイン、めっちゃデリツィオーゾです!」
私は右手の人差し指をほっぺに当ててクルクルと回し、マスターのワイン目利きの腕に敬意を表しました。
「そうですか、ありがとうございます。嬉しいですね。」
「この深みのある濃い紫色、たまりませんね〜!」
私がグラスを掲げて、中でゆらゆらと波打つワインの色を下から覗き込んで楽しんでいると、バッ、と急にモモさんがカウンターから身を乗り出してきて、
「これは、赤ワイン好きのランブレッタさんの為に特別に取り寄せた、燦々と輝く西ラノシア地方の太陽の光をたっぶりと浴びた名品、<ミ・ラ・コスタ・デッラ・ソーレ>の7年物です。なんと出荷当時では渋味の強すぎる失敗作だったそうなんです。しかし長い年月を経て、今では古のブドウの渋味がコクとまろやかさに変換されて舌の上でどっしりと腰を据える超濃厚なフル・ボディになるまでに熟成されており、大変美味。まさにワイン愛好家達垂涎の、至高の一本に仕上がっているのです。」
「!?」
な、謎の呪文の高速詠唱、モモさんもするんですね!?でも、そんな説明が全然頭に入って来なかった私は、
「はぁ、そうなんですか。でも私は美味しければなんでもいいです!ゴクゴク」
そんな雑に答えてしまった私でしたが、彼は少しも怒る事なく、カウンターの内側にゆっくりと上体を起こしながら、
「ええ、そうですね。お酒は能書きなんて気にせず、好きな様に飲むのが一番美味しいですよね。ランブレッタさん、実に気持ちのいい飲みっぷりです。これは、このワインを選んだ甲斐があったというもの。」
むしろ、説明なんてどうでもいい、早く飲ませろ!っていうふうにも見えた私の態度を何故か気に入ったらしく、モモさんは嬉しそうに答えてくれました。
「え、それ、なんかすごいワインなんだ……俺も飲んでみようかな……」
「モモさん、わたしにもそれちょうだい^ ^ 」
ユーリさんもルゼアさんも、このワインが気になった様で、みんな各々注文。
「はい、喜んで。」
モモさんは少し嬉しそうに、地下のワイン蔵から同じ赤ワインを持ってきて、全員分のワイングラスに丁寧に注いでくれました。
「おおおお!ほんとだwwうめえええ!!」
「お、おいしーじゃない^ ^」
「でしょ〜!さすがモモさん、すごいです!」
「お褒めに預かり、光栄です。」
……そんなこんなで、私達はモモさん秘蔵のお酒を飲み、美味しいおつまみ(ヤリイカとネギのアヒージョが特にブォーノでした!)を頂きながら、どうでもいい事を話し合っていたら。
気付いたときには、私達は、だいぶ酔いが回ってきていたようです……。
「……でぇ、私達は、や〜っと8人集まって、ようやく出撃したんです!そしたら勝っちゃったんですよ〜!すごくないですか!?」
私は、これで何度目か分からないくらい色んな人達に聞かせたギムリトの戦いの自慢話を、ルゼアさんにも披露していました。
「へぇ〜すごかったんだね〜。うちのFCも強くなったもんだ^ ^ 」
ルゼアさんも綺麗な色のカクテルを飲みながら、感慨深そうにしています。
「そうなんです!ああ、あの時のランさんはとんでもなく強かったなぁ……ヒック!」
しかし、ユーリさんの入れた合いの手に何か思うところがあったのか、
「え?ランさんが強かったの?^ ^; 」
そんな風に言うと、ルゼアさんは不審そうに私を見てきました。
「本当ですよ!」
「えぇ〜?^ ^; 」
なんですか、心外ですね!そんな風にルゼアさんに信用してもらえない私でしたが、
「お言葉ですがルゼアさん、あの時のランブレッタさんは、正直、僕らも目を見張るほどに、本当に強かったんです。」
カウンターの向こう側に立ってお酒を飲んでいたマスターが、援護射撃をしてくれました。
「ね!モモさん、本当ですよね!?」
喜びながら、モモさんに同意を求める私。
「ええ。あの時のランブレッタさんは敵の大軍勢を前にしてもまったく臆する事なく、帝国兵を、まるで虫を見るような目で、次々と拳で殴り倒していきましたから。」
「ですよね〜〜!キャッキャッ」
モモさんからお褒めの言葉を頂くと、私は嬉しくなってテンションが上がり、思わずケタケタと笑ってしまいました。しかし、
「はい。群がる帝国兵を悪魔のようにボッコボコに蹂躙していくランブレッタさんの後姿は、我々同盟軍の間でもはや伝説になっていますよ。」
「えっ?」
なんか、モモさんのこの反応、思ってたのと違う様な……?すると、ユーリさんも続いて、
「……だよね、なんかあれ見てて、俺、ちょっとだけ……くっ、ランさんのことを、怖いと……思っちゃった……ココちゃん大丈夫かな……?」
「僕も、あれからココさんはかじさんにお休みをいただいているって聞きました。まだ駄目なんでしょうか?」
「どうだろうね、ヒック。俺も、あんなココちゃん初めてで……」
あれ?
モモさんとユーリさんが、なんだか思わぬ方向を向いた話を始めたので、私は、信じられない!と抗議の眼差しを二人に向けました。
「え、私、あんなに頑張ったのに、ひどいじゃないですか、人の事を悪魔だなんて〜!しかもココさんには私、何もしてないですよ!?関係ないじゃないですか!」
そう抗議したんですが、なぜか私と目を合わせようとしてくれない、そんな不自然な態度をとる二人に対して私は、
「モモさん、ユーリさんまで、私が怖かったんですか……!?こんな可憐なララフェルが怖いわけないじゃないですか。ひどいですよ!」
そう言って二人に発言の訂正を求めました。すると、
「い、いや、うそうそ!うそですよー!そんなわけ無いじゃないですかー!あはは……」
良かった、ユーリさんは分かってくれたようです。そしてモモさんも、
「僕は、ランブレッタさんの事をフレンドとしてとても好きですし、同じ冒険者仲間として尊敬していますよ。」
そんな嬉しい事を、笑顔で言ってくれました。なんだ、モモさんも分かってくれてるじゃないですか、ふぅ。
「良かった〜。私、二人に嫌われてるのかと思っちゃいましたよ〜。よいしょ、ワイン飲もっと」
安心した私は椅子に座り直し、そう言ってワイングラスを持とうと手を伸ばした、その時です。
「でも、もし僕が帝国に生まれていたら、ランブレッタさんには絶対に会いたくないなと思いました。」
「ちょっと!モモさん、どうしてですか!?」
上げてから落とされ、頭が混乱した私。うう、あの時の私は、そんなに変だったのかしら……!?
「……しかし、凄まじく強かったのは本当ですよ。さすが暁の英雄、と呼ばれるだけはあると思いました。」
しかしモモさんはそう言って、ジェントルな笑顔でフォローを入れてくれました。
……ですよね?カッコ良かっただけですよね……?ふぅ、びっくりしちゃいましたよ。
「え?そうですかぁ〜?なんだか照れますね。えへへ〜。お酒が進みますね〜〜」
あっという間に機嫌を直し、ワインを美味しそうにゴクリと飲む私。
そんなふうに、私達がワイワイと思い出話をしていると、このやり取りをずっと黙って聞いていたルゼアさんが、こんな事を言いました。
「うっそだぁ〜〜www」
そしてものすごく楽しそうに、わっはっはと笑い出すルゼアさん。
「なんですか、ルゼアさん、嘘じゃないです、本当の事なんですよ!」
そんな風にぷんぷんと怒る私に対してルゼアさんは、
「だってさ、ランさん弱いじゃんw」
そんな爆弾発言をして、場を凍りつかせると、
「それにいつも冒険に出ないで、ただワイン飲んでゴロゴロ昼寝してるだけだし、絶対弱いでしょ^ ^; 」
そんな言いがかりをつけてきたので、頭にカチンときました。もう許せません!
「もう、本当なんですよ!なんで分かってくれないんですか!それにワイン飲んで昼寝しない人生なんて、それ、生きてるってほんとに言えるんですか!?」
「いや嘘でしょそんなの^ ^; 」
私とルゼアさんが言い合いをしていると、ユーリさんも入ってきました。
「まぁまぁルゼアさん、信じられないのも分かるんですが、ヒック、これ、ほんとなんですよw」
「え〜信じられないな〜〜^ ^; 」
彼女はカクテルグラスの縁を指で摘みながら、ふるふると振っていました。まるで首を横に振るかのごとく。その様子を見て、私はさらに頭に血を昇らせて、
「ルゼアさんだって、いっつも裸みたいな格好でタンクやってるじゃないですか!センシティブです!鎧を着てくださいっ!」
「わたしはいーの。美しーから^ ^ 」
「私だって美ララですよっ!!」
「……ダメだ、この二人の不毛な言い争いは止められねぇ……ヒック」
ユーリさんが匙を投げ、モモさんは肩をすくめてからキッチンで洗い物を始めてしまい。
そんな感じで、私達はしょうもない話をしながら、モモさんの素敵なお店で、楽しい時を過ごしていました。
もう外はとっぷりと日が暮れて、だいぶ夜も遅い時間になってきました。
スナック・モモも、もうとっくの昔に閉店の時間だったんですが……。
「……そしたらぁ、ゆうきさんがぁ、どうしようかって私が考えてる時にいきなりぃ、嬉しそうにガレマールの群れの中に、一人で突っ込んで行ってぇ……!」
私達はまだ飲んでいました。
お酒は進み、自分でも何を言ってるのかよくわからなくなってきて。もう何本めか分からないあの美味しい赤ワインのボトルを開けた頃、
「あー、もーその話はさっき聞いたから。それよりもランさん、なんか面白いことやってー?^ ^ 」
出ました、ルゼアさんの突然の無茶振り。
「ん〜?おもしろいこと〜?」
なんかありましたっけ……?と、ちょっと考えた私は、
「……あ!ココさんがぁ、ガレマールのロボを戦場で奪い取ってぇ、ひゃっはー!って言いながらわらわら群がってたガレマールの群れのど真ん中に、ファイヤー砲?みたいなのをぶっぱなした話とか……!」
せっかく思い出した面白い話だったんですが、
「ランさん、ヒック、それもさっき散々話したでしょお……?うひへへへへ!ヒック!」
酔っぱらったユーリさんに、ダメ出しされてしまいました。あぇ、話しましたっけ……?ゴクゴクゴクゴク。
「はー!ブォーノゥ!このワイン。モモさん、これと同じのもう一本下さい!」
めっちゃ美味しい!ほんとに、こんな美味しい赤ワインなかなか飲めませんね!さすがモモさんのお店です!
「はい。かしこまりました。」
モモさんはカウンター内で自分もあんなにいっぱいお酒を飲みながらも、一切普段と変わることなく、お客さんである私達に美味しいお酒を提供してくれていました。
「そうそう、それです!その綺麗なラベルのやつですっ!おいしいやつっ!」
「ねぇ、まーだー?面白い話はー?^ ^;」
あ、そうでした、ルゼアさんの無茶振りにまだ応えてませんでしたっけ……ゴクゴク。
「ぷはっ、じゃあ、わたくし、かじさんのモノマネやりますっ!」
「おおーー!やってやって!^ ^」
「ヒューヒュー!かじさんキタァーーー!wwwヒック!」
「仕方ないですねぇ。とっておきですよ?」
私は朦朧とする意識の中、声を最も低い領域にチューニングすると、
「いっつもニコニコ現金払い!ワテが、ワークアウト社長、かじぽんでおまヽ(^。^)/」
お、我ながら出来得る限り忠実に、かじさんを再現出来ました!しかし、
「 似 て ね ーーー!www 」
ルゼアさんはそう言ってゲラゲラと大爆笑。えっ、うそぉ!?
「なんでですか!激似じゃないですか!!」
憤りを隠せず、大声を出す私を見ながら、横でユーリさんとモモさんが、なにかをひそひそと話していました。
「あ、あのさ、モモくん……?ヒック、あんなセリフ、かじさん一回も言った事ないよね……?」
「ふむ、ランブレッタさんには果たして、僕達が一体どういう風に見えているのか。俄然興味が出てきましたね。」
……なにを話してたのかはよく聞こえなかったんですが、そんな小声で話し合う男性陣をよそに、私は赤ワインをゴクゴク飲み。
それからも、私はあの時の戦いで思い出した事を得意げに、ルゼアさんに話していました。
……モモさんがいつも被っているウサギ耳ヘアバンドに矢が刺さり、怒り狂ったモモさんの鬼神の様な<モモ・ビースト・モード>を初めて見てしまい、ギョッとした話とか。
スノゥさんがピンチになった時、突然、謎のエレゼン美女に変身してめちゃくちゃ強くなっちゃったっていうビックリ話とか。
そういう信じられないような話を、夜が深くなるまで何度も何度も、私はユーリさんとモモさんと一緒になって、ルゼアさんに話して聞かせていました。
そして、いつの間にか私が酔っ払ってしまい、カウンターに頭をぶつけて眠りに落ちる直前、
「あー、なんか、みんな冒険を楽しんでるみたいで、よかった^ ^ 」
ルゼアさんの、そんな声を聞いたような気がして……、
私はそのまま、眠りに落ちていったのです。
5 チャオ!
気がつけば夜明けの時間。
どうやら私とユーリさん二人して、カウンターに突っ伏して眠ってしまっていた様です。
「……あら、寝ちゃってましたか……」
ゴブレットビュートは、乾燥した大地で有名なウルダハでも高い場所にあるので、窓の外には雪がちらほらと降っていました。
「おや、お目覚めになられましたか。おはようございます。」
モモさんはこんな夜遅くでも元気で、お店の後片付けをしていました。……って、
「あれ?ルゼアさんは……?」
私は、さっきまで一緒に飲んでいたルゼアさんの姿を探したんですが、どこにも見当たりません。
「ああ、それなんですが……」
モモさんは、窓の外に降る雪を眺めながら、
「……先ほど、行ってしまいましたよ。マイチョコボに乗ってね。」
彼はそう言いながら、少し寂しそうに目を細め。
「……またどこか、冒険の旅に出かけられたそうです。「みんなによろしくね^ ^ 」と。」
「……そうでしたか……」
挨拶したかったですねぇ。次、また、いつ会えるかも分からない人ですから。
「……あれ?ランさん……?やべ、俺、寝てたの……?」
ユーリさんも目を覚ましたので、ルゼアさんがまた行ってしまった事を伝えると、
「……そっかぁ。次に来た時は、ルゼアさんとどっかに冒険に行きたいね……」
「そうですねぇ」
二人で少しだけしんみりしていると、モモさんがこちら側にやって来ました。
「あと、ルゼアさんからもう一つ伝言です。「お会計もよろしくね^ ^ 」と。」
モモさんはそう言って、優雅な動きで、私に注文書の紙束を渡してくれました。
「あら、さすがルゼアさん。ちゃっかりしてますね〜!」
「そうだねw わかりみw やっぱルゼアさんだわw」
日付が変わったので、今夜は星芒祭の当日です。
一年に一度、大事な人に無償で愛を贈る日だと聞きます。ならば私も、贈りましょう。
そう、たまにしか会えない大事なフレンドの為にこのお金を使えるのなら、悔いなんて無いのです。
「いいでしょう、今夜は私の奢りですよ!」
「やったー!ランさんカッコいいー!www」
「えへへ〜!今の私は、お金持ちですから!」
そんな風に大喜びのユーリさん、モモさんと和やかに笑い合い、なんとなく心に温かいものを感じながら、私は、渡された注文書を眺めました。
「えっと……内訳は、ビール6本、カクテル類9杯……お、そしてあの美味しい赤ワイン<ミ・ラ・コスタ・デッラ・ソーレ>が13本でしたか。結構飲みましたね〜」
「ランさん一番飲んでたでしょ?www」
「そうでしたっけ?きゃはははっ」
笑い合う私とユーリさん。そこにモモさんが穏やかな笑顔で……、
「ありがとうございます。今夜のお会計、198万9800ギルになります。」
穏やかな笑顔で、とんでもない高額料金を提示してきました。
「モモさーーーーん!?」
「ちょwモモくん高すぎでしょwww」
「すみません。ですが、まさか僕も、あの赤ワインをうちの在庫すべて飲んでいただけるとは思わなくて。」
「わ、わわ、わたくし、今、100万ギルしか持ってないです……けど……!」
私は白目を剥きながら口をあんぐりと開けたまま、懐に大事にしまっていたギル金貨のぎっしり詰まった布袋を机の上にガチャリと置くと、
「ラ、ランさん!お、俺も半分出しますから!ね、モモくん、これで足りるでしょ!?」
なんと、ユーリさんも布袋を机の上に出してくれました。
「はい、確かに。お二人とも、ありがとうございます。」
「あ、ありがとうございますユーリさん……!い、いつかおか、おかえし……!」
「いや、いいですよ……w これくらいなら大丈夫ですから……w」
「本日はスナック・モモにご来店頂き、誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております。」
足取りがおぼつかない私とユーリさんに向けて、モモさんはとても紳士な態度で、見送ってくれました。
次は、安くて美味しいお酒を飲みにきます!
……後日、スナック・モモは大規模な内装工事を行い、素敵なお店になりました。
そしてルゼアさんは……きっと今も、世界のどこかを旅しているんでしょうね。
また次に会えた時は、綺麗になったスナック・モモで、あの<ミ・ラ・コスタ・デッラ・ソーレ>で乾杯をしましょう!
チャオ!
おわり