当記事は、RPイベントのセッションを元に、
ストーリー風に物語を書き起こしたリプレイ兼、RPストーリーです。
苦手な方はご注意ください!
https://jp.finalfantasyxiv.com/lodestone/character/12662472/blog/4686470/また、ver5.xシリーズのストーリー内容を含みますので、5.xパッチの上のストーリーが未プレイの場合はネタバレの可能性がございます、ご注意願います。
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「……以上が、私が知る、七罪の全てだ」
私は、博物陳列館の職員にその全てを語り終えた。
「ありがとうございました……大変興味深い記録でした」
彼は満足げに眼鏡を正した。
「いえ、では行くところがあるので」
「また、罪喰い狩りですか」
「ええ、そんなところです」
「では私はご武運を祈っておりましょう。 幸運があなたにあらンことを」
そして彼は去っていった。
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「ナッツクラン史上最大の作戦クポー!! 名をあげて闇の戦士のようになりたくば! 我に続くクポー!!」
ナッツクランの団長を先頭に、大勢の賞金稼ぎ達が、伝説の罪喰いに挑んでいく。
フォーギヴン・リベリオン討滅戦。
闇の戦士と水晶公が去った後、英雄なき時代、最後の大きな罪喰い狩りだった。
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「ヘッドプラッカー、ここまででいいよ」
私はトートエイビスから降り立ち、そっと背中を撫でた。
「今日までありがとう。 そして……ユル=ケンには内緒だよ」
……もう罪喰い狩りは終わるんだ。
君を解放してあげる。
私はオマジナイを唱えて、ヘッドプラッカーに架けられた、”ピクシーとのオヤクソク”を解呪してあげる。
その瞬間。
「キシャアアア―――!!」
ヘッドプラッカーが私に嘴を向ける。「やめなよ」
私はヘッドプラッカーに笑顔を向けた。
「復讐なんて、何も生まないよ」
「!」
ヘッドプラッカーは一瞬動きを止める。
しかし、翼を広げて――。
「ギュオオォオオ―!!」
再度鳴り響く、ヘッドプラッカーの声。
そう。
やっぱり、君と私は似た者同士の――オトモダチだったんだね。----------------------
――果たしてそれは本当に七つの罪を体現していたのか。
或いは、そう名付けた人々は、滅びゆく世界を前に、自分の罪を懺悔していたのか。
せめて罪喰いに喰われるならば、死の間際の後ろめたさから開放される為に利用したのか。
今となっては、それはわからない。
が、それは人と切って離せない感情であり、それ故に人は堕落し罪を犯すのである。
――憤怒。
姉が罪喰いに奪われた。
その怒り、嘆き、憎しみ――そして自らへの”それ”。
あの日から、私の心の中に渦巻く、燃え盛る炎。
――怠惰。
それは決して進むことなき盲目の行進。
その場に留まり、見るべきものを見ようとせず、考えることを止めること。
昔日にとらわれし生無き生。
――暴食。
貪り、喰らい、わが身のみ思う。
他者を喰らい、他者の恵みを奪い、その業はやがて己すら喰らい尽くす。
甘美なる、自滅の菓子。
――嫉妬。
持たざる者が持つもの者に向ける羨望の眼差し。
苦しみ、狂わされ、それでも抗えぬ。
生きる限り決して逃れられぬ、身を腐らせ蝕む毒。
――強欲。
されど我は求める。全てを。
失ったものも、手に入らないものも、騙し、奪い、殺してでも。
だが、いずれこの手から零れ落ちるもの、全ては過ち。
――傲慢。
その許されざる一歩を。
その愚かなる決意を。
何ゆえに、信じたか。
何ゆえに、背負ったか。
全ては私の――。
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「……これで六つ――」
私達は憤怒を討滅した事で手に入れた妖精王の秘宝、「ワルプルギスの宝珠」をグリュネスリヒト――いや、リェー・ギア城に運んでいた。
「確か、お前言ってたなぁ、最後の一体”色欲”はそれ以外を全部倒すと現れるって」
ユル=ケンがワルプルギスの宝珠をその手に抱えながら言っている。
「ああ……もうすぐ、現れる筈だ。 その時までに――」
そう言いかけたところで、私はその場に倒れ込んだ。
「う……がはっ! うぁぉああ……!」
口から血と白い何かが――”あふれ”出る。
「ああ……」
体の震えが止まらない、一体どうしたというんだろう
「なんで……罪喰いにやられたわけじゃないのに、体が動かない……」
「は、何言ってんだお前」
私は振り返る。
ユル=ケンが笑う。
「もう長くないんだよ、お前は」
長くない? 私が?
ふふ、ふふふ。
「やだなあ、ユル=ケンは冗談が……」
――しかし、既に私の足は立てなくなっていた。
「……何度痛みを消して剣を振った? 何度死ぬほどの血を流した? 罪喰いから受けたその左目の傷を抑える為、お前がどれほどの寿命を使ったと思う?」
ユル=ケンが私を見下ろしている。
私は仰向けに倒れる。
「もう一体倒してからでもよかったが、ここまでだな」
そしてユル=ケンが私の顔を覗き込んだ。
「――じゃあ、最後の
オトモダチゴッコと行くか」
にっこりとユル=ケンが破顔した。
途端、私の体から何か――いや、生命の全てが零れ落ちていく。
「ユル=ケン……!?」
「それでもお前は大したものだったよ――たった一つの命で、七罪を殆ど倒すまでに力を付けたんだからな」
ユル=ケンが、笑う。
「くくく……ぎゃははははははははは」
ああ――楽しそうだ、本当に楽しそうに心から笑っている。
「長かったなぁ……”ヒトだったころ”から数えると、どれくらいだろ」
ユル=ケンは頭上に、妖精王の秘宝を翳した。
秘宝「ワルプルギスの宝珠」は、私からあふれ出る全てを吸収していく。
「喜べよ、シドゥルファス――お前は、俺様が俺様になれるところに立ち会えるんだ」
私の全て――命を糧に、宝珠は光を放つ。
ユル=ケンが宝珠の光に合わせて、舞い踊った。
――夜は愉快、我らは踊る。
謳い、喜べ……虹の国は、常若なり。
「聞け、唄え、そして知れ、古より蘇りし、もう一つの――妖精王の名! 今此処に蘇りしは伝説と語られし者――ユル=ケンの名のもとに!」
そして、宝珠が光を放ち、ユル=ケンと一つになっていく。
「――これより我こそが、”オーベロン”ッ!!」宝珠は祝福を与えた。
ユル=ケンに。
聞いたことがある、妖精が王になるには、宝物を揃える必要があると。
では、あの宝珠も。
「ああ……」
ユル=ケンと宝珠は今完全に融合した。
以前、リダ・ラーンのピクシーがその存在を語っていたことがあった。
イル=メグより以前の妖精郷に居たという古の王様。
蒼き光を放つユル=ケン――いや、妖精王”オーベロン”がそこには居た。
「ふ……ふふ」
「はははは」
「いい気分だ、ようやくあのちっぽけな体から解放されたよ」
「ユル、ケン……」
私はその光り輝く姿に手を伸ばした。
「か、え」
返してくれ、私の命を。
まだやるべきことがあるんだ。
「ああ?」
ユル=ケンは私の方を見てにっこりと笑う。
「お前、まだ生きてたのかよ?」
ユル=ケンが杖を振った、たちまち突風が私の体を包んで吹き飛ばす。
「あ……!」
私は紙ぺらのように、宙に舞って地面に叩きつけられた。
「いいざまだなぁ、シドゥルファスちゃん……しかし、ワルプルギスの種火になったのに、なんで生きてんの? ま、いいか……」
ユル=ケンは私の方にゆっくり近づいてくる。
「なあ、俺様は感謝してるんだぜ? 最強の七罪、憤怒を倒してくれたんだから」
――そして私の顔をじっと覗き込んだ。
「ずっとアイツが邪魔だったんだ。 だが、やっとワルプルギスの宝珠を手に入れられたよ」
ユル=ケンは羽を輝かせて、嬉しそうに踊った。
「――”昔”から考えてた。弱っちい体を捨てて、自由になりたいってなァ。ピクシーも悪くなかったけどよ」
私は、最後の力を振り絞り剣を杖に立ち上がる。
ああ、もう何度目だろう。
こうして立ち上がるのは。
「”何度死しても輪廻する魂”、”不滅の炎(ユル=ケン)”――それが俺様だ」
私は剣を構える。
ユル=ケンが私にニッコリと破顔する。
「――かえしてもらうよ」
私はゆっくりと歩き出す。
まだ、私の命を捧げるわけにはいかない。
「死にぞこないが」
ユル=ケンが私を再度魔法で吹き飛ばした。
「お前――そうかその傷」
ユル=ケンが、眼帯に覆われた私の左目を見た。
「罪喰いに体を侵されてるから、魂がぐちゃぐちゃで、生命力を宝珠がうまく吸えなかったんだな」
はっ、とユル=ケンが鼻で笑う。
「うわあああああ!」
私は魔剣で斬りかかる、がそれはいとも簡単に弾き返される――。
「ねぇねぇ、この剣をお前にあげたのは誰?」
私は、今度は腰の細剣を取り出して魔法剣の構えに入る。
「その魔法をくれてやったのは誰ですかぁ?」
が、唱えていた魔法が途中で消える。
「全部、俺様だ!ぎゃははは!」
ユル=ケンが私を蹴る――。
「お前と俺は、契約したものとされた者――そしてお前は、利用された者」
「う……」
「だからさ、ごめんね、利用しちゃって」
ふふ……そうか、私は、ユル=ケンに利用されたのか。
「そう」
それならば、私も戦わなくっちゃ。
――私は、魔剣にもう一度力を込める。
「ああん? まだやるのぉ?」
すると、ユル=ケンが億劫そうに欠伸をした。
「あっ!?」
剣が触れる瞬間、結界が生まれ、やはりユル=ケンの体に触れることもできず、剣は跳ね返される。
「あははははは!! ぎゃははははははは! ねえ?どんな気持ち? 今!? ねえ!? フッブートの騎士の末裔様ァ?」
ユル=ケンは高笑いすると、動けなくなった私を見下ろす。
「それならシドゥルファスちゃん……オトモダチだった俺様からのせめてもの情けだ」
私の顔を踏みつけ、笑顔で言う。
「出会った時の願いを叶えてやる――フッブートのあった地でゆっくり苦しんで死ぬといい」
そして、ユル=ケンは私に背を向け、グリュネスリヒト――リェー・ギア城に向かい始めた。
「ああ――」
そうか。
もう、いいや、私は、今日ここで――。
蒼き炎、私をずっと照らしてくれていた光。
私の美しい枝よ。
「じゃあ、ゆっくりしていきな。 さよなら? 俺様のかわいい若木」
――ずん。「え?」
次の瞬間、貫いていた。
私の剣が、オーベロンの腹を。
「え……え!? なんで!?」
オーベロン――いや、戸惑うその顔は、古の妖精王ではなく、紛れもなくかわいらしいユル=ケンの顔だ。
「なんで俺に触れられるっ……!? がは、っ……どうして、俺様の支配下にある魔剣が……俺の結界を貫ける……!?」
ユル=ケンが口から血の様な、樹液の様なものを吐き出して苦しむ。
魔剣は、ユル=ケンの結界を破り、その腹部を貫いていた。
私はさらに強く深く、剣を突き刺した。
「――ユル=ケンのお陰で完成した、魔物を混ぜた剣”ストームブリンガー”……でも私はね、もっと沢山混ぜたんだ」
私は袖を捲る。
「お、おまえ……! 腕一本、剣に食わせたのか!」
義手になった私の腕を見て、ユル=ケンが驚く。
「それだけじゃないよ」
たった今、新たに混ぜたものがある。
――私は眼帯を外した。
そして、左目をユル=ケンに見せる、そこにはポッカリと穴が空いている筈だ――。「て、めぇ……!?」
「ユル=ケン……命は全部あげられないけど」
――これは、ぜんぶあげるよ突き刺さったユル=ケンの体内で、”剣が解き放たれる”。
「爆ぜよ――ストームブリンガー」
剣に喰わせたものが、逆流し、ユル=ケンの体に流れていく。
「――お前、何をするつもりだ!?」
「ごめんね、ユル=ケン」
利用しちゃって。「ああ、あああ――!?」
ユル=ケンが口をパクパクとする、光がユル=ケンの体の中に溢れていく。
”私の左目”だ。
「な、なんだコレ――この女――うわああああああああ!!」
あれ、もしかして。私の眼をあげたから、ユル=ケンにも見えているのかな?
その左目が見た、最後の光景が。-----------------
「この罪喰い――体を失う度に、他の罪喰いの体を奪うというのですか!?」
その罪喰いは、姉さんに幾度も切り刻まれながらも、都度仲間である罪喰いの体に寄生し、再生した。
罪喰いが罪喰いを強く求める事から、そいつも”とある名前”が与えられていた。
「逃げなさい、――ク! ここにいてはだめ、あの罪喰いたち相手では、もたない!」
「だけど!」
その瞬間、姉は私をかばって――。
「あ!?」
罪喰いの繰り出した触手が、姉に突き刺さる。
「あ……あああ!」
そして、光が、姉に流れ込む。
「まさか――この私を罪喰いにして――体を乗っ取るつもり――!?」
姉が、目から白く濁った涙を流しながら頭を振る。
「姉さん!! 嫌だ! 姉さん!」
「――リク、離れてッ!」
周囲には、数多の罪食いたち――。
「ああ――!」
姉の顔に、例の罪喰いが取り付く。
その罪喰いの本体は、ヒトの掌で掴めるほど小さな個体だった。
そのまま肌に張り付くように寄生し、姉の体を乗っ取ろうとしている。
「殺して――! 殺しなさい! 私を――早く!」
姉が、私に懇願する。
「お願い――罪喰いになりたくないの……フッブートの騎士の末裔として……お願い!」
いやだ、出来る筈がない。
だって、姉さんは私の――。
「あああああああああぁアアアアアアアアア」
しかし、響く絶叫。
姉は罪喰いにと一つになりはじめる――。
ああ。
そんな。
「わあああああああ」
私は無我夢中で、剣を振った。
斬。
斬った。
確かに。
姉の顔、罪喰いが取りついた部分を。
姉の体は崩れ落ち、そのまま動かなくなる。
切り取られた、罪喰いの肉片は――。
「え!?」
斬られた瞬間、肉片は歪み、形を成し。
余分な部分を捨て――掌ほどの大きさに――。
そして、それは。
……小さな小さな姉の姿になった。「ひっ!?」
そして、姉の姿をした小人は。
私の左目に、突き刺さった。-----------------
「うびゃああああああああああ!!」
イル=メグに絶叫が響く。
やはり、見えたんだね、ユル=ケン。
「そうさ……姉の一部は私の左目にただの肉片として突き刺さったまま――でも強い罪喰いの近くにいると、動き始める――融合しようとするんだ」
だが、それだけは耐えがたい事だった。
「他の罪喰いと融合したらきっと姉は完全に消えてしまう」
姉にとりついた罪喰いは、最後にとりついた者の性質を保つ特性があった。
私の左目に残った肉片が、姉の姿をしているのも、その為だった。
「姉さんと一緒だったのは嬉しかったけど――私は光に許されなかったからね」
「何を――お前、何を」
「罪喰いになることも考えた――いつかのロニにみたいにね。 でも姉さんを奪ったアイツらと、ただ同じになるは嫌だった」
「まさか、お前!!」
「だけど、姉さんに罪喰いにされるならば、もう一度会えるならば、それもいい!」
「……――エルリク・シドゥルファスッ!!」ユル=ケンの絶叫が再度響いた。
ああ。
久しぶりに呼ばれた。
「俺を触媒にして、罪喰いになった姉貴を蘇らせる気か!?」
その名前。
誰かに呼んでもらえるって、やはりうれしいな。
「他の方法も沢山考えた、君は私の大切なオトモダチだったからね……でも」
姉さんを他の罪喰いに渡すわけにはいかなかった。
大罪喰いや四使徒にも――当然、憎き七罪にも。
そうしなければ、姉が、他の罪喰いに上書きされてしまうから。
「お前――姉貴――いや、一人の女の為なんかに――」
だけど、ね。
罪喰い以外の者に、光を注いで器を作れば。
特にユル=ケン、君みたいな特別強いピクシーの体を使えば。
「ねえ、ユル=ケン感謝してるんだ、君には」
理由がどうであれ、私とずっと一緒に居てくれた。
君が居なければ私は――。
だから。
「これからも、ずっとオトモダチだよね」「やだあ! やだよおおお!!」
オーベロンの体から力が抜けていく。
「これが――私の最後の剣だ――」
そして、魔剣から力が放たれ、オーベロンの体を切り裂いていった。
そして、ワルプルギスの宝珠が、オーベロン――ユル=ケンの体から抜け落ちる。
そして――。
「いやだああああああああ!!」
ユル=ケンはピクシーの姿に戻る。
「ユル=ケン。大好きだよ。 私の一番のオトモダチ」私は告げた。
そして、剣から放たれた私の魔力と光で――ユル=ケンの体が満たされていった。
「ああ」
そして、それはユル=ケンの体を飲み込んで現れた。
私の頭上に降り注ぐ、歓喜の光。
やっと――やっと会えた。
姉さん、愛しい、姉さん。
ごめんなさい。
フッブートの騎士の末裔でありながら、貴女の弟でありながら、
私は、貴女に――もう一度、会いたかった。
私はずっと、ずっとあなたに。
裁かれたかった、許されたかった。
……ああ、姉さん、私の――。
姉の抱擁が、私を包んだ。
本当は夜なんて来なければ――私だけが、あの頃を懐かしんでいた。
瞼を閉じれば、いつでも夜の無いあの世界で、姉が私を待っていた。
でも今やっと、もう一度、還る事が出来た。
私の世界は、再び光に満たされた。
そして愛しい女の体をまさぐって、私の魂は煉獄の炎に焼かれていった。
"――The last lust that remains him."